生き直そうとした力も、笑顔も、力尽きる瞬間も、すべて忘れないために2度目の鑑賞。
「あんのこと」
2024年 日本 113分
@UPLINK京都 平日16:45〜 観客17人
香川杏。彼女の人生を残したい。彼女が見た、世界が美しくなる瞬間を記憶したい。もうそれしかない。必死で見た。両の眼に焼き付けた。この尊厳をいつまでも守りたい。
いまだに俳優の演技が上手いのかどうかよく分からないことが多いけど、本作の河合優実のそれは、山のような思考の跡が見える異次元の仕事だ。
「演技が上手い」は演技の域から出ることはないのだと思う。思考の連続、監督や共演者との綿密かつ妥協なき話し合いなどによって俳優固有の解釈が生まれ、それによって「演じているようには見えない」という状態を作るのだろう。なりきりとは似て非なる。憑依とも違う。
河合優実だけじゃない。美術、小道具、照明、カメラワークほか細部に至るまで、思考の跡だらけなのが本作。映画芸術として抜きん出た秀作。
初回鑑賞時に売り切れてたパンフレットが再入荷してた。嬉しい。