じゃれる | 水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

その日は

何度も何度も、身体を重ねた

 

目が合えば唇を求め

手を伸ばせば、雅治の身体がそこにある

 

スイッチはどこにでも転がっていた

手当たり次第に押すかのように、求めた

 

触れていたい

添うように触れ、次第に誘導し、私を開いて

 

私は雅治にずっと酔い続け

 

 

 

でも

 

抱かれれば抱かれるほどに、私はクリアになっていく

 

体の中に、寒々しい覚悟が出来つつあった

 

 

 

 

 

「眼鏡、今日はしないのね」

 

「・・・してたほうがいい?」

 

「見たいから外さないって。外してって言ってもあんまり外さないのに」

 

「ふふ・・・」

 

 

「でも、今日してた眼鏡のほうが、別のよりも好き」

 

「そう?」

 

「うん・・・濃い色の縁がある眼鏡のほうが好き」

 

 

 

イマドキのおしゃれ眼鏡、よりも

少し昭和な

 

だって、私の記憶にあるのは、黒縁の眼鏡だもの

ネクタイも、眼鏡も

キュッと締まる濃い色が、存在感があって似合う

 

昔はとても強く見えた眼鏡が、今は上手に時を捉えていて

昔よりもインテリ度は上がってる

 

 

「でも・・・」

 

「うん?」

 

「人前ではほとんど外さないんでしょ、眼鏡。だから、外した顔はいつもと雰囲気が違って見えてちょっとドキドキする、違う人みたいで」

 

「あれ、sanaはじゃあ僕じゃない違う誰に抱かれているの?」

 

「・・・まぁ!」

 

 

アラカンとアラフィフ、のいい大人の会話じゃない

 

昔を知っている相手、って、時がその時に戻ると言うから

逢っている時は、いつも私はハタチそこそこの、気分に戻ってる

 

 

 

「眼鏡があるのとないのと、sanaはどっちがいい?」

 

 

「・・・どっちも。だけど、他の人があまり見たことがない顔を至近距離で見られるのは、嬉しいかな、前は言っても外してくれなかった」

 

「ふふふふ・・・」

 

 

 

 

 

「雅治・・・あのね・・」

 

 

「うん?」

 

 

 

 

 

 

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