脱ぎ捨てていく | 水底の月

水底の月

恋の時は30年になりました 

雅治が何かを纏っているのはベッドに入るまで。

するりと脱いで、ベッドに滑り込む

 

 

「ベッドの中で何かを着るのは、無い」

 

何かで隔てられるのは嫌。

たとえ肌触りのいいガウンだったとしても

ガウンに焼きもちを焼くかのように、私の肌から剥いでいく

 

やっと手に入れた

お気に入りのおもちゃを取り戻した

子どものような顔をして

 

 

ガウンを脱ぎ

下着を取り

 

身体一つになる

肌、だけになる

 

人のことは言えない

私も多分にそうだけど

こうあらねばならない、こうしなければならない

そんな抑制

理性が服を着て立つような、誰に聞いても生真面目な

 

それをも、雅治は脱ぎにかかる

 

 

「どうして?」

「嫌だ」

「ダメなの?」

 

私の抵抗に
小さなためらいに

小さな子どもが文句を言うような気配で

 

 

 

誰でもがそうだろう

誰もが

預けることの無い、自らの欲望を抱えていて

それは、預けられるものではないとも捉えていて

 

 

私だから、私にだけ、解くのだ

そんな、勝ち誇ったような独占欲ではなく

 

 

そういった

日常の、今まで生きてきた中での我慢というか

理性というか

雅治の思う、自分はこうあらねばならないと自分が決めたルールというか

 

 

それを、解いていき

脱ぎ捨てていく

 

それは

派手な快楽ではない

でも、ほどかれ、その顔を見ることは

肉欲に勝る、狂いこみそうな充実感なのだけれど

 

 

たぶん

私が雅治に思うのと同じように

「何かをして私に嫌われる」などとはもう欠片も思わないだろう

 

私に触れ

私をのけ反らせ

私に声を上げさせ

 

その顔つきが、汗ばむほどに優しくなる

気配が、穏やかになる

もう、その時、満たされることを雅治は考えていない

私を満たすことだけを考えてしまっている

 

そうして

 

雅治は、私に還り

雅治を、取り戻していく

 

私は、その為にいる

 

 

そして私も

そんな雅治に還り

私を、取り戻していく

 

 

SEXとは、互いの何を交換しているのだろう

 

 

「・・・ねぇ、気持ちいい?」

 

 

雅治は、食い下がる

私が「気持ちいい」という表現を使わないから

 

私の身体に起こる変化、切れ切れになる声

止められない痙攣を

全て我の与えた勝利の印かのように手に持ちながら

 

それでも

私の「気持ちいい」を聞きたい

雅治の思う「快楽」に私がのめり込んでない

もっと我を忘れて、もっと何も覚えていないほどに

息も出来ないくらいに僕にすがりつき、わからなくなるくらいに吠えて

 

・・・そんなに遠くで、僕を見ないで

 

 

ねぇ

 

えげつない 乱れたsanaが見たい

 

 

そう言いたげに

 

ねだるように私の身体に注ぎ込んでくる

 

 

 

 

 

 

 

 

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