「・・・わかった。逢いに行くよ。」
うん、と腕の中で軽く頷いて先生は私を見上げた。
叶ってしまった。
今までしたことのない願い事、が急に恥ずかしくなって目をそらした。
目をそらしても腰を支えるように回った腕の力が緩むことはないから、言葉だけで関わっていた今までのぎこちなさが抜け、解放されたかのように呼吸がしやすくなる。
もっと早く。もっと気持ちごと先生に預けていたら、もっと。
と先生にもたれかかりながら思い、いや、と打ち消す。もっとではなく今やっと、なのだと。
「さて、じゃホテルはどこを取ろうかな」
そう言うと背中に回した手は動きを止めずに、目だけで私に次のキスを促した。
「実験室、講義室を見て研究室も見たね。じゃそろそろ出ようか」
「そうですね」
学生時代の思い出があちこちに残る場所は、相変わらずの独特の匂いがした。すれ違いざまにぴょこんと頭を下げる学生さんたちに昔の自分を重ねてしまう。
オシャレするよりもとにかくレポートだ実験だと忙しかったあの頃。
気持ちが卒業するのに25年・・・どれだけ留年よ。
でも、もうこれで来ることはないと思い研究室を見渡した。
もう学生時代の思い出に先生をリンクさせて思わなくても、いい。
今の先生で、いい。これからゆっくり恋をする、先生に。
「あの・・・」
「何?」
「もうブラのホック、止めてもいいですか?」
「止めてあげようか」
「いや・・・自分で出来ます」
「へー。服の上から後ろ手に?器用だねー」
もう。
よく言うわ。
さっき、片手で服の上から外したの誰よ?
もう。