福岡の内科外科院長のブログ

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福岡の内科外科院長のブログです。医療の事はもちろん、日々のクリニックでの出来事など投稿します。

皆様、こんにちは。消化器内科外科の院長です。

胃カメラ・大腸カメラをはじめ、おなかの痛みや痔などの消化器系疾患を専門としています。今回もお腹の不安が少しでも和らぐ情報をお届けしていきます。

 

十二指腸潰瘍で「何を食べてよくて、何を絶対避けるべきか」が分からないと、不安が続きます。痛みが怖くて食事が楽しめないという相談を、福岡の胃腸専門外来でも多く聞きます。

 

現在は薬での治療が中心ですが、食事を整えることで痛みを和らげ、潰瘍の治りを助けることもできます。この記事では、絶対に控えたい飲食物と、負担を抑える具体的なメニュー例を専門医の立場から整理します。

 

 

 

1.刺激物を避けて「やわらかく・薄味・少量頻回」

 

 

十二指腸潰瘍でまず守りたい結論は「粘膜を刺激する飲み物と食べ物を避け、やわらかく薄味の食事を少量ずつ回数を分けてとる」という点です。

具体的には、アルコール、濃いコーヒー、炭酸飲料、辛い料理、揚げ物、硬くて繊維の多い食品などはできるだけ外します。

 

一方で、白がゆややわらかいご飯、うどん、豆腐、白身魚、卵料理など「消化がよくて脂肪が少ない」メニューは、痛みを和らげやすい選択です。

食事の間隔を空けすぎず、空腹時間を長くしないことも、十二指腸への酸刺激を減らすうえで重要になります。

 

 

 

 2.強い酸と刺激が潰瘍を繰り返させる

 

 

十二指腸潰瘍は、胃酸やピロリ菌、薬などの影響で粘膜が深く傷ついた状態で、空腹時や夜間にみぞおちが痛むことが多い病気です。

ここにさらにアルコールや香辛料、強い酸味、脂っこい食事などが加わると、潰瘍部を直接刺激し、痛みや出血を悪化させる危険があります。

 

炭酸飲料やコーヒー、濃い紅茶は胃酸の分泌を促すため、空腹時には特に避けたい飲み物です。タバコや強いお酒も粘膜の血流を悪くし、治りを遅らせる要因として指摘されています。

 

また、脂肪分が多い料理や揚げ物は消化に時間がかかり、胃腸に長くとどまり続けるため、負担が増えて痛みが出やすくなります。

ごぼうやたけのこ、きのこ、玄米など、繊維が多くて硬い食品も、傷ついた粘膜をこするように通過しやすく、潰瘍の時期には控えたほうが無難です。

 

さらに、熱すぎるスープや冷たすぎる飲み物など、極端な温度の食事も粘膜への刺激となるため、ぬるめを選ぶことが勧められています。

このような刺激をできるだけ減らしつつ、薬による治療を続けることが、再発を抑えながら潰瘍を治していく基本方針です。

 

 

 

3.絶対食べてはいけないものと、痛みを和らげる食事

 

 

ここからは、日常の食事に参考になるように「避けたいもの」と「選びたいもの」を具体的に整理します。

 

⑴   絶対に避けたい・できるだけ控えたい飲み物

- アルコール飲料全般(ビール、日本酒、焼酎、ワインなど)は粘膜を荒らし、出血を悪化させるため、治療中は中止が基本です。

- 空腹時の濃いコーヒー、紅茶、エナジードリンク、炭酸飲料は胃酸分泌を強めるため、潰瘍が落ち着くまでは控えます。

- 70度以上の熱いお茶やスープ、氷たっぷりの冷たい飲み物も、温度刺激で痛みを誘発しやすいため、ぬるめを選ぶ意識が大切です。

 

⑵   絶対食べてはいけない・特に注意したい食べ物

- 唐辛子、胡椒、わさび、にんにく、にら、しそ、みょうがなどの香辛料や香味野菜は粘膜を刺激し、痛みを強くするため、十二指腸潰瘍の急性期には避けます。

- ラーメン、天ぷら、フライ、焼肉、脂身の多い肉、ベーコン、鶏皮、うなぎなどの脂っこい料理は、消化に時間がかかり負担が大きいため「絶対に控えるグループ」と考えてください。

- 玄米、全粒粉パン、雑穀米、ごぼう、たけのこ、れんこん、ふき、きのこ類、海藻類、こんにゃくなど、硬くて繊維の多い食品は、潰瘍が治るまでは避けることが推奨されます。

- 酸味や塩分の強い漬物、干物、塩辛、酢の物、柑橘類、梅干し、チョコレートなどは胃酸分泌を高めたり、しみる刺激になったりするため量を減らします。

 

⑶   痛みを和らげるために選びたい食事

- 主食は、白がゆ、軟らかいご飯、パンなら耳を落とした食パン、よく煮込んだうどんなど「やわらかくて消化のよいもの」を中心にします。

- たんぱく源としては、豆腐や高野豆腐、白身魚、脂身の少ない鶏ささみや赤身肉、半熟卵や茶碗蒸しなどが勧められています。

- 野菜は、ほうれん草や人参、大根、かぼちゃなどを、クタクタになるまで煮込んだ煮物やスープの形で摂ると負担が少なくなります。

- バナナやすりおろしりんごなどのやわらかい果物、牛乳やヨーグルトなどの乳製品も、体質に合えば粘膜保護に役立つ食品です。

 

調理法は「揚げる・焼く」よりも「煮る・蒸す・茹でる」を基本とし、油は必要最小限に抑えることがポイントです。味つけは薄味を心掛け、香辛料の代わりにだしの風味や素材の甘みを活かすように意識すると続けやすくなります。

 

 

 

4. 十二指腸潰瘍の食事で大切なこと

 

 

外食では、揚げ物中心の定食やラーメン、焼肉、辛い料理は避け、焼き魚や煮魚がメインの和定食や、天かす抜きの温かいうどんなどを選ぶと負担を減らせます。

おかゆや雑炊が選べる店を知っておくと、痛みが強い日の選択肢が広がります。

 

大切なのは「完璧に制限すること」よりも「潰瘍が治る時期だけでも、刺激を減らした食事を続ける」意識です。

強い痛み、黒い便、吐血などがある場合は、自己判断の食事療法だけで済ませず、必ず消化器の専門医を受診してください。

 

薬による治療と、粘膜にやさしい食事を組み合わせることで、十二指腸潰瘍の痛みは大きく和らぎ、再発リスクも減らせます。

福岡で胃腸外来を受診する際は、食事についても遠慮なく相談し、自分に合った「守れるライン」を一緒に決めていきましょう。