隣の部屋にも、先生はいなかった。
その隣の部屋にもいない。
改めて見てみると、賑やかに楽しんでいた担任も、他の先生方の姿も無く
騒いでいるのは学生だけになっていた。
「先生たちはー?」
「えっ?何ぃ?」
カラオケの大音量のせいで隣の声もまともに聞こえない。
「先生たちは?」
「帰っていったよ、さっき。後は若い者で楽しみなさいだって。会計もお終い!」
「ええっ?帰った?」
「だって、もう夜中2時だもん。オジサンたちは眠いから帰るってー」
噓?
ズルイ。
帰るなら、何で声かけてくれなかったの?
何で?最後なのに。最後の最後に、何で何も言わずに置いて行くの?
「先生たち、どこから帰るって?」
「え? えーと、まっすぐ行ったら西口だから、そのあたりでタクシー捕まえるんじゃない?」
急いで友人たちのもとへ引き返した。
「あれ、sana、どこ行ってたー?カラオケ・・・」
「ごめん!!、ちょっと、出てきていい?」
「どこへ?外?暗いよ?オールナイトで・・・」
「先生帰ったって!今さっき出ていったって。 私、まだ居ると思ってて、最後に話をしたかったのに。帰ったって!」
「どうするの、どうしたいの?」
「わかんない。でも、追いかける。どこにいるかわかんないけど。それで、もし、帰ってこなかったら・・・」
「わかった。荷物は持って帰っておく」
「行っといでー。納得できるように話してきたら。 大丈夫、私たちはまだいるから」
「ごめん」
街灯も無い、真っ暗い外へ、私は走り出た。