「哀れなるものたち」

POOR THINGS

2023 イギリス 141

@T-JOY京都 平日10:35 観客21


ヨルゴス・ランティモスは「ロブスター」を見ただけで、「籠の中の乙女」「女王陛下のお気に入り」は気になりながらも見逃し継続中。あと、鹿のなんとかも。


見たいような見たくないような、自分に合うような合わないような、ヤジロベエみたいな揺れる思いのままで映画館へ。月曜昼間に21人は多いほうで、シアター内は特有の雰囲気が。


体当たり演技というものが苦手になって久しい。地味な演技が好きになったから。

だけど目が離せない。くっそー。俺は何を見に来て何を見せられているのだろう。エマ・ストーンの演技は体当たりという次元をちょっと超えていて、余計に「いや、もういいって」と思いながら見てたのだけど、結局は目が離せなかった。解放に向かっていく快感がある。


大人とはこどもが退化した姿だと人はいう。

利口とはバカが退化した姿だと人はいう。

体は大人、脳と精神が幼児な初期設定ベラが辿る道は、解放か。成長も退化もしない。


言葉を覚え、欲望を知り、外を知り、社会性を身につける。が、社会や誰かに飼い慣らされるのではなく、俺ジナルな生きる道を見つけて、あらゆるものから解放されていく。それに比例して、様々な視野でベラたちを捉えていたカメラが落ち着いていくのが面白い。


そしてベラの周囲に現れる、哀れなるものたち。

ウィレム・デフォーは口から何か得体の知れないものを放出して笑いを取る。あれ何?

調子に乗っていたマーク・ラファロは情けない転落を見せて笑いを取る。ちょっと見てられなくなった理由は書かないでおこう。

急に出てきた旦那大佐は、本当の体当たり演技とはこれだぞと爆笑を取る。

油断ならない、目が離せない。くっそー。笑っていいのかどうか分からない時は、笑えばいいと思うよ。


好みの作品ではない。2度と見ることはないだろう。好いても好かれる気がしないから。そう、映画に突き放されるのは好きだけど、想像力を働かせてついていくんだっていうガッツを奪う作品だこれは。傍観者でいいのかも知れない。だから、目が離せなくていいんだ。狂ってるからだ。まっすぐに狂ってる。セットも音楽も、小さなこどもにはよろしくない童話をめくるように展開していく映像も、何もかもが。映画史上もっとも読みにくいエンドクレジットも。


3種類のキービジュアルのうち、これが好き。