ヤマシタトモコ作コミック『偉国日記』
中学卒業間近の田汲朝（たくみあさ）は両親を一度に亡くした。朝の目の前で起きた事故だった。
作家の高代槙生（こうだいまきお）は姉の遺した朝を勢いで引き取る。
が、３５歳独身の槙生は自分が他者と暮らせない性格であることを思い知る。おまけに槙生は姉と不仲であった。朝と接するうちに、かつて槙生を苦しめた姉の言葉が度々頭をよぎる。
人見知りで何かと考え過ぎの叔母と人懐っこく物怖じしない聞きたがりの姪、違う国の人のような二人のぎこちない暮らしが始まった。
そして朝は高校デビューした。
友人たちの中で賑やかに過ごしながら、砂漠にぽつんと一人でいる自分を感じ、親の気持ちを理解したいと願い、大変な経験をしているのに深みのない自分に悩み、朝は将来を探っていく。
朝の高校卒業とともに漫画は完了しています。
が、これは答えの描かれていない物語です。
朝の悩みに悩んだ進路、母が朝になってほしかったもの、なぜ両親は事実婚だったのか、父は朝をどう思っていたのか…
姉は槙生になぜ厳しい言葉ばかり突きつけたのか、槙生を憎んでいたのか妬んでいたのか心配していただけなのか、年月を経てその感情に変化はあったのか？
物語の中で示されていくこれらの謎は解決されません。
だって、朝の両親は死んでしまったのだから。
真実なんて永遠にわからない。
槙生は朝にお母さんはもういないのだから、彼女の意向なんて気にしなくていい、と説く。
朝は、死んじゃったのが悪いんだからね！ と苛立つ。
亡くなった人は何も語れない。
槙生と朝は生きている。
生き続け、二人はお互いを大切に思っていき、かけがえのないものとなる。
朝ちゃんがかわいい。表情がくるくる変わり、人との距離が近すぎて、仔犬のようにじゃれつく。
そして朝の級友達も皆愛しい。
高校生の時にこんなにストレートな言葉を発したかな？
みんなまっすぐに人に向き合い、ぶつかっていく。
入試の合否判定の不平等に憤り、劣等感を隠さず、あなたの言葉に傷ついたと責め、朝の自己肯定感の低さを叱る。
みんなみずみずしく生きている。
槙生の友人達も良い。
大人だけれど、子供の時に想像していた大人とはだいぶ違う。
まだ悩みはいっぱいだし、親に心配され、親の愛をまだ求め、右往左往している。
でも彼らは人として朝に対等に接する。親を亡くした子のためにとことん細やかに思い遣る。
大人（と世間的に判断される年齢の人）達と子供達の物語。
登場人物たちが皆愛らしい。
じっくり読みたい漫画です。
実は、最終巻をしばらく読まずにいました。
終えたくなくて。
そんな気持ちになる漫画です。
で、やっと全部読んだのは、映画を観たかったから
です。
観ました。
よかったです。
ま、11巻もの内容を２時間くらいにまとめるのだから、色々なエピソードをあちらこちらつまむしかないのはしかたないこと。
それより朝はどんな女優さんが演じるのかが気になる所でした。あの仔犬のような朝はどうなるのか。
槙生の友人役の夏帆さんも見たかったのですけど。
で、朝ちゃん、かわいかった〜。
新垣結衣さんも槙生だったし。
夏帆さんとの３人の女子会も楽しかった。
やっぱり高校生達が愛しかったです。