<ウィルコックス、
丸山直子、
鈴木俊子>
1888「ロンリーハンター」
ヘイスティングス第1の事件
コリン・ウィルコックス
長編 宮脇孝雄:訳 文春文庫
まもなく17歳になるヘイスティングスの娘が家を飛び出し、
サンフランシスコでヒッピーと暮しているらしい。
折しもヒッピーの一人が殺された。
捜査をしながら娘の姿をさがすヘイスティングスの前に現われる
様々なドロップアウトたち。
ドラッグ、ガン……
蝕まれたアメリカ文化を鋭くえぐる
ヘイスティングスシリーズの処女作。
<ウラスジ>
7冊目にして、ヘイスティングス初登場の巻。
この時点ですでに7冊(共作含めて)が訳出されているので、
ヘイスティングス・シリーズの色分けがここでは成されています。
曰く
このシリーズに現われたいくつかのパターンを分類すれば、
大事件物
たとえば、市当局が無差別殺人犯に脅迫される
『署長は最後に狙われる』
家族物
息子と共に敵に立ち向かう
『父親は銃を抱いて眠る』
事件並列物
二つの事件が同時に発生する
『容疑者は雨に消える』
の三つに分けられると思うが、
本書では ”家族物” の色あいも濃くなっている。
<宮脇孝雄:あとがきより>
そう、ヘイスティングス・シリーズと言えば
『○○は○○る』
という邦題で通っているので、
この処女作のみが違っていることになります。
ちなみに
『依頼人は三度襲われる」(ビル・プロンジーニとの共作)
『容疑者は雨に消える』
『女友達は影に怯える』
『殺し屋は東から来る』
『署長は最後に狙われる』
『父親は銃を抱いて眠る』
『ロンリーハンター』
『子供たちは森に隠れる』
『暗殺者は四時に訪れる』
『ロックシンガーは闇に沈む』
1984年当時。
このあと
『脅迫者は過去に潜む』
が出てるようですけど。
まあ原題は
Dead Aim (容疑者は雨に消える)
After shock (女友達は影に怯える9
と、ごくごく普通の題名で、
○○は○○る
と言う邦題は編集部か翻訳者の裁量で
決められたのかも。
でも、この邦題、
なんとなく、カッコいい……。
<余談>
1969年作で、サンフランシスコってことだと、
フラワー・チルドレンとかヒッピー文化花盛りのころ。
『第八の日』 エラリー・クイーン 1964
も一人のカリスマを頭にいだく独自のコミューンと、
その中での殺人事件を描いてたっけ。
なんにせよ、
こういったコミューンはミステリー的に言えば、
”開放されたクローズド・サークル” でもあるので、
なんか起こっても無理はないかも。
ちょっと新しいとこだと
『神は銃弾』 ボストン・テラン
なんかもそう。
これ60年代後半の
マンソン一家をモデルにしてるよな。
1889「新世界事情」 くらしと文化
異文化を知る1冊
丸山直子 読売新聞外報部
長編 三修社文庫
目次
人間の値段/遺言状/流行語/発禁文学/流行歌/落書き/
占い/迷信/いらいら/ことわざ/嫁としゅうとめ/夫婦げんか/
ペット/子供の遊び/教科書/通信簿/卒業/結婚式/子育て/
暑中見舞い/墓参り/張り紙/
嫁しゅうと マイホーム 交通違反 教育ママ……
平凡な日常生活の中に浮き彫りにされる
人々の生きる姿が共感を呼ぶ。
読売新聞海外特派員がそこに暮らし、
肌で感じて綴った暮らしのミニ文化誌。
<ウラスジ>
○○事情といえば多分、元祖は
『西洋事情』 福沢諭吉
でしょうが、
これが耳にはするが実物は見たことがなく、
それもそのはず、10編(冊)から成る代物で、
お膝元の慶応義塾大学出版からは完本が出ているようですが、
いかんせん文庫にまで行き着いたことはないらしく、
手に入りやすい
『福翁自伝』
『学問のすゝ目』
『文明論之概略』
あたりでお茶を濁すほかなさそうです。
ですから
この『西洋事情』という名前だけが一人歩きして、
そこから派生した「○○事情」というタイトル、
このモジったような、パロったような書籍が
群発している状況だと思っています。
一番有名なのは深田祐介さんの
『新西洋事情』かな。
大宅賞も獲ったし、のちの直木賞受賞の足掛かりになったかも。
『新・東洋事情』って本も書いてらしたっけ。
それはともかく。
本書には
アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、西ドイツ(!)
スイス、ソ連、チェコスロバキア、等の欧米諸国から、
インド、韓国、フィリピン、香港(!)、タイ、インドネシア、
中国、シンガポール、レバノン、等のアジア諸国、
ケニア、エジプト、等のアフリカ諸国
アルゼンチン、ブラジル、等の南米諸国
がひと項目1~2ページで取り上げられています。
初っ端は東ドイツから西ドイツへの脱出費用の話、
最後は中国の「壁新聞」事情。
最初の話はすでに歴史となっていますが、
最後の話は現在進行形ですね。
<余談>
いつ頃の出版か本文庫には明記されていませんが、
「流行歌」のところで、
ケイト・ブッシュの「嵐が丘」が取り上げられていたので、
1978年頃のことか、と。
とにかく、この項では全編、
彼女がフューチャーされています。
<追記>
『続・新世界事情』もあるようです。
1890「誰も書かなかったソ連」
大宅壮一賞受賞作
鈴木俊子
長編 文春文庫
目次
Ⅰ モスクワの外国人
Ⅱ 素顔の庶民生活
Ⅲ 国産品と輸入品
Ⅳ サービスということ
Ⅴ 働く主婦たち
Ⅵ モータリゼーション
Ⅶ 扉の中で
Ⅷ 社会主義の贈り物
Ⅸ モスクワ風物詩
Ⅹ 物価表について
あとがき
その後のソ連事情
モスクワ特派員の妻として、
三年間を当地で暮した著者が、
衣食住をはじめ、
もろもろの暮しむきを女性らしい繊細さと率直さで、
小はタマネギ一個の値段にこだわるところから
描きだした異色ルポルタージュ。
ソヴィエトの素顔が、
ここでは生き生きと描かれており
第二回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した好著。
<ウラスジ>
例によって大宅賞独特の「右旋回」作品の一つか、
思っていたら、
いわゆるホントの意味での
”主婦感覚” で観察、分析されたもので、
何のこだわりもなく読み進めることが出来ました。
いきなり登場する
外出制限のある外人専用アパート、
ドライブの制限
などの不自由さのはなし。
ただ、「だから、けしからん」、というわけではなく、
「そういうもんです」と事実を淡々と述べていらっしゃる、
という感じ。
あとは共産国お決まりとも言える
「外面菩薩内面夜叉」的・経済事情。
行列と品薄、粗悪品のはなし。
これだけ暴露されるんだったら、
某KC国を上回るような、
かつてのアルバニアみたいに
鎖国した方が良かったんじゃないか、
と思います。
<内容>
「中国人に間違えられて」
ソ連の一般市民は政治に無関心という段に始まって、
マルクスやレーニンの本はあっても、
スターリン、フルシチョフ、毛沢東の本が禁書扱いで
一冊も売られていない――
ここからの勢いで、
中ソ対立の根は深く、
対立が表面化してから十年にもなるが、
とくに六九年三月だマンスキー島で
中ソ両軍が衝突してからの
反中国キャンペーンはものすごかった。
で、必然的に、
中国との紛争が激化するたびに、
私たちは中国人と間違えられて
さんざん不愉快な思いをした。
と、なるわけです。
しかし、アジアの共産国って、
一枚岩になったことがあるんでしょうか?
ベトナムが共産国として統一されたあと、
時を置かずにカンボジアに攻め入り
ポル・ポト政権(共産国)を打ち破り、
そこから中越戦争が始まって、
そっから中ソの仲がおかしくなって、
中ソ紛争へ発展してゆく――。
(こんな流れで良いんですよね?)
全く、アジアの共産国、
同志諸君は何をやってたんでしょうかね。
これで1890冊
【涼風音楽堂】
60年代フレンチ・ポップスの続き
「夢見るシャンソン人形」
Poupee De Cire, Poupee De Son
フランス・ギャル France Gall
* 書いたのは、セルジュ・ゲンズブール。
* そう言えば今年(2026年)のカンヌ映画祭に、
娘のシャルロット・ゲンズブールが来てたらしい。
* 彼女、父親のセルジュ・ゲンズブールにも、
母親のジェーン・バーキンにも似てないよな。
* ジェーン・バーキンは若い頃のミック・ジャガーに似てる。
* もとい。
* この曲が流行ったころと同じくして、
似たような雰囲気の「小さなプリンセス」って曲も
あったっけ。
* 歌ってたのは子供時代の西崎緑ちゃん(さん)。
* 彼女は大きくなって「旅愁」
(必殺シリーズ「暗闇仕留人」の主題歌)で
ヒットを飛ばす。
* 「がっちり買いまショウ」や「家族そろって歌合戦」
がやってた日曜の午後。
* なつかしい。






