彼女と初めて会ったのは僕が20歳の時。

あの日は空を厚く黒い雲が覆い、いつ天気が崩れてもおかしくないような空模様の日だった。



当時、僕は専門学校(午前中)とバイト(18時~21時)に行きながら、空いた時間にカウンセラーもどきのようなことをしていた。


1年半以上続けていて、無償で行っていたせいもあってか、連日予約が入っているような状態だった。

「"自傷"を専門にカウンセリングをしてくれる(話を聞いてくれる)人がいる」と、多感な思春期の子供達や様々なストレスが溜まった成人女性などからの相談をよく受けていた。



そんな中、過去に相談を受けた方(カウンセリー)の保護者から「同じ学校で自傷をしている子がいるのだけど…」と相談を受ける。


詳しく話を聞くと、どうやら同じ学年の女の子が酷めに自傷をしているらしい。

その女の子の母親も心配をし、気になってはいるけれども仕事が忙しくてかまってあげれない。

母子家庭でその女の子の下にも子供達がいて下の子達の面倒をみるだけでも手一杯。

女の子は自傷をしていること以外はとてもいい子なのでとにかく自傷をやめさせたい。

それでたまたま保護者間の話題で出た僕にカウンセリングをして欲しいと思い、顔を知っているカウンセリーの保護者に依頼してみてくれないかと頼んできた。

とのこと。


正直、話を聞いてみて僕の専門外の部分の方が多いんじゃないかと思った。

女の子がどうこうよりも母親や家(環境)の方が問題なのではないかと感じた。


それに僕はあくまでカウンセラーもどき。

行うこともカウンセリング "もどき"。

話を聴き、自分の過去の経験や他の人の体験談、その他様々な物から得た知識・情報を元にカウンセリー本人やその環境にアプローチ・アドバイスを行うだけ。

多少は勉強しているし、カウンセラーの師匠に心理学・カウンセリングの基礎は教わっているものの、所詮は素人。

失敗する可能性だってある。

あまり深刻な問題には関わることができない。


なので始めのうちはお断りしようと思っていた。

…ただ女の子が今おかれている状況を考えるとどうも気になってしまう。

「なぜ、自傷をするのか?」

「何かのサインなのか?」

「傷はどれぐらいなのか?」

「どんな気持ちで自傷をしているのか?」

「相談できる人はいないのか?」

様々な事が頭の中をグルグルと駆け回る。




…僕も過去に自傷を経験している。

自傷"癖"になってしまうまで自傷を続け、一時は1日に自傷する回数がトイレにいく回数よりも多かったぐらい。

左腕は傷だらけになり常にアームカバーをつけて生活をしていた。

なんなら今だってふとしたときに自傷衝動にかられる。


そんな僕だから自傷の辛さを知っていた。

苦しさ・痛さを分かっていた。

もちろん"完全に"というわけではないがやっていた分、少しは理解できていた。


だから気になってしょうがなかった。


自傷をしている人の中には好き好んで自傷をする人もいる。

嬉々として自分を傷つける人もいる。

そういう人は放っておけばいい。

好きにさせておけばいい。


ただ、彼女はどうだろう?

自傷したくてしているのだろうか?

それともしたくないけどしているのだろうか?

それともしざるえないのだろうか?


………

………………

…………………………

いくら考えても答えは分からなかった。


…なのでとりあえず一回、話を聴いてみることにした。


そして、僕は5日後に彼女と対面した。

彼女が抱える問題と共に。