兄貴は霧の彼方に


「ザ・フォッグ」

1980 89

@UPLINK京都 観客5


「ニューヨーク1997」に続いて、神企画「ジョン・カーペンター レトロスペティクブ」にて鑑賞。


カーペンターが兄貴でよかった。

って慕ってきたくせにこれをずっと見逃してましたが、隠れ名作ですねこれは。この企画に大感謝!


「ハロウィン」とは一味違うホラー演出。

これから何か起きるぞっていうムードづくりが上手で(む?もしかしたらカーペンター、恋愛も上手かも)、恐怖と直面するまでの間合いが実にいいですね。地味な作品ですが、この作品では俺のやりたいことはこれなんだというコンセプトがブレません。


誕生100年周年の日に街を覆う濃霧、恨み晴らさでおくべきかと立ち上がる亡霊たち、暴かれる街の血塗られた歴史!100年目の恨みぐらい大目に見ろよと言いながら逃げ惑う主人公たち!最後のセンテンスはちょっと盛りました。



霧がいいんですよね。音もなく忍び寄る不気味さ。大袈裟ではなく、どうやって撮ったんだろ?どうやってコントロールしたんだろ?と感じるシーンが多数あります。巻き戻しも使ってそう。

まあ、カーペンターのことですから、たとえば港全体に霧が立ち込めていくロングショットはちゃっちいです。けれど、街をミクロに捉えてからは職人的な手腕が冴え渡ってます。職人って、当たり前のことですね。

が、巨匠だとか名匠だなんて言うつもりはなく、淡々と撮ってるように感じるから真面目な人なんだろなあと妄想したり(たとえばデ・パルマがヘンタイなら兄貴は人格者だと思う)、己をわきまえた上で理想に徹する兄貴なんでしょうかねえ。


教会や岬のラジオ局って舞台設定も好き。



アドリエンヌ・バーボーが港全体を見渡せるラジオ局から逃げろと放送する場面などはホラー映画史に刻み込んでおきたいですね。アドリエンヌ・バーボー、ジェイミー・リー・カーチス、ジャネット・リー、ハル・ホルブルックって名前はいま一番息つぎせず一気に言いたい名前。