涼風文庫堂の「文庫おでっせい」500 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<ロレンス、

デュ・モーリア>

 
 

1503「恋する女たち」 (上)

ディヴィッド・ハーバート・
ロレンス
長編   福田恆存:訳  新潮文庫
 
 
 

1504「恋する女たち」 (下)

ディヴィッド・ハーバート・
ロレンス
長編   福田恆存:訳  新潮文庫
 
 
イギリス中部の小さな炭坑町を舞台に、
姉妹の対照的な愛の姿を描く。
 
近代理知を否定し、
生命感の流露を主張する著者中期の代表作。
 
(提供元: サピエ図書館資料検索)
 
……と言う訳で久々の要約なしの文庫の登場です。
 
ガドラン(妹)とアーシュラ(姉)のブラングエン姉妹と、
ジェラルド・グリッチ、ルパート・バーキンという男性陣。
 
ガドランとジェラルド、
アーシュラとルパート。
 
この二組の男女が織りなす恋物語――。
 
……といってもロレンスのことだから、
色々あって、自殺や男色が絡んでくる――。
 
* 相手を死に追いやるガドランのモデルとなったのは、
  あのマンスフィールドだとか。
 
 
<成り立ち>
* この『恋する女たち』は『虹』の続編だとか。
  一族の話、ってなると
  ゾラの<ルーゴン・マッカール叢書>
  みたいなものを目ざしたのか?
* スタインベックの『エデンの東』っぽくもあるか。
 
<ゲイ小説>
* この作品を持って、
  ロレンスは、ワイルド、フォースターと並んで、
  英国における ”ゲイ小説” の権威の一人になったとか。
 
* 最後の最後、
 ルパートが妻のアーシュラに ”宣言” するところ。
 ルパートは亡くなったジェラルドが忘れられない、
 と告白します。
 
行きがかり上、多少長くなりますが、エンディングまで――。
 
「あんたにはジェラルドが必要だったの?」
 ある晩、アーシュラがたずねた。
「うん」
「あたしだけでは十分じゃないの?」
「うん。女に関するかぎり、きみはぼくにとって十分だ。
 きみはぼくにとっては全女性だ。
 だが、ぼくは、きみとぼくとの関係が永遠であるように、
 そういう永遠な男の友情がほしかったんだ」
「あたしだけでは十分じゃないのね?
 あたしはあんただけで充分だわ。
 あんた以外にだれもいらない。
 それなのに、あんたのほうは
 どうしてそうじゃないんでしょう?」
「きみを得た以上、
 ほかにだれがいなくてもぼくはぼくの全生涯を生きうる。
 ほかに水入らずの親密さがなくても平気だ。
 だが、ぼくの全生涯を完璧に、そして真に幸福にするためには、
 男との永遠な結合もまた必要だったのだ。
 別の種類の愛がほしかったんだ」
「あたしには考えられないわ。それは片意地というものよ。
 屁理屈だわ、頑固というものだわ」
「そう――」
「二種類の愛を得るなんてことはできないわ。
 どうしてそんなことができるの?」
「できないかもしれない。しかもぼくはほしいんだ」
「そんなことできないはずよ。
 だってそれはまちがっているんですもの。
 不可能なことなんだわ」
「ぼくはそうはおもわない」
とバーキンは答えた。
 
 
……ちょっと分からん。
 
第二十章「組み打ち」
で、ジェラルドとバーキンは(おそらく)裸で、
取っ組み合いをしています。
バーキン曰く、「日本のレスリングみたいなもの」らしい。
 
なんにせよ、ロレンスはこの男二人の裸の絡み合いを、
思わせぶりに数ページ費やして描写しています。
 
愛しあう男たちの話を、
『恋する女たち(Women In Love)』と名付けるのは、
これ如何に。
 
<余談>
下世話なことをちょっと……。
 
新潮文庫から出ている(出ていた)ロレンスの著作は
コンプリートしているんですが――
 
私が所持しているもっとも古い
<新潮文庫/解説目録:1986年8月版>、
この時点で、ロレンスの作品は、
『チャタレイ夫人の恋人』
『ロレンス短篇集』
この二作品のみになっています。
 
もともとは、
『息子と恋人』 上・中・下
『恋する女たち』 上・下
『チャタレイ夫人の恋人』
『死んだ男・てんとう虫』
『ロレンス短編集』
『虹』 上・下
 
と、これだけ揃っていたんですが……。
 
<要注意>
* これはご参考までに。
  昔は(中)も出ていたようなので……。
 
 
 

1505「レベッカ」 (上)

ダフネ・デュ・モーリア
長編   大久保康雄:訳  新潮文庫
 
 
モンテ・カルロで知り合った英国紳士に望まれ、
マンダレイの邸に後妻にはいった ”わたし” 
待ち受けていたものは、
美貌と才智に包まれた先妻レベッカの
不気味な妖気が立ちこめ、
彼女によって張りめぐらされた
因習と伝統に縛られた生活だった……。
 
不安と恐怖に怯えながらも
ひたすらに愛を捧げようとする、
若く純粋な女性の
繊細微妙な心理を追究したミステリー・ロマン。
 
                        <ウラスジ>
 
 
 

1506「レベッカ」 (下)

ダフネ・デュ・モーリア
長編   大久保康雄:訳  新潮文庫
 
 
仮装舞踏会の翌朝、
海中に沈められていたレベッカのヨットから、
埋葬されたはずの彼女の死体が発見された。
 
はじめて夫から聞かされる
彼女の死にまつわる恐るべき事実。
 
事件は、
レベッカを死の直前に診察した医師の証言から急速に展開し、
やがて魔性の貴婦人のベールが剝がされる……。
 
息詰まる物語の展開の中に、
ロマンの香りを織り込んだ
すぐれたサスペンス・ドラマである。
 
                        <ウラスジ>
 
スリル、サスペンス、切迫感、
これがデュ・モーリアの文学をささえている
もっとも特徴的な三つの要素だ
 
<あとがきより>
 
話の中身はと言うと――
 
それほど美しくはないが、
心の素直な薄幸の若い娘が、
ふとしたことから中年の紳士と結ばれて、
名家の女主人となり、くもの巣のようにはりめぐらされた
因習と伝統にがんじがらめになって、
日夜不安とたたかいながら、夫の愛情だけを信じて、
息もたえだえに、一歩一歩、幸福を手探って行く……。
 
<あとがきより>
 
『ジェーン・エア』にどことなく似ている……。
 
 
”それほど美しくないが” 
というヒロインの容姿を含めて。
 
捉え方は色々でしょうが、
”火事” が幾つかの要素を解消するという点も含めて。
 
で、死者の生前が暴かれて行く過程は見事。
 
物語の終盤、熱狂的なレベッカ崇拝者、
デンヴァース夫人はこう語ります。
 
「奥さまは、あなた(愛人)も、デ・ウィンターさま(夫)も
 愛してはいらっしゃらなかったのでございます。
 男はみな軽蔑していらっしゃいました。
 そんなことを超越していらしたのです」
 
 
<余談 1>
亡くなった女性が ”悪女” だったというお話。
 
『鉄の門』 マーガレット・ミラー
後妻、変死をとげた先妻。
『ヒルダよ眠れ』 アンドリュー・ガーヴ
死んだ妻の正体とは。
『虚栄の女』 ウィリアム・マッギヴァーン
死んだ悪女の後始末。
『グロテスク』 桐野夏生
東電OL殺人事件。
『悪女について』 有吉佐和子
悪女の履歴書。
 
etc.
 
<余談 2>

『レベッカ』を検索すると真っ先に登場するのが――

 
NOKKOがいて、
「FRIENDS」や「RASPBERRY DREAM」を奏ってた
 ”REBECCA” 。
 
彼らはこの作品ではなく、
こちらの作品からバンド名をつけたそうです。
 


 

ポーターの「少女パレアナ(ポリアンナ)」と並ぶ、
「赤毛のアン」の亜流――
って言ったら怒られるか。
 
 
【涼風映画堂の】
”読んでから見るか、見てから読むか”
 
 
 
◎「レベッカ」 REBECCA
1940年 (米)RKO
製作:デヴィッド・O・セルズニック
 
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ロバート・E・シャーウッド/ジョーン・ハリソン
   Adapt.フィリップ・マクドナルド/マイケル・ホーガン
撮影:ジョージ・バーンズ
音楽:フランツ・ワックスマン
原作:ダフネ・デュ・モーリア
出演
ローレンス・オリヴィエ
ジョーン・フォンテイン
ジョージ・サンダース
ジュディス・アンダーソン
グラディス・クーパー
ナイジェル・ブルース
レジナルド・デニー
C・オーブリー・スミス
レオ・G・キャロル
 
* ヒッチコックの渡米一作目。
* ここからサスペンス映画の巨匠へと飛び立つ。
 
* ローレンス・オリヴィエ。
* この映画のスクリーン・テストを、
  当時新婚ほやほやだった
  ヴィヴィアン・リーが受けていたそうな。
 
* で、わが麗しの永遠のマドンナ、
  ジョーン・フォンテイン。
* 同じヒッチコック監督の『断崖』でも、
  不安にあえぐ新妻を演じてた。
* ”美女にあらず” と言う設定は
  続く『ジェーン・エア』でも同じ。
* 納得いかん。
 
* ジュディス・アンダーソン。
* ある意味主役よりインパクトのあった
  ダンヴァース(原作ではデンヴァース)夫人役。
* 背後からすっと忍びよるイメージ。
 
 
* 後年、「スタートレック」で、ヴァルカン人を演じる。
* 見た目は女性版<ミスター・スポック>。
 
* これ以上のハマリ役があろうか?
 
* レオ・G・キャロル。
* この映画からヒッチコック作品の常連になる。
* 『白い恐怖』じゃ、最後手首がグルっと廻って……。
 
* 私らの年代だと、「0011ナポレオン・ソロ」の 
  ”ウェーバリー課長(だっけ?)” のイメージが強いかも。