ヒトリボッチ国際ファンタスティック映画祭'22

8 最終日


当映画祭は、「激突!」「マッドマックス2」「ヒドゥン」「ターミネーター」などを誰よりも高く評価した俺たちのアボリアッツ国際ファンタスティック映画祭の意志を勝手に継いで今年初開催。


こんなに時間掛けるつもりなかったですが、気がついたら8日目…2カ月がかりでようやく最終日を迎えました。


それでは、10位からの発表!


■10


「そばかす」

「人生は二度とない」



どちらもトップ10に入れたかったので無理やり2作品をねじ込みました!


前者は、なかなか切実な話なのに、明るくケラケラと笑える作品に仕上げた脚本と演出と全役者の演技が最高。

三浦透子もいいけど、前田敦子の名助演を推したい。胡散臭い県会議員を父に持ち、東京から地元に戻ってきてる元AV女優をリアルに、いや、身の回りにそんな人いないからリアルかどうかは分からないけど、リアリティたっぷりに演じた前田敦子はほんとにいい女優。そんなエキセントリックな前田が案外普通の結婚をし、それを素直に祝える三浦の笑顔とチェロ演奏が味わい深い。


後者はインド映画でいちばん好きかも。インド映画そんなに見てないけど。

153分の長尺が気にならない愉快なロードムービーで、スペインの風景が美しく、お相手の女優とその友達を演じた女優がよき!


■9


「ケイコ 目を澄ませて」



終わらせることと続けることを支えたり認めてくれる人の存在が実によかった。


岸井ゆきのもいいけど、三浦友和を見ろ!ふたりのシャドーボクシングを!


■8


「手」



にっかつロマンポルノ50周年記念プロジェクトとして、多様性・エンタテインメント性・芸術性を訴求するための新企画「ROMAN PORNO NOW」新作3本のうちの一本。「アフロ田中」「私たちのハァハァ」「ちょっと思い出しただけ」の松井大悟監督、令和クズ男を若手に演じさせたら金子大地の右に出るものはいない。

エロはあるけど、それがなくてもいいと思えるほど、いいヒューマンドラマだった。


■7


「窓辺にて」



超多作家、今泉力哉監督作。またしても、ずっとこの人たちを見ていたい映画で、またしても、映画はここまでだよと終わらせる潔さ。気持ちがいい。

稲垣吾郎はその辺の喫茶店の窓側に座ってそうで、この役柄は本人そのものに思えてくる名演。玉城ティナも最高で、ふたりがおかしな方向に行かないのもよかった。匂わせたりする映画が多い中で、実によかった。


■6


「ザリガニの鳴くところ」



湿地帯の美しさ。自然の一部になることとは。善悪のない自然の中で、生きることとは、生きる道を探すこととは。

犯人がああだこうだじゃなく、そのあっぱれな生涯に気づかされるラストに膝を打った。

雑貨屋夫妻の優しさが沁みる。


■5


「クレッシェンド/音楽の架け橋」



"歴史上のことではなく家族の物語"だから、なかなか理解し合えない若者たち。そんな彼ら彼女らを導くマエストロの手腕と現在も続く苦悩。そしてラストショット、その切り方の潔さ!俳優の表情を見ろ!

「新世界」と「ボレロ」も聴きどころ。


■4


「女神の継承」



絶望のどん底を味わいたいならこの一本!

「おいおい、どうするんだよこれから⁉︎」と思わずシートから立ち上がらせる(立ち上がったつもり)、観客に他人事だと思わせない絶望が2度。最高だった。


■10位〜4 短評


大差はなく、明日考えたらきっと順位が変わります。いずれも個性的で素晴らしい作品。他の作品次第ではグランプリだってあり得た、大好きな作品ばかり。


■3


「あのこと」



精神的にも肉体的にも時間的にも追い詰められる主人公と観客!ホラーじゃないのに怖くて仕方なくなる演出と、聡明さと焦燥感や恐怖を体現したアナマリア・ヴァルトロメイの演技が見事。


■2


「秘密の森の、その向こう」



SFの手法を使わないSF

サイエンス要素のないSF

「燃ゆる女の肖像」に続いて大胆な余白演出を披露し、75分という短尺でこんなに慈愛に満ちた作品に仕上げられるものなのかと驚かせる。セリーヌ・シアマ監督凄い。


グランプリ


「君を想い、バスに乗る」


この滋味、この味わい。

優しい人ばかり出てくる史上最年長のロードムービー。

過去の織り交ぜ方が絶妙で、大好きなシーンしかなく、ラストショットまでパーフェクト。




グランプリから3位までも、日によって順位が変わると思うぐらい甲乙つけ難し作品でした。


来年またやります(たぶん)!


■初日の様子はこちら!