ニーノ・ロータ→ハル・ウィルナー | なるべく猟奇に走るなWHO'S WHO

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「アマルコルド・ニーノ・ロータ」は、ちょっとクセのある名うての

ミュージシャンたちが、それぞれの趣向でロータの曲を演奏する、という

まあ企画盤ではあるのですが、なんといってもジャズ畑を中心としたその

メンツが豪華、てかシブい、てか「異能」とか「鬼才」などと呼ばれがちな

人たちが多くフィーチャーされています。で、それが一堂に会して、って

ことになると、ものすごいとっちらかったものになりそうなもんですが、

さにあらず。意外な統一感で、BGMとしてもかなりいいんじゃないかと。

個々の印象でいくと、カーラ・ブレイ・バンド「8 1/2」とかは

いかにもなんですが、ジャケットにその名前を発見して正直驚いた、あの

「ビートニクス」デイヴィッド・アムラム・クインテットによる演奏

「サテリコン」は、かなり面白いです。ビル・フリゼールなんか、

このアルバムで初めて聴きましたよ私は。よくもまあ、こんなものを(ホメてます)作ったもんだ。いったい誰が?

てんで調べてみると、企画・プロデュースがハル・ウィルナーという、当時まだ25歳(!)だった若者であり、

その年齢でこの人選はなんだ!とまたまた驚愕したもんです。趣味がじじいだ。それでも、ご覧のとおりの超クールな

ジャケットといい、その志といい、もちろん演奏といい、非常に優れたアルバムで、大愛聴盤でした。で、これだけで

終わるかと思ったら、ウィルナーはアイディア一発のプロデューサーではなかったんですね。次の企画盤がこれまた

相当に面白いというか、一層ハチャメチャというか、とにかくアッと驚く人選なんで。


このセロニアス・モンクへのトリビュート盤こそ真の驚愕だったかも

知れない。「That's The Way I Feel Now」は、なんと2枚組!

もちろんモンクは真に尊敬すべきミュージシャンであるし、作曲家としても

数えきれないほどの名曲を残しており、これをジャズメンだけにやらしとく

のはもったいないってんでもないでしょうが、それにしてもこの人選は・・・

ピーター・フランプトンクリス・スペディングってのは何?

トッド・ラングレンはまだしも(でもないな)ワズ(ノットワズ)

ちょっとウケ狙いが垣間見えます。まあ当然、普通の?ジャズのひとも

多数参加してますが、特記したいのが、「アマルコルド・・・」でも点景的な

演奏ながら強い印象を残した、僕の大好きなソプラノサックス・プレイヤー

スティーヴ・レイシーによるデュオもの3曲です。「モンク吹き」と

いえば、なんといってもまずこの人でしょう。エルヴィン・ジョーンズとのデュオなんか、もう聴き惚れちゃいました。

ちなみにこの作品は、ぜひアナログを手にとっていただきたい。見開きジャケットがすごく楽しいんです。あと、CDだと

ジョン・ゾーンのとかカットされてるしね。とにかく、これでウィルナーは、「奇妙で面白いトリビュートアルバムを

企画する奴だ」という世間的な認知を受けたんだと思います。



で次に何が来るんだ?と世間の期待はいやが上にも高まったわけですが

これがもう予想の斜め上というか、なんとクルト・ワイルなのでした。

20世紀最高の作曲家のひとりですね。やるなあ・・・

邦題は「星空に迷い込んだ男」。こちらのメンツはロック率高し。

目玉は、ジャズの有名どこを従えてブイブイ言わしてた頃のスティング

が、ほぼそのメンバーで「三文オペラ」を歌ってるやつなんでしょうが

他にもトム・ウェイツ(!)とかルー・リード(!!)とか、いかにもな

ヴァン・ダイク・パークスが3曲やってるのも、ファンとしては嬉しい

ところです。今回は、前作にあったような暴力的なアレンジのナンバーは

ほぼなくて、みな古っぽい雰囲気でイイ感じで統一感あり。こちらも非常に

いい企画だったと思います。そして、いよいよ勢いに乗ったウィルナーは、

この後も次々トリビュート盤を連発することになるのですが、はっきり言って飽きてきます僕としては。

ここまで来て、ウォルト・ディズニー映画の主題歌集を持って来られても全然驚きませんから。

想定の範囲内というか。まったく慣れっていうのは怖いもんです。


ちなみにこの「ステイ・アウェイク」も、以前からの常連組に加え、ジャズや

ロックの有名どころが多数参加。まあ中にはアーロン・ネヴィルの例の

へろへろコブシで歌われる「ミッキーマウス」とか笑えるものもありますが、

さすがにサン・ラまでいくと、珍しい奴を呼んで来りゃいいってもんじゃねえだろ、

と思ってしまうようになっちゃうんですよ。ほんと贅沢ですねファンというのは。

次のチャールズ・ミンガスのトリビュートに至っては、メンバー確認して終わり、

みたいな。なんちてウソですけどね。 ええっなんでここにキース・リチャーズ

チャーリー・ワッツエルヴィス・コステロだ、やっぱ企画ものは

なんて具合に。ちなみに、ここにはいちいち書きませんが、多分このアルバムが

これまでで一番通好みのメンツかもしれません。内容的にちょい地味な印象。

感涙もののメンバーによるポエット・リーディングがあったりとか、チャックD

のラップであるとか、末梢的に面白いのもあり。


ウィルナーはその後、トリビュートもののみならず、それこそルー・リード

とかマリアンヌ・フェイスフルなど、単体の方々のプロデュースなどを

してるようですが、ほとんど未聴です。始めの3枚があればいいな私としては。

代表作がすべてトリビュートもの、という非常に珍しいひとだったと思います。




さて、上記ワイルのトリビュートに当然のように招聘されたシンガーがいます。ウテ・レンパーみたいな人も

いますけど、「ワイル歌い」といえば、僕はこのひとしか思い浮かばない。個人でワイルのトリビュートまで出してるし・・・