涼風文庫堂の「文庫おでっせい」  286. | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<井手孫六、

星新一、

永井路子>

 

868.「アトラス伝説」 直木賞受賞作

井手孫六
短編集   夏堀正元:解説  文春文庫
収録作品
 
1.非英雄伝
2.『太陽』 の葬送
3.アトラス伝説  (直木賞受賞作)
 
 
明治14年、
ひとりの洋画家が謎の死を遂げた。
 
冬崖・川上万之丞、
陸軍参謀本部測地課長の要職にあった。
 
狂を発し死に走る、
とされたその最期には、
意外にも明治新政府の奇怪な暗黒の手がうごいていた……
 
第72回直木賞を受賞した力作歴史小説。
 
表題作のほかに
「非英雄伝」「『太陽』の葬送」
の二篇を収載した。
                               <ウラスジ>
 
 
どちらかと言えば、
”ドキュメンタリー作家” という感じだった井手孫六氏。
 
この作品集に納められている 『非英雄伝』 が
直木賞候補にあがった時、
「ぼくは、あれは必ずしも小説のつもりで
書いたんじゃなかったんだが……」
と仰っていたようです。
 
この中の 『N博士』 とは、
思いっ切り、”野口英世” であることは
バレバレなんですが、
「ここ数年の統計でも、
小・中学生の間で最も読まれているのがN博士の伝記なんです」
と、言う事で、
真実を語ることに二の足を踏む時代だったようです。
 
後に渡辺淳一さんが、『遠き落日』 で、
それこそ思いっ切り真相に迫っておられますが。
 
 
ここで思いだしたのが、
阿川弘之さんの 『山本五十六』 です。
このなかで元帥の艶聞めいたものを書いたことで、
抗議という名の妨害にあわれたような。
 
いったん神格化された人物は、
崇高なままでいるべき、
という不文律が存在するようです。
 
さて、表題作の 『アトラス伝説』 ですが、
これは全く知らない歴史上の出来事でした。
 
なんでも、
<日清戦争>が起る前に、
”冬崖” 川上万之丞 (この人もよく知らない) が、
清国に日本地図を密売したとか、
重要な地図を紛失したとか、
それで密殺されたのではないか、とかどうとか。
 
明治以降、どちらかと言えば悪役に回ることが多い
”狂介” こと、山縣有朋がそれにからんでいる、とか。
 
死後、
冬崖の画の弟子たちが見た、
ギリシアの神々が描かれたデッサン――
その表題には,
「ゼウスに敗れたアトラス」
と記してあった……。
 
誰がゼウスで、誰がアトラスか、という含みを残して。
 
アトラスって、『地図』 の別称でもあるよね。
それにも引っ掛けてあるのかな。
 
「『太陽』の葬送」は、
私も何冊か持っている、
平凡社の雑誌 『太陽』 ではなく、
明治中期から昭和の初めまで出されていた
博文館の雑誌 『太陽』 のお話です。
 
なんでも、”大正デモクラシー” に乗り遅れて、
廃刊になったとか。
”大正デモクラシー” って言うと、吉野作造かな……。
読んでないけど。
 
<総括>
しかし、
”~とか”
の多い文章になっちゃったなあ……。
 
 
 
 
 
 

869.「宇宙の声」

星新一
中編          角川文庫
収録作品
 
1.宇宙の声
2.まぼろしの星
 
 
この広い宇宙には、
想像もできないような怪事件が待ち受けている。
 
宇宙基地に連れてこられたミノルトハルコは、
奇妙な ”電波幽霊” の正体をつきとめるため、
基地要員のキダ、特殊能力ロボットのプーボと
だだっ広い宇宙空間へ旅立った。
 
ものすごく攻撃的な鳥が支配していたテリラ星、
動物だけを食べつくす恐ろしい植物に占領されたオロ星、
かぶと虫のような怪虫に滅ぼされてしまった無人の星など、
果てしない宇宙で彼らは大活躍!
 
すばらしい空想の世界に読者をさそいこむ傑作宇宙冒険小説、
表題作ほか 「まぼろしの星」 収録。
                               <ウラスジ>
 
 
これは、星新一さんの、立派なジュブナイル作品です。
 
つらつら思ん見るに、
初期の日本のSFには、
良くも悪くも、”軽い” スぺオペが存在せず、
その分野は漫画に任せていたような気がします。
 
その後、
野田昌宏さんの<銀河乞食軍団>、
高千穂遥さんの<クラッシャージョウ><ダーティペア>
あたりが出てくるんですが……。
 
森岡浩之さんの<星界シリーズ>はもっと後。
 
 
でも、この発想って、
『宇宙大作戦』 (あえて 『スタートレック』 とは言わない)
なんですよね。
 
いろんな星があって、
いろんな星に行って、
いろんな星で事件に遭遇する。
 
この手の ”安易” ともとれる発想は、
やはりパルプ・マガジンの賜物なのかも。
 
あとはやっぱり、
『宇宙船ビーグル号の冒険』
だな……。
 
 
 
 
 
 

870.「歴史をさわがせた女たち」

日本篇

永井路子

文春文庫
目次
 
* 愛憎にもだえた女たち
 
和泉式部   王朝のプレイガール
孝謙女帝   栄光の中の孤独
北条政子   鎌倉のやきもち婦人
道綱の母   書きますわよマダム
二条      自作自演、わが恋の記録
常盤御前   作られた美談のヒロイン
 
* ママゴン列伝
 
淀君      豊臣家の猛母
橘美千代   日本一の売り込みママ
熊姫      千姫伝説の演出者
春日局     疑似母性症
 
* 強きもの――それは人妻
 
一豊の妻   超大型のスタンドワイフ?
秀忠夫人・お江   戦国の世のツヨイツヨイ女性
細川ガラシャ   信仰あつき強妻
北政所   日本一の ”オカミサン”
 
* 女が歴史を揺さぶるとき
 
卑弥呼    女王は目下の成長株
持統天皇   理性的で果敢なる女帝
藤原薬子   日本のクレオパトラ
丹後局    大型よろめきマダム
阿野廉子   南北朝の妖霊星
天秀尼    かけこみ寺の守護女神
天璋院    守備型女性のナンバー・ワン
若江薫子   尊王攘夷の女流政治評論家
 
* ケチと浪費の美徳
 
松下禅尼   ご立派! ケチケチ・マダム
光明皇后   日本一の浪費夫人
阿仏尼    欲にからんで五百キロ
日野富子   室町の利殖マダム
 
* 勇婦三態
 
巴・板額    男まさりの女武者
神功皇后   幻のジャンヌ・ダーク
亀姫      戦国の戦中派
 
* 裏から見た才女たち
 
紫式部    高慢なイジワル女
清少納言   ガク振りかざす軽薄派
静御前    レジスタンスの舞姫
出雲お国   自力で売り出した大スター
 
 
歴史をつらつらながめてみると、
日本の女性はいつも弱かったわけではありません。
 
男も啞然とする「猛女」たちのモーレツぶりを、
確かな史実にもとづいて描き出すユーモアあふれる意外史日本篇。
 
登場人物――
和泉式部、北条政子、淀君、一豊の妻、細川ガラシャ、北政所、
阿仏尼、日野富子、紫式部、清少納言、静御前ら
三十数人。
                              <ウラスジ>
 
この本を読んだ後に、
 
北条政子     『草燃える』
春日局       『春日局』
一豊の妻      『功名が辻』
秀忠夫人・お江  『江~姫たちの戦国~』
北政所       『おんな太閤記』​​​​​​
天璋院       『篤姫』
日野富子      『花の乱』
 
が、NHK大河ドラマの主役に抜擢されました。
 
だから何なんだと仰らないように。
 
でも、全く知らなかった人物、
名前は聞いたことがあるがよく解らない人物、
ホント、さまざまでした。
 
今回、読み返してみても、
「だれ?」
という女史が何人かいました。
 
たとえば、
『二条』
よく読むと、”とはずがたり” の作者だと言います。
”とはずがたり” は何となく聞いたことがありました。
 
あとは、
『熊姫』(”ゆうひめ” と読むらしい)
 
『丹後局』 『阿野廉子』 『天秀尼』 『若江薫子』
『松下禅尼』 『阿仏尼』 『板額』 『亀姫』
 
これらのご婦人がたは残念ながら、
今でも分からないままでした。
 
 
 
 
870冊終了。
 
 
予告した通り、
次の30冊は<芥川賞・直木賞>の
”強調月間” です。