「響け!ユーフォニアム 3」
第九回「ちぐはぐチューニング」

真綿で首を締めるような、遅効の毒でしとめるような、真由の執拗な連続攻撃。本人は攻撃してるつもりはないけど、久美子のHPは確実に目減りしている。

席はこのままでいいからね
やっぱり変わった方がいいと思うの
私はソリじゃなくていい

真由の言葉に嘘はない。
部長である久美子への忖度と、部内のざわつきを収めたい思いだ。

だが久美子は実力主義に変わった北宇治の部長。
お願いだから二度とそういうこと言わないでと少し語気を強くした。
と思いきや、力無く「気にしてないから」と言いながら、久美子の状況を示すかのように階段を下りていく。休みたいからひとりにしてほしいと、作り立ての笑顔を見せながら。


怒りに似た感情の向けられた相手がなんなのかまだ分からない。

夜の自販機にまたも真由。 

「やっぱり… 」

真由の言葉を制した久美子。関西大会のソリに選ばれた以上はしっかり吹いて全国で金を獲れるよう部員として力を尽くせと言う。

が、真由はこのとき言おうとしたことは、さっきまでの辞退や遠慮の言葉じゃないように思う。その直前に、つばめ大ファインプレーの会話があったから。

花火で楽しむ輪に入れない真由。転校生ってちょくちょく地獄を見るよな、わかります。
部員も真由が嫌いではないだろう、どう接していいのか分からないのだ。久美子の手前もある。これが自分たちで選んだ実力主義の道であることを、分かっていながらも。

そこにつばめが現れる。前のシーンの久美子どアップを受け継いだカットは、つばめから真由の不思議がってる表情へ繋がっていく演出。


真由が選ばれてもおかしくないと思ってた
滝先生はちゃんと演奏で判断してくれた

葉月と一緒で、コンクールメンバーに入れなかった経験があるからこその、この視点。真由はどれほど嬉しかっただろうか。



「ここからここから」とつばめ。

終わりかけた線香花火が、もうひと花と輝きを増す。


真由が言おうとしたことは、
「やっぱり…わたし全力で吹くから」的なことだったのではないかと思う。知らんけど。

奏と久美子の会話がよかった。

奏、慰めてほしかったんかい、今までで一番かわいい。チューバに人数を割く必要があると鳥瞰してたのはさすが。

けどやっぱり慰めて欲しかった奏に、「めんどくさ」と本音が口をつく久美子。居心地は悪くない証。久美子が見せた笑顔は、本来の笑顔だ。さっき真由に見せた笑顔と大違い。


正直に言うと、2年生にあまり愛着がなかったのだけど、じっくり描いてくれてるから奏もさっちゃんも美玲も大好きになってきた。

まさかの株下落、滝先生。先生とオーディションに対して様々な考えが出てくる。

奏は、判断基準がずれてきてると言う。
みどりは、府大会から色々変えすぎではないかと言う。
葉月は、シンプルに実力で選んでるのだろうと考えている。


滝先生のブレが気になるけど、これってもしかしたら思惑どおりなのかもと思えてきた。
1期から、自主性を重んじると言ってきた滝先生だ。全国金への道を閉ざさないよう細心の注意を払いながら、個々の考えをたたかわせ、議論し、出し尽くし、現北宇治の力を最大発揮できる道をある程度見据えてるのかも。
滝先生と言えども、まだまだ未熟な点があったというターンかと思ってきたけど、いやいやさすが粘着イケメン悪魔な展開なのかも知れん。

「音を楽しむと書いて音楽。分かってますよ」

最初はほんとかよ?と思ったし、分かってるふりして鬼練習の時間確保しただけか?とか、頼むしはしもっちゃんもっと手伝ってくれって思ったけど、違うかも。

久美子は何を、どのように聞くのだろう。
「理屈じゃないんだ、音楽しよう」への回帰はあるのかないのか。

さて、麗奈問題。大問題。
滝先生の判断を信じているから、真由がソリを演奏することも受け入れるという。
これは美玲の言葉を借りれば「神格化」なのか。奏の言葉を借りれば「盲信」か。
顧問に対する口の利き方ではないと、ドラムメジャーとして看過できないと、部員を22時に呼び出したり。

朝霧橋で対峙する部長とドラムメジャー。


「麗奈の言うとおりだと思う」
2度目か3度目の久美子のこの言葉に、麗奈は何かを感じて口を閉ざす。これは以前の、本音を言わない久美子だ。仲良くなった頃に言った同じ言葉とは意味が違う。

理由が分からないことが多いだけ
指導者の方針に従うのは大前提
従ってる。理解できないって言ってる人に気持ちに蓋して盲信しろっていうのは無理
努力不足を棚に上げて思い通りにならないって、言い訳か文句が大半だ
部長として無視はできない
滝先生を全面的に信じてると言ったら嘘になる
部長として失格ね


前回あたりから、早く爆泣か爆発かしないと久美子壊れちゃうぞって思ってて、朝霧橋でふらついた時にそれがようやくきたと思ったら、久美子はもちこたえてしまった。それは久美子の成長なのだけど、痛々しくも感じてお腹が痛い。こんなに辛い思いまでして久美子は何を得るのだろうか。って元も子もないことを言ってしまったけど、それをずっと待っている。


それにしても朝霧橋って舞台として優秀すぎるな。

翌朝。
一点を見つめてペダルを踏む麗奈。


麗奈が来ないかとドア越しに外を覗く久美子。 
自転車置き場も覗く。2年と3年の間。


たったひとりの、部室いちばん乗り…

◼️ほか、よかったとこなどを

花火を楽しむみどりと葉月がかわいい。
葉月といえば、つばめと一緒でコンクールメンバーに選ばれず悔しい思いをしてきたからこその実力主義に賛成な点が、そんな思いを練習にぶつけてきた日々を想像させる。

秀一がもっと機能する熱い展開を待ってる。

久美子がソリ演奏から外れたことに納得できず、それを口に出せず求に塩対応してる場合ではない。部長を支える番はとっくにきてる。


はしもっちゃんの、カチカチ山の狸さんの件は昨今のなんとやらにギリと違うか。新山先生の表情が物語っていた。

麻美子さん。沼倉愛美さんのガラス質な声が実にいい。

「喧嘩でもしたの?」
「ひどい顔してる」

麻美子姉ちゃんにそう言われたけど、2期10話のあすか先輩と一緒で、顔面について触れる相手は久美子が信頼できる人だ。
「なんて顔してんの。ぐっちゃぐちゃだよ」

飼い犬が鎖を外して走ってた。なんの暗喩だろうか。