田中ユカ「猿楽町で会いましょう」

アオイ「遠いところ」

川辺市子「市子」

フュリオサ「マッドマックス」

佐々木音羽「シンデレラガール」


近年の、忘れられない、いや、忘れることなく墓場まで添い遂げると決めた主人公にまたひとり加わった。香川杏だ。正面からはロングショットを多用。至近距離は背面をローアングルで捉える杏の、何ひとつ忘れてたまるか。


社会の暗部でただ生きていた。ゴミと暴力と搾取が取り囲む地獄の底で。救ってくれるのは注射針しかない。それ以外を教えてくれる人が誰もいない。


地獄で仏。

働いて誰かの役に立つ喜び、学ぶ喜び、料理する喜び、してはいけないことを断つ、それが続く喜び。いくつもの喜びを知る。光に包まれる。あたたかくて、やさしくて、人が好き。光は自分の本質を照らす。


だがその仏もまた暗黒を持つ。それをきっかけに再び地獄の門が開き、ブラックホールのような重力で杏の脱出を許さない。フュリオサに連れられたワイブスに群がるイモータン軍だ。

ブラックホールがあれば光を吐き出すホワイトホールがあるという。近づいてはいけない光もある。その光に連れられる不幸。


こんな映画は2度と作られてはいけない。

きっとまた見る。そのすべてを忘れないために。それしかできない。大傑作。