「狂った野獣」

1976 78

U-NEXT鑑賞


2〜3年前に見て、書いたつもりだったけど書いてなかったみたいなので、スマホのメモから貼り付けます。 

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マジで元祖「スピード」だった。

正確には、東映映画が大好きな脚本家が、「狂った野獣」と「新幹線大爆破」をまんまパクったのが「スピード」。確かにまんまだった。


逃げる銀行強盗がジャックしたバスには宝石強盗が乗っていて「ニューヨーク1997」並に出オチ1億点なこのプロットから、狂った逃避行と珍妙な人間模様が繰り広げられる。


ストーリーを語っても仕方がないので端折るけど、映画って細かい辻褄合わせといったことは二の次でよく、もちろん伏線張り巡らされた精緻な脚本に唸らされる作品があるのも事実でそんな作品も大好きだけど、それが最重要な価値ではないなというのが僕の見方だというだけ。四の五の言わずに監督やスタッフの狂気と山っ気と蛮勇と熱量を接種したくなると、自ずと70年代の作品を観てしまう。


本作などは、京都市内を西へ走ってたのに怖い怖い清滝トンネルを抜けたら京都の東にあるはずの琵琶湖に着いちゃう。なのにこの作品が持つエネルギーは、そんな整合性の無さを象に止まった蚊ぐらい些細なことにしてしまうのだ。

こういったことで、映画の見方を正してもらう感覚を得るわけです。もちろん映画の見方に正しいも正しくないもなく、僕の見方にとってです。


トチ狂った連鎖の中で、チンドン屋、不倫中の教師と保護者、獣医に愛犬を連れていく途中だった口の悪い主婦、大洋ホエールズキャップの少年その他、多様な人間模様が繰り広げられ、狂っているのは強盗だけじゃなく一般乗客も変わらないって落としどころも含めて大変気に入った。


シーンとしては、小便を我慢出来なくなったホエールズ少年が窓から排したところ、たまたまパトカーで激励に駆けつけた母親がそれを被るハメになるところがもうとんでもなく面白い。

その直前に、逃避行に疲れた川谷拓三が故郷を思い出してよさこい節を歌うとチンドン屋がクラリネットで伴奏するというほのぼの場面があり、優しい気持ちを取り戻した川谷拓三が少年を窓に導いたのが母親の悪夢の始まりだったという実に念入りな、筋と無関係だけど重要なシークエンス。


拍手喝采で喜んだ僕だったけど、最後のセリフで、主人公渡瀬恒彦の行為が祭りだったのだと知る。貧乏だったので東映まんがまつりと無縁だった僕が54歳児にして初めて参加した東映のお祭りだったのだ。映画って長く観るもんだな。