<ファーマー、老子>
749.「果しなき河よ我を誘え」
リバーワールド 〔1〕
ヒューゴー賞受賞
フィリップ・ホセ・ファーマー
長編 岡部宏之:訳 早川文庫
青い空が上にあった。
英国の探検家リチャード・バートンが
死の眠りから目覚めた時
最初に目に入ったのがそれだった。
次に、
緑の草原と、幅一マイルはある<河>。
この大河の両岸に、
ネアンデルタール人から21世紀人にいたる、
すべての地球人類が復活していたのだ!
だれがこのリバーワールドを創りあげたのか?
その目的は?
またなぜ21世紀初頭に人類は滅亡してしまったのか?
様々な疑問を胸に、
ネアンデルタール人のカズ、
くじら座タウ星人、
ビクトリア朝の淑女アリスらと共に、
バートンは果しなき河を遡る探索の旅にでたが……。
1972年度ヒューゴー賞受賞に輝く傑作長篇。
<ウラスジ>
”セカチュー” じゃないけど、
元祖・『西村寿行』って感じの題名。
死後の世界が果てしなく拡がるこの惑星。
そこに登場する歴史上の ”有名人”。
と言う事で、
2003年の映画
『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』
を観た時は、この作品をベースにしたものだろうとばかり
思っていました。
が、原作はアメコミで、アラン・ムーアの手によるものだと。
に、しても発想と設定が似てるんだよな。
『リバーワールド』の登場人物。
リチャード・バートン (”バートン版” で読書家にはお馴染み。
エリザベス・テイラーの旦那だった俳優とは別人)
サミュエル・クレメンス (マーク・トウェインの本名)
ピーター・J・フリギット (著者の名の頭文字と同じ)
アリス・ハーグリーブズ (『不思議の国のアリス』のモデル)
ヘルマン・ゲーリング (そのまんま)
<実在の人物>
『リーグ・オブ・レジェンド』の登場人物
アラン・クォーターメイン (『ソロモン王の洞窟』の主人公)
ミナ・ハーカー (『吸血鬼ドラキュラ』の女主人公)
ドリアン・グレイ (『ドリアン・グレイの肖像』の主人公)
トム・ソーヤー (『トム・ソーヤーの冒険』の主人公)
ネモ船長 (『海底二万里』の主人公)
<架空の人物>
この<無関係を装った関係>を感じたとき、
アメリカのエンタメの<オリジナリティ>は大丈夫か、
と心配になってしまいました。
思えば、『ライオン・キング』 あたりからだよな……。
アメコミと言い、ディズニーと言い。
著作権には一番うるさい国だったのに。
750.「老子」
不詳
小川環樹:訳注 中公文庫
道可道、非常道、名可名、非常名
(道の道(い)うべきは、常の道に非ず。
名の名づく可きは、常の名に非ず)
にはじまる『老子』五千余言は、
儒教思想・文化を否定し、
社会の良識に挑戦した古代自由思想の巨星である。
訳者の優れた日本語訳は、
われわれ現代人に壮大な想像力と魂の安らぎを与えずにはおかない。
<ウラスジ>
とりあえず、
攻撃対象となる 『論語』から。
『史記』に記述があるんだよね、老子って。
その中には、孔子とやりとりする場面があるんですが……。
孔子は、敬叔とともに周におもむき、礼について学んだ。
このさい、老子を訪ねたらしい。
老子は見送りに出て、こう言った。
「人を送るさい、富者は財物を餞け、仁者はことばを餞けるという。
わたしは富者ではないから仁者の真似事をさせてもらおうか」
老子はことばをつづけた。
「聡明で洞察力に富んでいながら、死の危険にさらされる人がいるが、
それは他人を批判しすぎるからである。
雄弁かつ博識でありながら、その身を危うくする人がいるが、
それは他人の悪をあばくからである。
およそ、社会関係のなかに生きる者は、
自己主張は控えねばなるまい」
<史記>
これは<孔子>の欄。
別途、<老子>の項もあります。
ただ、いずれにせよ、
<老子>の判定勝ちのような。
もひとつ。
わたし、老子は<道教>の開祖として認識していたんですが、
どうもそうではないらしいとのこと。
『道教』とは?
孔子の説いた儒教、
一般に老子が説きだしたといわれ、儒家に反対する道家の思想、
宇宙生成論ともいうべき易の考え、
古代の世界観といってよい陰陽説や五行説、
予言というべき緯書の思想、
星で現世や人間の運命を占う占星術なども使われていれば、
医学も入っている。
みこ すなわち巫(ふ)の信仰がつよいことは、
以前から認められている。
仏教に学んだところも多いけれども、
仏教とはちがって説きだした人、すなわち教祖は
だれだかわからない。
教祖がはっきりしていない宗教を、宗教学では自然宗教という。
だから道教は、自然宗教といわなければならない。
<『道教の神々』 窪徳忠>
<道教>に関しての、
ザックリとした、なおかつ解りやすい説明です。
このあたり、
古代宗教の多様性と寛容性が
織りなすカオスの一丁目。
内部・外部で敵対関係になっていくのは中世以降ですね。
<余談>
本来は道教を奉じる人なんですが――
『キョンシー映画』(若い人は知らないか……)に欠かせない
”道士” 。
香港の『霊幻道士』よりも
台湾の『幽幻道士』にハマっていた。
”テンテン” こと、
”リュウ・ツー・イー” が可愛かった。
<月曜ロードショー>で殆んど観たっけ。
今回はスペースが余り気味なので、
ここで750冊目の集合写真を。