【虚実の狭間】「感染責められ自殺」各地でデマとの記事 | 中谷良子の落書き帳

中谷良子の落書き帳

核武装・スパイ防止法の実現を

ネットは投稿者の顔が見えず、どのような人格の人間が書き込みをしているか不明なので、やはり私達は事実の裏付けや、経緯を確かめ、決定的なネタではない不確かな情報や、全体像が不明なニュースの引用など、自身の投稿においても細心の注意を払い、発信する情報を自身の目で見ていないわけですから「そういった疑惑がある」「真偽不明だがそういった噂がある」「?」と、文章の末尾に疑問符を付け加えて発信すべきだと思います。

とくに食いつき甲斐のある速報ニュースが出るとネットは一斉にワーーッと炎上されるので、そこは落ち着いて情報を精査する必要があると思います。

以下は読売の特集記事ですが、私は中国ウイルス絡みで被害を受けたことはないのですが、別件で、とんでもない嘘を吹聴された経験がありますので、人を欺く大嘘を周囲にペラペラ話す人間には警戒が必要です。とくに男女問わず、口が達者な人間にはご注意を。




★[虚実のはざま]第2部 作られる「真相」<1>「感染を責められ自殺」…列島各地で同じデマ★

「周囲の人から感染を責められ、自殺した」

昨年4月以降、全国各地の新型コロナウイルス感染者を巡り、そんな無数のうわさが広がった。

SNSやネット掲示板で、それぞれの県名を挙げて「県内最初の感染者」と記したり、職業を書いたりした自殺情報が拡散。読売新聞が調べると、このうち岩手、群馬、富山、長野、山口、愛媛、高知、大分、鹿児島の少なくとも9県では、実際に当事者の周辺で話が広がるなどの影響が出ていたことが確認された。



自殺したとされた感染者は、いずれも「ライブハウスに行っていた」「旅行に行っていた」などの行動歴を自治体が公表し、ネット上で誹謗ひぼう中傷の対象になっていた。

「村八分にされて親も自殺」「自宅に投石された」「落書きされた」「仕事を辞めさせられた」などの書き込みも多数あった。

しかし、9県のケースについて各自治体や感染者の勤務先などに確認した結果、自殺は事実ではなかった。こうした情報を信じる人は少なくない。ある感染者の職場の上司は「本人は中傷に苦しみ、さらに勝手に死んだことにされ、ショックを引きずっている」と明かす。

判で押したように同じ「自殺デマ」が、列島各地で次々と生まれたのはいったいなぜなのか。

★先入観ゆがむ情報「ありえること」ツイッター連鎖★

●町中でうわさ
かつて稲作が盛んだった一帯は、古くからの集落と高度成長期にできた住宅地が存在する。富山県の静かな町が突然、そのうわさでもちきりになったのは昨年4月のことだ。

「あの辺りに感染者が住んでいて、家に石や卵が投げつけられたらしい」
「本人も親も自殺した」

町の理髪店の店主は、客が来るたびに同じ話を聞かされた。その2~3週間前、地元の女性が、新型コロナウイルスに感染したと発表されていた。ネット上では「他人にうつした」などと批判されていた。

店主は感染者と面識はなかった。最初は「まさか」と思ったが、次第に「みんなが言うなら本当だろう」と信じたという。周辺の病院の待合室や喫茶店、職場でも連日、話題に上り、「みんな知っていた」と地元タクシー運転手の1人は振り返る。

しかし、感染者を知る近隣住民らは「全くのデマ」と口をそろえる。当時から、むしろ本人や家族の精神的負担を心配する住民が大半で、責める声はなかったという。80歳代の女性は「ネット情報に踊らされている人が多いが、私達が村八分にしたみたいで迷惑だ」と顔をしかめた。

地元感染者の自殺情報が広がった他の県でも、身近な人は強く否定した。長野県内の感染者が勤務する会社社長は、取引先から相次いで「知り合いから聞いたけど本当か?」と言われた。社長は憤りを口にする。

「誰が流しているのか、本当に気味が悪い」

●正義感あだ
大きな要因となったのがツイッターだ。

「自殺した」の投稿が広まり始めたのは4月初旬。愛媛県の感染者のことが書かれていた。その後、高知、富山、山口、大分、長野などの各県の感染者について、多数の人が同じような投稿をしており、広く拡散しているものもあった。

根拠ない情報が「複製」されたような現象について立命館大(文化心理学)の教授は「ネット情報の先入観」が影響した可能性を指摘する。

情報は、伝達する人々の先入観や偏見により歪んでいく性質がある。

今回は、①「〇〇県で自殺した」との投稿がなされ、見た人に「そういうことが起きる」との先入観が形成される。
②他県の感染者が中傷されると、「自殺するのでは」との憶測が広がる
③口コミなどで「自殺した」に変わり、投稿される
④見た人に先入観が形成される

という連鎖が起きたと、教授はみる。

多数の投稿からは、ある種の正義感から拡散に手を貸してしまう皮肉な傾向もうかがえる。

九州の男性はツイッターで、山口県の感染者について「暴言を吐かれて自殺した」「家族もいるのに酷い」と投稿していた。取材に対し、「友人2人から話を聞き、許せないと怒りがわいた」と明かした。

鹿児島県の感染者に関して投稿したのは、東京の男性医師。投稿は2000回以上リツイートされており、「現地の有力者が言っていたので間違いないと思った。差別はダメだという思いでやったが、申し訳ない」と語った。

★国・自治体の検証必要★

各県では後にデマと気付いた人も多いが、今も事実だと思い込んで投稿する人は後を絶たない。

自治体は感染者のプライバシー保護のため、個人の特定につながる情報は公表しておらず、第三者が真偽を確認するのは難しい。当事者側にも公に否定しにくい。感染自体を知られたくない人も多いためだ。

一方、自治体は感染者と連絡が取れ、自殺デマを把握している県や市もあった。しかし、それを否定する情報発信やネット事業者への削除要請などほとんどしていなかった。

新潟星稜大の教授(社会心理学)は「ネットに火種が残り続けると、当事者に二次被害のリスクがつきまとう。既成事実化され、史実として残ってしまいかねない」と警鐘を鳴らし、こう指摘する。

「大きな災害などでも必ずデマは広がる。どう食い止め、打ち消すか、国や自治体で検証が必要だ」

SNS空間を飛び交い、社会に混乱を招く真偽不明の言説に、どう向き合えばいいのか。身近に潜むリスクを考えるシリーズ第2部は、私達の目の前にあたかも真実かのように現れる情報が、どう作られるのかに迫る。