私の好きな豊真将

 幕内土俵入りで、豊真将はひときわ大きな声援を浴びる。支持される理由は、外連味のない相撲内容はもちろん、「礼に始まり、礼に終わる」という大相撲のよき伝統文化が所作から伝わってくるためだろう。
相手と呼吸を合わせる土俵の上がり方や、蹲踞の姿勢、顔の前でかしわ手を打つ塵浄水、懸賞を受け取る前に切る手刀など、所作といっても実に幅広い。
豊真将はその一つ一つを丁寧に行う。中でも心地よさを覚えるのが、取組後に深々と頭を下げて礼をする姿だ。感情をあらわにして、相手を敬う態度があまり見えない力士も目に付くだけに、潔さが際立つ。
入門時から師匠の錣山親方(元関脇寺尾)の教えを守る豊真将は「所作をきっちりやって正々堂々としていれば、相手に大きく見せられる」と話す。
いかなる時でも心を内に秘めて深々と頭を下げるのは、簡単なようで実は難しいこと。苦労を重ねた人生。豊真将の真摯な姿勢が、土俵ににじみ出ている。