今、を話すには
謝恩会の夜から、さかのぼらなければならない
ひと息では話し尽くせない色々を
けれど日曜夕方の、母としても妻としても忙しいこんな束の間に
告げるわけにもいかない
「ふふふふ・・・」
言いきった、とでもいうような満足げな表情を浮かべ私をのぞきこむ。
私と同じように、ガサガサと手荒れのある指先がコーヒーのストローをつまむ。黒い液体が彼女の喉に吸い込まれているのを見、その視線に目を合わせた。
彼女は
私たちの時の経過を知ったとしても、ただそのまま受け止めるだろう。
良いとか悪いとか、
そんな、悩みつくしたことにわざわざ触れ、そこに自らの感情を挟み込み喜怒哀楽を表現するような、野暮はしない
彼女は、私の、恋のしかたや原点を知っている
生きるのに、
自らを奮い立たせるのに手を離すことの出来なかった1.5人称の恋を
彼女は、きっとわかってくれる
私は、弱っている
そう思った
どうして、どうして病が降りかかるのが私ではなく雅治なのか
この恋が赦されぬ罪であるなら
同じくらいに、それ以上に重い罰を
どうして私に与えてくれなかったのかと、思う
恋を、雅治の手に投げかけたのは私だ
どんなに想っても、私は何も出来ない
何かの折に、傍にいることもなく、手を握ることもできない
私は、遠くから
雅治が吐き出すことをしない、できない苦しみに
寄り添おうとする事しかできない
今までに考えたことの無い、感じたことの無い痛みを
どうしようもない手詰まりな、閉塞感を全身で感じていた
今ここで
彼女に、
話せたら
今、の思いだけでも話せたら
自分の思考が、歪み始めているのに気づいていた
その歪みを、
sana、そうじゃない そうじゃないって
そう言って貰いたくて
「あのね・・・どうせsanaのことだから、試験受ける準備して、私に連絡するつもりできっちりお土産持ってきたんでしょ。それで、当日に、ふって思いついたみたいに私に連絡をしてくる。これってさ、私にお土産の準備をさせないっていう計画的思考よね。・・・・日曜日に、幼稚園児つれてるお母さんが、突然の来訪者に対して準備できないだろうって」
「バレてたか
・・・いいのよ、それで。小さい子供がいて忙しいのは経験済みだもの、今一番忙しい時じゃない。日曜日の時間は貴重よ、お土産準備する時間じゃない。お土産の交換に来たわけじゃないわ、顔を見に来たんだもの」
![てへぺろ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/019.png)
「あのね、準備させてよ、もう。遠くから来るんだから。・・・でもね」
そう言うと、彼女はローズクオーツのフラーレンを差し出した
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