涼風文庫堂の「文庫おでっせい」243 | ryofudo777のブログ(文庫おでっせい)

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私が50年間に読んだ文庫(本)たち。
時々、音楽・映画。

<つかこうへい、

チャンドラー、

ロバート・ブロック>

 

766「初級革命講座 飛龍伝」

つかこうへい
長編   武蔵野次郎:解説  角川文庫
 
 
いまだ革命の夢を捨て切れない熊田留吉は、
八方破れのロマンチストだ。
 
全学連丸角派の元副委員長という輝かしい肩書きをもち、
厚いジュラルミンの楯をいくつもブチ破った
礫(つぶて)「飛龍」の、まぼろしの投げ手だった。
 
かつて60年安保のころ、闘争現場から逃げ出し、
警察に身柄保護を求めたという痛恨の汚点はあるが、
誰でも革命家を気どれる最近の風潮をにがにがしく思っている。
 
今日は――栄光の全学連闘争をもりたて、
全学連と実に親密な関係にある
機動隊の奮気をうながすために――
傷つき再起不能になっている
老機動隊員たちを慰問することになった……。
 
右も左もブッタ斬る痛快、奇想天外な発想。
 
鬼才中の鬼才、つかこうへいの書下ろし問題長編小説!
 
                        <ウラスジ>
                                
 
『飛龍』 ってのは、
やっぱり 『水滸伝』 の "張青" からヒントを得たんだろうな。
”銭形平次” もそうだったようだし。
 
それはともかく。
 
数々の名作戯曲を書き上げてきた、
つかこうへいなる演劇人――。
 
その、つかさんの場合、
なぜか小説になると、
ナンセンスの度合いが大きくなりすぎて、
収拾がつかなくなることが、ままあります。
 
これが、これを基調にした芝居の脚本になると――。
あーら不思議。
21世紀に入っても再演されるほどの戯曲と化すのです。
 
まさに、生れついての<演劇人>。
 
にしても、巨人ジャイアンツが好きだねエ……。
 
 
 
 
 

767「さらば愛しき女よ」

レイモンド・チャンドラー
長編   清水俊二:訳  早川文庫
 
 
前科者、大鹿マロイは刑務所を出たその足で、
八年前に別れた女を探しに黒人街の酒場に来たが、
そこでまたもや人を殺してしまった。
 
現場にいた私立探偵マーロウは、
係わり合いになって警察に調べられる。
 
その後、彼はある事件を依頼された。
 
盗まれた高価な首飾りを、
ギャングから買い戻すための護衛役だった。
 
処女作 『大いなる眠り』 以来、
ハメットの正統を継ぐハードボイルド派の王者、
チャンドラーの最高傑作。
 
全篇に流れるリリシズムとスリルと非情な眼は、
すでにこれまでの探偵小説の域をこえて
独自な魅力をもつ世界をつくりあげている。
 
                        <ウラスジ>
                                
 
 
珍しく、名言が浮かんでこない作品。
 
私の場合、
”大鹿マロイ” というネーミングが独り歩きして、
『長いお別れ』 だったか、『さらば愛しき女よ』 だったか、
判然としない時期がありました。
 
偶然を利用したスピーディーな展開と、伏線の張り巡らせ方――。
 
<ウラスジ>にもあるように、ミステリーとしては、
こちらの方が 『長いお別れ』 より上かも知れません。
 
トリックとしては古典的な、
”誰が誰になったのか”
が使用されています。
 
まあ、チャンドラーの作品の場合、
トリックなんかは二の次ですから、
それと分かった時は、
かえって「おお」となってしまいますね。
 
あと、
警察との相性の悪さだけは堅持されていますが……
 
 
 
 
 
 

768「楽しい悪夢」

ロバート・ブロック短篇集

ロバート・ブロック
短編集   仁賀克維:訳/編  早川文庫
収録作品
 
1.子供にはお菓子を
2.ドリーム・メーカーズ
3.魔法使いの弟子
4.スタインウェイ氏
5.その名に恥じぬ霊
6.魔女の猫
7.めがね
8.ハンガリアン・ラプソディ
9.飢える家
10.眠れる美女
11.悪魔の落し子
12.頭上の侏儒
 
 
弱冠17歳で幻想・怪奇小説の専門誌
≪ウィアード・テールズ≫にデビューし、
『サイコ』 『血は冷たく流れる』 などで
恐怖小説家としての名を不動のものにした
ロバート・ブロックの代表的短篇集。
 
アクの強い残酷さで異様なあと味を残し、
読者に強烈な刺激を与える
モダン・ホラーの第一人者が贈る
現代の悪夢の数々。
 
人肉を嗜好する無気味なものにとり憑かれた男の話
「頭上の侏儒」
をはじめ
「魔女の猫」「子供にはお菓子を」「飢える家」
「その名に恥じぬ霊」
など傑作12篇を収録。
 
                        <ウラスジ>
                               
 
 
これは深夜映画で観た劇場未公開作、
『怪奇!血のしたたる家』 
の原作が入っていた作品集です。
 
映画自体はオムニバスで、いくつかの話で出来上がっていました。
 
その中の一つが、
『子供にはお菓子を』。
出演者はあのクリストファー・リーで、
我が娘を魔女と信じて疑わない狂信的な父親を演じていました。
 
いわゆる、
<ヒトガタとしての呪いの人形>もので、
その人形の中に、
呪うべき人間の持ち物や体の一部を埋め込んで、
針や釘で弄ぶ――。
 
原作も映画も、最後は父親の叫び声で終わりますが、
原作の方はかなりエグくて……。
原作兼脚本のブロックが演出部分を差し替えたんだと思います。
 
 
<余談>
この『怪奇!血のしたたる家』 と 『残酷の沼』、
あと観てないけど 『テラー博士の恐怖』 と、
1970年前後にいくつかの 
”オムニバス・ホラー映画” が作られています。
 
で、
なにせショート・ストーリーですので、
ちゃんと観たものの、
どのエピソードが、どの映画に入っていたのか、
のちのち解らなくなってしまうことがありました。
 
とくに前述した三作品には、
P・カッシングとC・リーが出ていて、
印象を紛らわしてしまうところがあるので厄介です。
(『残酷の沼』 にはリーは出ておらず、
 ジャック・パランスが出ています。
 一応、『ドラキュラ』 を演じたことはあるようで……)
 
 
<追記>
ロバート・ブロックについては、
『サイコ』 か 『切り裂きジャックはあなたの友』
の時に、また触れたいと思います。
 
 
 
 
 
【涼風映画堂の】
”読んでから見るか、見てから読むか”
 
 
 
◎「さらば愛しき女よ」 
Farewell, My Lovely
1975年 (米) ユナイト
制作総指揮:エリオット・カストナー/ジェリー・ビック
制作:ジョージ・パパス/ジェリー・ブルックハイマー
 
監督:ディック・リチャーズ
脚本:デヴィッド・ゼラグ・グッドマン
撮影:ジョン・A・アロンゾ
音楽:デヴィッド・シャイア
原作:レイモンド・チャンドラー
出演
ロバート・ミッチャム
シャーロット・ランプリング
ジョン・アイアランド
シルヴィア・マイルズ
アンソニー・ザーブ
ハリー・ディーン・スタントン
ジャック・オハローラン
ジョー・スピネル
シルヴェスター・スタローン
ケイト・マータフ
 
 
* ”スリーピング・アイ” こと
   ロバート・ミッチャムの演じる
   フィリップ・マーロウ。
* ミッチャムはこのあと、『大いなる眠り』でも、
   フィリップ・マーロウを演じている。
* 残念ながら、こちらは日本未公開。
* で深夜の吹き替え版で観る。
* 納谷五郎さんが声を当ててたようだけど……。
* 私の時代だと、ロバート・ミッチャムは浦野光さん。
* 『ポパイ』や、<ウルトラマン>の二代目のナレーション
   として有名。
* ……って古すぎるか。
 
* で、改めて、ロバート・ミッチャム。
* 声の野太さでも、異彩を放っていた。
* とにかく、異常者をやらせたらピカ一だった。
* 『恐怖の岬』 と 『狩人の夜』。
* ボクサーあがりの、本物の ”タフ・ガイ”。
 
* シャーロット・ランプリング。
* どなたかが言っておられたように、
   コーカソイドには珍しい、”一重まぶた”。
* 元・ダンサーという設定だと、『愛の嵐』 を思い出す。
* ノーブルな雰囲気を醸し出しているわりに、
   脱ぎっぷりのいい女優さんだった。
* そのあたりがヴィスコンティに見込まれたのかも。
* 『地獄に堕ちた勇者ども』 のころはまだ20代前半だな。
* 『未来惑星ザルドス』 と 『評決』 も良かった。
 
* 大鹿マロイのジャック・オハローランは、
   『スーパーマン』 のゾッド将軍の仲間。
* 007のジョーズ役だった、
   リチャード・キールあたりとキャラが被る、
   いわゆる<大男>俳優。
 
* ハリー・ディーン・スタントン。
* 根っからの脇役だと思っていたので、
   よもや彼の主演映画が作られるとは……。
* でも、『パリ、テキサス』 は良かった。
* ロードムービーの金字塔。
 
 
* スタローンの端役時代。
* 正直言って、全く憶えていません。