新年明けましておめでとうございます。
遅くなりましたが、2022年「今年の10冊」です。
去年一年の間にぼくが読んだ本のベスト10を選んでいます。
これは去年出版されたものに限りません。
1. 国宝 吉田修一
2. 塞王の楯 今村翔吾
3. 笑い神 中村計
4. げいさい 会田誠
5. ばかもの 絲山秋子
6. あくてえ 山下紘加
7. 女のいない男たち 村上春樹
8. 冒険のモスクワ放送 西野肇
9. ノースライト 横山秀夫
10.おいしいごはんが食べられますように 高瀬準子
番外
マイ・ウェイ ハチミツ二郎
甘夏とオリオン 増山実
三十過ぎのぼたん雪 田辺聖子
1は侠客の家に生まれた男が上方歌舞伎の大名跡の一門に入り、その名門の息子とふたりがお互いにライバル心を燃やしながら芸の道に精進して芸を極めていく姿を描いている。
役者や演技の描写がすばらしく、目の前で観ているようだった。
また、任侠の世界と梨園の世界が詳しく描かれており勉強?になった。
2は絶対に破られない石垣を造ろうとする穴太衆とどんな城も落とす鉄砲を造ろうとする国友衆という共に近江の国の職人の戦いを描いた物語。そこに情愛の大名・京極高次や甲賀忍者も絡んでまさに近江だらけの小説。
3は笑い飯を中心にM-1に賭けた漫才師たちを膨大で綿密な取材を元に徹底的に描いている。ぼくも何カ所かに登場するのですが、ぼくの知らなかったこともたくさんあった。
特に、M-1以前の笑い飯や千鳥がなんと真摯で苛烈な笑いの追求者であったかを知って驚いた。漫才師たちがいかに真剣に、全身全霊を賭けて漫才に取り組んでいるかがわかる良書。
尚、中村さんはスポーツグラフィック誌のNumberがM-1をスポーツとして取り上げた特集号にも記事を寄せている。このNumberの内容がすばらしく、絶対保存版である。
4は芸大に落ちた浪人生が芸大の学園祭に参加した一日を描いている。
プロの作家ではないが素直で伸びやかな筆致は才能を感じさせる。
5は群馬の大学生のヒデは額子に別れを告げられ、しかも手ひどい仕打ちを受ける。その後他の女と巡り会うもしっくりいかずアル中になってしまう。
こう書くとありふれていてなんだかつまらないのだが、その書きぶり、文体がなんとも言えない魅力のある小説。
6は芥川賞候補作。娘、母、祖母の三代の女家族の物語。
ぼくは芥川賞受賞作よりおもしろかった。
7は他に「ドライブ・マイ・カー」や「イエスタデイ」「独立機関」「木野」などの短編集。映画「ドライブ・マイ・カー」はそれらを統合した形でつくられたと思う。
ぼくはハルキを選ぶことは少ないのだが、リュウの「MISSING」が珍しくおもしろくなかったのでこちらを選んだ、ということでもないのだが。
8は30年ほど前、サーカスファミリーとNGKへの出演交渉・打合せをするためにソビエト連邦末期のモスクワに一緒に行った西野さんの著作。
西野さんは大学卒業後、ロシア語も何もまったく知らないのにソ連に渡り、モスクワ放送で日本向けの放送をしていた。
当時、ソ連では禁制だったビートルズの「バックインザUSSR」を放送して事件になった話や岡田嘉子さんとの出会い、肋骨レコードの話などびっくりするような話が満載。
9はタウトの椅子を巡るミステリー
10は芥川賞受賞作。女は怖い、男はずるいということですか。
番外の「マイ・ウェイ」はハチミツ二郎という人間のふてぶてしさ、繊細さ、大きさ、おもしろさを再認識した読みもの。
(なぜか画像が横向きになるやつがある、なんでだろう?
わかる方いますか?)