米の「裏切り」同盟国の疑念 | 中谷良子の落書き帳

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核武装・スパイ防止法の実現を

これも対岸の火事ではありません。世界は腹黒い。日本人のお花畑な方々は、いつも「最悪」なシナリオは考えない。



★[ワールドビュー]米の「裏切り」同盟国の疑念★

シリア北東部の町で10月下旬、クルド住民が撤退する米軍車列にジャガイモを投げつける映像が世界中に拡散した。クルド人男性は拳を突き上げ、「うそつき!」「ネズミのように逃げてくぞ!」と罵倒する。

米国旗を掲げた装甲車は、車体につぶれたイモをべったりと張り付けたまま、迂回を繰り返し、町を去っていった。

この2週間前まで、クルド人にとって米軍は、対トルコ・シリアの守護者だった。トランプ米政権は10月上旬、中東での軍事関与低減のため、米軍の北部撤退を突然発表し、クルド勢力はトルコ軍の越境攻撃にさられさた。

イスラム過激派組織「イスラム国」掃討で米国に協力してきたクルド人にとって、ジャガイモは、米国の身勝手さに対するクルド人の怒りの形だった。

中東では2008年、イラク人記者が記者会見で、ブッシュ米大統領に靴を投げつけた事件がある。米国主導のイラク戦争で多くの同胞が戦死したことへの報復だった。靴とジャガイモは「怒り」でくくられながらも、その背景は異なる。

米国のイラクへの介入には侵略とみなす声がある一方、イラクの独裁政権を打倒したブッシュ氏を擁護する見方もあった。今回、トランプ大統領に対する評価は、非難一色に染まっている。

米国が舞台を去ることで、シリア内戦の決着図は見えた。トルコはシリア北部で念願の緩衝地帯の構築に着手する。シリアのアサド政権は、クルド人勢力を取り込む足掛かりを得た。ロシアは米国の空白地を埋め、地域の影響力を確固とした。

1000人程度だった駐シリア米軍の重しが外れたことのによる情勢の変化は、皮肉にも米軍の存在感を再認識させたともいえる。変化の影響はシリアにとどまらない。クルド人の独り負けとなった結果は、米国の同盟国に「いつか裏切られる」という疑念を植え付けた。

サウジアラビアは、対立するイランとの仲介役をパキスタンなどに頼り、ロシアからの兵器購入の検討も始めた。アラブ首長国連邦(UAE)はイランとの軍事衝突を恐れ、イエメン内戦から手を引き始めた。中東メディアは10月、イスラエルのネタニヤフ首相が国交のないサウジ側と極秘会談したと報じた。

在中東外交官は「域内独自で秩序を形成する動きが出ている」と指摘。展望なきトランプ氏の中東政策が、幸運にも中東の安定につながる可能性はある。

だが、イランの覇権行動は底が見えず、ロシアも足場を拡大させる。イスラム教シーア派系武装組織のスンニ派諸国に対する怨嗟はくすぶる。過激派の脅威は欧州やアジアに広がる。オバマ米政権は、イラクから情勢を見極めないまま撤退し、「イスラム国」の台頭を招いた。益々内向きに走る米国が何を生むのか。

新たな混乱が世界に投げつけられる可能性は少なくない。

『暗殺?中川昭一は日本を守る為に米国の存亡に直結する「2つのタブー」に挑み玉砕した』伊藤貫(独立を目指し宗主国の虎の尾を2度も踏みつけ潰された)