太陽のカチナ
ノースショアのサーフィン大会が終わり、
一旦、日本に帰る事にした。

ホノルルから、飛行機を乗り継ぎ、伊丹空港
に降り立つと、懐かしい関西弁が飛び交って
いた。
大阪の心斎橋という街で、サーフショップを
経営している友達がいたので、店を訪ねる事
にしたのだ。
東京でいうと原宿を小さくしたような街で
アメリカ村という、若者が集まる地域の、
北西のはずれに、春風(はるかぜ)ビルという
5階建ての古いビルの1階が、彼のサーフショップ
だった。
朝の早い便だったので、店についたのは
まだオープン前の時間でシャッターが
閉まっていた。
隣にシャレた喫茶店があったので、そこで
モーニングでも食べながら待つ事にした。


久しぶりに海外から帰った時に、日本の
喫茶店でモーニングサービスを注文すると
とてもリッチな気分になるのだ。
店の名前は「ココペリ」といい、後日、
マスターに聞いた話では、正式名はココピラウ
という、ネイティブアメリカンの精霊の一種
らしい。
カウンターの隅に、スーツケースとサーフボード
を置かせてもらい、カウンター席に座った。
モーニングサービスを注文し、当時はまだ
吸っていたたばこに火をつけると、なにげ
なくあたりを見回した。
洒落た店内の喫茶スペースの奥に、ショー
ケースがあって、その横にはTシャツやネル
シャツが吊るしてある。
「インディアンジュエリーや小物を扱って
いるんです。よかったら見ていって下さい」
モーニングセットを持って来たウエイトレス
が、上品な笑顔で声をかけて来た。
「ケンさんのお友達でしょう?どこへ行って
こられたんですか?」
「ハワイで大会があってね」

「えっ、ノースショアの大会に出られたん
ですか?」
「恥ずかしながら、予選で落ちたけどね」
「すごーい! プロなんですね」
「プロといっても、賞金で食べていくには
程遠いけどね。ライセンスだけは持ってるよ」
「となりのケンさんと一緒ですね」
「そう、彼と一緒にプロテストを受けたんだ」
「へぇ、古くからのお友達なんですね。じゃあ
ショップが開くまでゆっくりして行って下さいネ」
そう言って彼女はカウンターの奥へひっ込んだ。
大阪にしてはスマートな言葉使いで、清楚で
可憐な感じの女の子だ。

ひょっとすると彼女もケンに惚れているのかな
と思った。
ケンというのはサーフショップオーナーの友達
の呼び名だ。
こいつが、女に惚れられる為にだけ生まれて来た
ような男で、どちらかというと三枚目のくせに、
恐ろしく女運がいい。
日本のプロサーファーの草分けでもあるし、彼の
ラディカルなライディングは、サーフィン雑誌の
表紙を飾ったりしたものだ。
もてても当然なのだが、奴の場合は度を超してい
て、サーフィンに縁のない水商売の女の子たちから
もキャーキャー言われるのだから、ふたりでいると
自信をなくしてしまう。
食事を終えて、店内を見て回っていると、ショー
ケースの上に並べられた、ネイティブアメリカン
の人形のうちの一つに、突然眼を奪われた。

全身を電流が流れたように感じ、心臓の鼓動が激し
くなっていく。

ほとんど無意識に、その人形を手に取っていた。
以前にも見た事があるような、懐かしいような
感覚。初めて8フィートのチューブライディング
を決めた時のような感動がぼくを襲った。
次回につづく
最後まで読んでくれて、ありがとう

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