皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。
胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としています。今回もお腹の不安が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。
「また嘔吐が始まった…」「今度は下の子にもうつってしまった」――冬になると、多くのご家庭で胃腸炎の感染が広がり、看病する親御さんも心身ともに疲弊してしまいます。特にノロウイルスやロタウイルスによる感染性胃腸炎は、保育園や学校で一気に広がり、家族全員がダウンしてしまうことも珍しくありません。
胃腸内科外科の医師として20年以上診療に携わってきた私は、毎年冬になると胃腸炎の患者様が急増する様子を目の当たりにしています。しかし、正しい予防法を実践していただければ、感染リスクを大幅に減らすことができるのです。
この記事では、医学的根拠に基づいた7つの予防習慣をご紹介します。今日から実践できる具体的な方法ばかりですので、ぜひ最後までお読みいただき、ご家族の健康を守る知識を身につけてください。
1.冬の胃腸炎はなぜ怖いのか
冬場に流行する感染性胃腸炎の主な原因はノロウイルスとロタウイルスです。これらのウイルスは非常に感染力が強く、わずか10~100個のウイルス粒子で感染が成立します。感染すると突然の嘔吐や激しい下痢、腹痛、発熱などの症状が現れ、特に乳幼児や高齢者では脱水症状により重症化するリスクがあります。
さらに厄介なのは、症状が治まった後も1~2週間はウイルスが便中に排出され続けることです。つまり、本人は元気になっても、まだ他の人にうつす可能性があるのです。
習慣1:手洗いを徹底する
感染予防の基本中の基本は手洗いです。しかし、多くの方が正しい手洗いをできていないのが現状です。
*医師が推奨する正しい手洗い方法
- 流水で手を濡らし、石鹸をしっかり泡立てる
- 手のひら、手の甲、指の間、爪の間、手首まで30秒以上かけて洗う
- 帰宅時、トイレの後、調理前、食事前は必ず手洗いを行う
- ペーパータオルで拭き、共有タオルの使用は避ける
特にノロウイルスはアルコール消毒だけでは不十分です。流水と石鹸による物理的な洗浄が最も効果的なのです。
習慣2:食材の加熱を徹底する
ノロウイルスは二枚貝(カキ、アサリなど)に蓄積されやすく、生や加熱不十分な状態で食べると感染のリスクが高まります。
*安全な調理のポイント
- 二枚貝は中心温度85~90℃で90秒以上加熱する
- 生食用の表示があっても加熱することを推奨
- まな板や包丁は肉・魚用と野菜用で分ける
- 調理器具は使用後すぐに洗浄・消毒する
冬場は特に、加熱調理を基本とすることで感染リスクを大きく減らせます。
習慣3:環境の消毒を適切に行う
ノロウイルスはアルコールに強い耐性を持つため、通常の消毒用アルコールでは十分な効果が得られません。
*効果的な消毒方法
- 次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)を適切に希釈して使用
- ドアノブ、手すり、トイレのレバーなど頻繁に触れる場所を重点的に消毒
- 嘔吐物や便で汚染された場所は、使い捨て手袋とマスクを着用して処理
- 消毒後は必ず換気を行う
市販の次亜塩素酸ナトリウム製剤を常備しておくと、いざという時に慌てずに対応できます。
習慣4:家族間での感染対策を徹底する
一人が感染すると、家族内で連鎖的に広がるのが胃腸炎の特徴です。
*家庭内での感染拡大を防ぐ方法
- 感染者専用のトイレを設ける(難しい場合は使用後すぐに消毒)
- タオルやコップなどの共有を避ける
- 看病する人は決めて、他の家族との接触を最小限にする
- 感染者の洗濯物は別に洗い、85℃以上の熱湯消毒か塩素系漂白剤を使用
特に小さなお子さんが感染した場合、オムツ交換時には十分な注意が必要です。
習慣5:免疫力を高める生活習慣を維持する
胃腸炎に感染しても、免疫力が高ければ症状が軽く済んだり、発症を防げたりすることがあります。
*免疫力を高めるための生活習慣
- 1日7~8時間の質の良い睡眠を確保する
- バランスの取れた食事(野菜、果物、発酵食品を積極的に)
- 適度な運動(1日30分程度のウォーキングなど)
- ストレス管理(リラックスできる時間を意識的に作る)
- 水分をこまめに摂取する
特に冬場は寒さで免疫力が低下しやすいため、体調管理には十分注意してください。
習慣6:体調不良時は早めに休む
「少しくらいの体調不良なら大丈夫」という考えが、感染を広げる原因になります。
*早期対応の重要性
- 下痢や吐き気などの初期症状があれば、すぐに仕事や学校を休む
- 無理をせず、医療機関を受診する
- 症状が治まっても、2~3日は自宅で様子を見る
- 職場や学校には正直に症状を伝え、感染拡大を防ぐ
特に食品を扱う仕事や医療・介護の現場では、胃腸炎の症状がある場合は必ず休むことが重要です。
習慣7:予防接種を活用する
ロタウイルスには予防接種があります。生後6週から接種可能で、重症化を防ぐ効果が証明されています。
* ワクチン接種のポイント
- ロタウイルスワクチンは乳児期の接種が推奨される
- 接種スケジュールは医師と相談して決める
- 家族全員がインフルエンザワクチンも接種し、体調を崩さないようにする
ノロウイルスには現時点でワクチンはありませんが、ロタウイルスはワクチンで予防できるため、乳幼児のいる家庭では積極的な接種をお勧めします。
2.今日から始める予防習慣
冬の胃腸炎から家族を守るためには、日々の小さな習慣の積み重ねが大切です。7つの習慣すべてを一度に完璧にこなすのは難しいかもしれませんが、できることから一つずつ取り入れていってください。
特に手洗いと食材の加熱は、今日からすぐに実践できる効果的な予防法です。また、家族で予防習慣について話し合い、みんなで協力する体制を作ることも重要です。
医師として、皆さんとご家族が健康な冬を過ごせることを心から願っています。少しでも気になる症状があれば、早めにかかりつけの医療機関を受診してください。適切な予防と早期対応で、胃腸炎の脅威から大切な家族を守りましょう。