新井素子著『定年物語』


作家の陽子さんと会社員の正彦さんの夫婦の物語。


『結婚物語』『新婚物語』『銀婚式物語』と書き続けられた夫婦の物語、とうとう正彦さんが定年を迎えて、『定年物語』。


多忙な会社員だった夫が家に居るようになって夫婦二人の穏やかな生活が始まった、という風にはこの二人はならなかった。

夫の定年後3年経って陽子さんは、「激動の3年間」だったと思い返して、あらためて驚く。ふつう定年後の生活を“激動”とは言わない。

でもそう形容してしまうほど色々なことが起こり変化した月日だった。


会社の保険証が使えなくなった翌日に正彦さんが死にそうになる(あくまで正彦さんの体感でのこと)。正彦さんが家事の一部を担うようになる。正彦さんが趣味をどんどん増やす。


コロナ禍の制限多い生活と相まって、この夫婦の生活様式の変わりようは、十分“激動”だったのでしょう。


小説とは言え、ほぼほぼ実話だそうです。

では実話ではないフィクションの部分は全体のどの位の割合なのかと気になりますが、多分そんなにはないのでしょう。

なにせ、ほぼほぼ実話、なのですから。


とすると、案外めんどくさい旦那さんだな、と思ってしまいました。

骨のある魚や皮をむかないといけない果実は嫌がる、自分の担当になった家事について妻がアドバイスすると怒る、

ま、ネタを提供してくれる旦那さんです。



本作が出て、あぁ定年か、と感慨深かったです。

『結婚物語』から月日が経ったのだな、と。

作者と同年代ですから。

そういえば『結婚物語』はその昔テレビドラマになったな、と思い出しました。主演の新婚夫婦を演じたのが陣内孝則さんと沢口靖子さん、それだけでも時間の経過が思われます。


で、我が家も去年から旦那さんが仕事を辞めて年金生活になりました。

激動、とは言いませんが、おおむね家にいるようになった夫との距離感、ボーナスがなくて2ヶ月に1回のみの収入、等、生活は大きく変わりました。


夫とはなぜお昼ご飯にも名のあるようなちゃんとしたご飯を食べたがるのだろう。ふりかけご飯や海苔ご飯だけではダメなの?(私は米好き)

お昼に録画したドラマや歌番組が見づらい。

普通に平日のお昼のテレビ番組はつまらないのに、テレビをつけたがる。


て、やはりお互いの生活のすり合わせがまだまだ難しいです。


そして何より年金が足りない。もう毎月「バーイシクル、バーイシクル🎶」と歌いながら日々を回してます。(自転車操業、みたいな? 借金はしてませんが)


そんなこんなの1年を経て、今年は旦那さん少し仕事入れてますが。

でもこれも平日の時間が結構バラバラでまだ慣れません。


まぁ、こんなわが家の定年物語です。