好きが試される。


「不死身ラヴァーズ」

2024 日本 103

@UPLINK京都 平日12:00 観客3


入場者特典のポストカードを見て、漫画原作だと知ったぐらい事前情報を持たず、キービジュアルと、邦画界が誇る助演王前田敦子が出てるぐらいしか知らずに鑑賞。


「好き」のプロ、長谷部りのの登場だ。

りのは何度でもじゅんを好きになる。

並の人間ならくじける展開でも、毎日毎日じゅんを好きになり、それをしっかり伝える。

それでも自分に潜む臆病が顔を覗かせたとき

SF仕立てかと思いきや、そうじゃない。

誰かや何かを好きになったら試される。豪速球で「好き」を問うけれど、細部までキュートな仕上がりになっている作品。邦画、というか現代日本が得意とする文化的な仕上がりだ。


印象的なロングショット多数。これが映画だよ。CGまみれで派手なくせに日用品みたいなアクションを乱発するのが映画じゃない。本作のロングショットには余白がある。そこに作り手の思いや意図を映し出し、そこに鑑賞する者の想像力がはばたく余地が生まれていた。

新幹線と踏切という素晴らしいフリー素材の活用も実に効果的。心の揺れやざわめきに、障害物に。


「私たちのハア、ハア」で女子高生最強説とポンコツ説を両立させた松居大悟監督。「ちょっと思い出しただけ」は壮大に寝てしまったけど僕の中で復活。
見上愛の魅力は爆発し、「私たちのハア、ハア」にも出てた大関れいかは確かな爪痕を残す。カラオケ行きたい。


邦画界の宝、前田敦子のこの存在感はどうだ。彼女じゃなきゃ説明的で説教臭く感じたかも知れない役どころ。その表現が自然だ。演じていない。上手でしょ、と圧をかけることをしない。大好きな演技だ。


大変気に入った作品。最後の最後に僕の「好き」が試されたけど、ほぼ蛇足。

スカートの主題歌は最高。余韻を破壊せず、邪魔をしない歌詞、押し付けがましさがない。

が、僕がより「好き」なのはこんな感じ。

あのままカメラが赤い屋根の上へ移動して、小鳥がさえずる青空バックのエンドクレジットであったなら、余韻は無限。想像力は増幅し続けたに違いない。