「フィリップ」
FILIP
2022年 ポーランド 124分
@京都シネマ 平日14:05〜 観客17人
相変わらず予告編は目を瞑り、もらったチラシは字を読まずイメージを楽しむだけだから、勝手にシリアルキラーものだろうと思ってたら、違う意味でシリアルキラーの青春映画だった。
ポーランド系ユダヤ人のフィリップ。家族や恋人を目の前でナ○スに殺害された過去を持つ。ワルシャワから落ち延びたフランクフルトの高級ホテルで、フランス人と偽ってウェイターをしながら、ナ○ス将校である夫を戦場に送り出して暇してる妻たちをシリアルに各個撃破しては棄てまくり、こっそりナ○スへの復讐を果たしていたというなんじゃそれな実話ベース。
純血上等だから交わりがバレたらユダヤ人であろうがフランス人であろうが確実に消されるし、ドイツ人女性にもこっぴどい罰が待っている。
壮絶極まりない映画にもできただろうが、その表現はきつすぎることがなく、ちょっと風変わりな青春映画味もあり、フィリップの一挙手一投足に注目することに。
口数少ないフィリップは、めちゃくちゃスリリングで刹那的な毎日で(そこに青春味を感じる)、虚無を抱え絶望のまま生きてきたのだろうと思わせる表現が見事な俳優だった。ウィノナ・ライダー似の女優もよき。ただ、どこに惹かれあったのかがちょっと弱いか。あの状況下だからこそ惹かれあい、燃え上がったのなら何か足りない。
※ネタバレ
ラストシーンで作品の評価を決定づけることはしたくないけど、さらにパリへ落ち延びていくフィリップと、前線へ向かうドイツ軍人の対比は見事だった。生死は裏返し。
パーティーでドイツ国家を歌う場面があり、こんな歌詞だったのか⁈とかなり驚いたのだけど、あれは一番らしい。ドイツはすべての上に!的な歌詞で、何がなんでもドイツ語文化圏の拡大統一じゃいと歌ってるそう。
二番はワインと女性のすばらしさ、三番は自由と正義による幸福追求という歌詞だそうで、現在は三番しか歌わず、ナ○スは二、三番を禁止にしてたそう。