柴田聡子『いじわる全集』 | 佐藤良成オフィシャルブログ「佐藤良成のCD原人」Powered by Ameba

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同時代の日本の音楽を聴かずに育ったミュージシャンが、ふと人の作品を聴いてみると、そこは宝の山だった! 音楽シーンの知識ゼロ。チャートの知識もゼロ。ナタリーも音楽雑誌も読まない、J-POP的には原始人と言っていい男が綴る、CDレビューブログ!

柴田聡子
【初回限定盤】SBTD-0001 ¥2,300+税
2014年5月21日発売


曲を作るときはメロディーが先か、歌詞が先か、それとも両方同時かと訊かれることがよくあります。俺はいつもメロディーが先で、それに合わせて歌詞を考えます。

メロディー先行の例として、皆さんご存知の『森のくまさん』を挙げてみます。歌いだしを思い出してください。「あるー日」「森の中」「くまさんに」「出あーった」という4つの短いフレーズでできています。これらは一見すべて違うメロディーラインのように聴こえますが、実は、タラララという1つのパターンを、音程を変えて繰り返したものです。このようにメロディーというのは、まず基本となるフレーズがあって、そのフレーズを、伴奏のコードや音程を変えながらも、音数、リズムは踏襲しつつ繰り返して進んでいきます。おそらくそれが気持ちいいからなのでしょう。そしてその反復があるからこそ、その後、別の新しい展開が来たときに、突き抜けた開放感と、高揚感を聴き手に与えるのです。もちろん『森のくまさん』のように1つのフレーズがとても短く、反復がわかりやすい曲ばかりではありませんが、クラシックにしろJ-popにしろ、メロディーありきの曲にはそういう仕組みがあります。

それに対して、歌詞ありきで作るのでは、まずメロディーと歌詞の主従関係が違います。メロディーの音数、抑揚、長さは、歌詞に支配されることになります。柴田聡子氏の『責めるな!』という曲は、思うに、まず「元ロックスターを責めるな」というひと言から始まったのではないでしょうか。それが「元」と「ロックスター」と「責めるな」という言葉に分かれて、連想ゲームのように意味が別の意味に繋がり、それが転がっていくことでできた歌詞に、節をつけて歌ったというふうに聴こえます。行ごとに詞の文字数が異なるため、フレーズに規則性がなく、自由律俳句のようです。

俺はそういうふうにして曲を作ることがないので、とても不思議に面白く聴こえます。間違っていたらごめんなさい!