【高阪剛】ラグビー日本代表メンバーに“殺し”を教えた3年を経て・・・① | 中谷良子の落書き帳

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核武装・スパイ防止法の実現を

「ラグビー日本代表の練習を見てキツそうだなと思ったんですけど、なぜか『負けてられない!』って燃えてきたんですよね(笑)」

●ラグビー日本代表スポットコーチ、高阪剛
日本の元総合格闘家、プロレスラー。





Q.ラグビーワールドカップでの日本代表の活躍、凄いですね!

高阪
「そうですよね。凄いことをやってくれてますよ」

Q.強豪国・南アフリカを撃破するという快挙を成し遂げたわけですけど。その陰にはスポットコーチとして指導に当たった高阪さんの存在があったというのが、格闘技ファンとしてはまた痛快ですよ。

高阪
「いや、選手たちがよくついてきてくれたっていう、そのがんばりに尽きますけどね」

Q.そもそも、高阪さんがラグビー日本代表のスポットコーチをやってることについて、そこまで深く語られてなかったんで、これを機に詳しく知りたいんですけど。コーチはいつからやられていたんですか?

高阪
「始めたのは2012年の7月からですね。
いまのエディー・ジャパン体制になって2回目の合宿の時に声を掛けられて。

「日本代表がこれから世界で戦うには、低い姿勢とその姿勢のままタックルに入るということが必要不可欠だ」ということで、まず日本の選手たちにそれをやれるようになってもらいたいと。

あとは、それにまつわる身体の使い方だとか、自分よりデカい奴らを相手にしたときの向かっていく気持ちの強さ、メンタルの強さを彼らに身に付けてもらいたいっていうところから始まったんですね」

Q.でも、それを身に付けるためにコーチとして、なぜ門外漢である高阪さんに白羽の矢が立ったんですか?

高阪
「共通の知人を通じて接点はあるにはあったんですけど。

そもそものところで言うと、ジョン・プライヤーさんというコーチングディレクターが「小さい日本人なのに、デカい外国人選手相手に闘い続けてきた男がどうもいるらしい」と。

Q.そういう未確認情報を得て(笑)

高阪
「それで、一度コンタクトを取りたいとなったみたいで。

たまたま格闘技業界とラグビー業界の両方で仕事をされてる方がいたんで、そこを接点に、お話をいただいたんですけどね」

Q.最初にスポットコーチのオファーが来た時、どう思いました?

高阪
「これはエディーさんにも言ったんですけど、ラグビーを何人でやるのかも知らない自分が、日本代表選手に教えるというのはいかがなものかと(笑)

Q.まったくのド素人が国を代表する選手たちに教えていいのかと(笑)

高阪
「さすがに何人でやるのかは、急いで調べましたけどね(笑)

でも、そもそもの入りがそこだから「それでもいいんですか?」って正直に伝えたんですよ。そしたら「それはかまわない。とにかく選手たちにTKが持っているものを伝えてもらえればありがたい」というようなことを言われて、「まずは一度合宿に来てください」っていうことで、2012年の菅平合宿に行ったのが最初でした」

Q.合宿に行ってみてどうでした?

高阪
「いろいろ驚きましたね」

Q.第一の驚きは?

高阪
「メシが美味い」

Q.そこですか!(笑)

高阪
「日本代表なんで、合宿で食事管理も徹底してるんです。

で、ここからはこっちの勝手な憶測ですけど、練習はものすごく厳しいので、合宿中、食事は唯一の楽しみじゃないですか?

だけど、練習が厳しすぎるとなかなか食い物がノドを通らないんですよ。

それで、正しく栄養が摂れないことで起こる故障だとか、集中力の低下もあるので、そういうことも計算されての美味いメシなんだと思うんです。自分からしたら、どうしてくれようみたいな(笑)」

Q.食欲が止まらないじゃないかと。

高阪
「ステーキなんかはバンバン出るし、なおかつ栄養バランスが整えられていて、和洋揃っている。

どういうタイプの選手でも栄養が摂取できるということなんでしょうけど。

だから、自分は選手じゃないのになぜか合宿に行くたびに身体がデカくなって帰ってくるという現象が起きてしまったのは、あの食事の美味さですよね」

Q.なんて素晴らしい環境なんだと。

高阪
「日本代表だから当然ですけどね」

Q.食い物はともかく、初めて見るラグビー日本代表クラスの練習はいかがでしたか?

「キツそうだなと思ったんですけど、自分も格闘技のトレーニングを長年積んできて、いまも毎日欠かさず練習しているので、なぜか「負けてられない」って、燃えてきたんですよね(笑)

そして総合格闘技もラグビーも“暴れていい競技”じゃないですか?

だから当然スタミナもそうだし、動き続けるために筋力も必要だし、共通点もたくさんあったので。最初に自分がイメージしていたのは、練習の指導という形で、たとえば与えられた時間でメニューを組んでやろうということを考えていたんですけど、「参加したい」という風に気持ちがシフトしていきましたね(笑)

なんか組み合いたくなったというか」

Q.コイツらと取っ組み合いたい(笑)

高阪
「はい。取っ組み合いやりてーなって、見ていて思いましたね」

Q.高阪さんは総合でも、一緒に取っ組み合いながら指導してますけど、同じように飛び込んで行きたくなったと。

高阪
「そうですね」

Q.その練習を見て、自分が持っているどんなものを教えていこうとしたんですか?

高阪
「まずは、最初に希望として出されていたタックルの部分ですけど、もともと低いタックルが必要だっていう認識は、みんな日本代表クラスだから持ってたんですよ。ただ、なぜ低く入らなきゃいけないかっていうところの深い認識が必要だと思ったんですね。

で、自分は低い姿勢を保つためのトレーニング方法とかをみんなにやってもらって、そのうえでタックルのコツなんかを話して、なおかつ「なぜ、こういうことをしなきゃいけないのか?」ということまで伝えましたね。

たとえばタックルだったら、単純に大きな相手のお腹を狙っても弾かれちゃうから、膝を狙うタックルじゃないとテイクダウンまでは、なかなか難しいという話をしたりとか、そういうことをレクチャーを交えていろいろやりました」

Q.ワニ歩きみたいなトレーニングも取り入れたんですよね。

高阪
「そうですね。総合格闘技だとワニ歩きやエビは基本動作なんですけど。

ラグビー選手たちは初めてだったこともあるんで、なかなか身体が機能しなかったりするんですよ。

そういったトレーニングをやってもらったうえで、「低い姿勢でのタックルは、なぜ顔を上げてタックルしなきゃいけないのか」とか「こうしないと、うまく力が相手に伝わらないよ」というところを指導しましたね」

「格闘技のメンタル、闘う気持ちというのは、あらゆる競技に必要なものなんだということを再認識しました」

Q.でも、選手たちは日本代表だから、みんなラグビーの世界ではトップの選手なわけじゃないですか。もちろんプライドもあるだろうし。そこにラグビー経験のない人が「コーチです」って来て、ちゃんとみんな「はい、わかりました」って感じになるんですか?

高阪
「そのへんはみんな素直でしたね。感心するくらい真剣に取り組んでくれて。

自分がラグビー経験ないっていうのは全員知ってるはずなんで、「おまえに何がわかるんだ」となって当たり前だと思うんですけど、エディー・ジャパンになってからそんなに時間も経ってない時だったんで、エディーさんが掲げる目標設定を達成するためには、これからやろうとしている内容をひとつひとつ理解していかなきゃいけないっていう思いが、選手たちの間でも強かったんじゃないですかね。

そのなかで、自分が指導することも、勝つためには必要なことだという認識をみんなが持っていたんじゃないかと思うんですよ。だから、自分から吸収したいという、受け入れる姿勢は凄く感じましたね」

Q.日本代表とはいえ、そういう格闘技流のトレーニングは初めてですから、基礎的なことを一からやっていった感じなんですか?

高阪
「そうですよ。

それこそ「ばかにしてんのか」っていうくらい基本的なところからやりましたね。

ひとつの動作って、そのための動きの原理原則があって、それは回を重ねることで理解を深めるしかないんですよ。

基礎的なことをやり続けることによって「だからワニ歩きが必要なんだ」とか。「だから股関節を意識することが必要なんだ」っていう理解を深めていく。

その回数を重ねないとダメだということは、とくにシニアプレイヤーの人たちにはわかってもらえた感じでしたけどね」

Q.あとはデカい奴と闘う気持ちというのも指導したんですよね。

高阪
「そこは、言ってみれば自分の指導の7割、8割を占める部分じゃないかと思いますね」

Q.そこが日本代表に必要な部分であり、自分がもっと教えられる部分というか。

高阪
「そうですね。合宿に参加する前、それまでの日本代表の試合映像を参考として観させてもらったりとか、日本のトップリーグの試合も実際に何試合か観て、自分なりに研究したんですけど、たしかに「ここでなんで膝にいかないのかな?ここでタックルにいけば倒せるのに」っていう場面がけっこうあったんですよ。

あと、ひとりで倒せるところを2人とか3人でいってたりしたので「これはひとりで済む仕事なのに、なんで2人でいってるんだろう?」とか、観てて思う部分はあったんで、そういうところも自分なりの言葉で話したんですね。

つまり、ワン・ワンの闘いになったとき、自分しかいない状況のなかで、相手を倒さなきゃいけない、逆に倒さないとやられる局面で大事なのは、やっぱりメンタルの強さになってくるんですよ。

ただ、そのメンタルの強さって、試合のときに突然生まれるものじゃなくて、そこに至る過程で、どれだけキツい練習をしてきただとか、どれだけ準備をしてきたかっていうことが自信になって、それが前に踏み込む勇気になるんだと思うんです。

自分の経験上そうだったんで」

Q.動物的な本能としたら、自分より大きなものが向かってきたら避けようとしますもんね。

高阪
「そう、逃げるはずなんです。でも「恐竜みたいなデカイ奴らより自分のほうが上だ」っていう、確固たる自信があれば前に出られる。そういったような話だとか、「自分もそうやって闘ってきた」という経験の話も合宿ではさせてもらって。

それで自分が課したトレーニングも受け入れられたというか、エディーさんのほうから「引き続き、次の合宿にも来てくれないか」という話をいただいて。また次も、その次もとなって「次のワールドカップまで」ということになっていったんです」

Q.じゃあ、この3年間でかなりの回数、指導に行ってるんですね。

高阪
「数え切れないですけど、今年だけでも10数回は宮崎に行ってますね。今年は直前合宿として宮崎までキャンプ張ってたんで。

だからいま、日本代表はああいうふうに結果を残していますけど、そこに至る過程はもの凄く複雑な道のりだったんですよ。

最初は低いタックルの重要性を説いて、そこに至るまでのメンタル、気持ちの強さ、それにまつわる身体の使い方を覚えてもらって。

そして、それを続けることで選手も成長していくので、こちらも練習内容の質を、いろいろプラスアルファで高めていかなきゃいけない。そうなると、自分がもっとラグビーを理解しないと無理だと思ったんで。もうかなりの回数、秩父宮ラグビー場に行きましたよ(笑)」

Q.選手の成長とともに、高阪さんもラグビーコーチとしての成長が必要になったと。

高阪
「だから、高校生から大学生、トップリーグや代表の試合を観に行くことはもちろんですが、「スーパーラグビー」っていう、野球でいうメジャーリーグの試合映像も観て「こういう想定の中で、こういう動きをしなきゃいけない」とか、自分の中で得たことを合宿の時に還元して。

それをエディーさんやジョン・プライヤーさんとミーティングを重ねながら、3年ちょっとの月日が流れた感じですね。

だから、自分がこの3年間でやってきたことを一言で説明するのは難しいんですが、代表合宿のシーズン中は、自分の知識をいかに効率的にラグビーに活かすかとか、あとは選手たちにどう意識づけするかとか、そんなことばっかり考えてました」

Q.じゃあ、この3年間は格闘技とラグビーの両面で、ガッチリ指導してきたんですね。

高阪
「そうですね。でも、やればやるほど格闘技のメンタル、闘う気持ちというのは、あらゆる競技に必要なものなんだ、ということを再認識しました。ラグビーみたいなコンタクトスポーツならなおさらですけど」

Q.格闘技というのは、自分の身体、さらには命を危険に晒すスポーツですもんね。

高阪
「ホント、危険なことをやってるんですよ(笑)ただ、やってる本人たちの意識の中で、やっていて「怖い」と思うようなら、逆に言うとやんないほうがいいんです。

無理して危ないことを続ける必要はない。

でも、それでもやっている選手たちは、そこに何かがあるから闘いを求めてやまないわけですよね。とくに総合はそうじゃないかって自分は思うんです。総合はありとあらゆるところで攻撃してもいいわけじゃないですか?

それは裏返すと、ありとあらゆるところに注意を払わないと、途端に身の危険に晒される。危機察知能力がないと成立しない競技なんで。その意識っていうのはラグビーもやっぱり必要なんですね」

Q.ラグビーのあのフィールド上で、複数の人間相手に生身の身体を晒してるわけですもんね。

高阪
「だから選手たちとの雑談の中で、自分の経験したことを話したりするんですけど「なんでそこまでして闘ってたんですか?」って聞かれたことがあるんですよ。あれはヒョードルとの2回目の試合だったかな?

目ん玉殴られて、目が見えなくなって「これはマズイな」って思ったところで、レフェリーが試合を一旦中断して「おまえ、目見えてるか?」って言いに来て。そのあとドクターを呼んで「正直に言ってください、目は見えてますか?」と聞いてきたんで「見えてます」と」

Q.平然と(笑)

高阪
「「安心してください。見えてます」って言ったんです(笑)」

Q.とにかく明るい安村ばかりに(笑)

高阪
「「じゃあこれ何本?」って指を出されたときに、何にも見えなかったんですが、おそらく1本だろうなっと思って「1本」って答えたら「見えてるな」となって、続けられたんですが。レフェリーに「ファイト!」と言われて試合再開したら、ヒョードルがどこにいるかもわからなかったという(笑)」

Q.全然見えてないじゃないですか!(笑)

高阪
「あれは、ホントに見えなかった。それでボコボコにされちゃった。ハハハハハハ!」

Q.笑い事じゃないですよ(笑)

高阪
「で、試合が終わり、尿検査するために尿を差し出したら「血じゃなくて尿です」と言われ、自分ではオシッコを差し出したつもりだったんですが、血尿が出ちゃったという(笑)」

Q.ラグビー日本代表選手たちに、そんな話をしてたんですか(笑)

高阪
「だから「なんでそこまでするんですか?」って聞かれることは多々ありましたね。でも、自分は闘いたいんだから、勝ちたいんだからやるんだと。それが嫌なら辞めればいいだけのことなんで」

つづきはこちら↓
【高阪剛】ラグビー日本代表メンバーに“殺し”を教えた3年を経て・・・②
http://ameblo.jp/ryobalo/entry-12112651839.html


【サッカー】ラグビー日本代表の五郎丸歩が日本サッカーに提言「フィジカルから逃げると戦えない」
http://www.soccer-king.jp/news/japan/japan_other/20151106/367295.html

薬物、暴力、露出狂…五郎丸を待つ「豪ラグビー界」仰天実態
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sportsx/168698

「ミッションは完了」W杯で日本に歴史的3勝 エディー・ジョーンズ前HCが離日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151104-00000510-san-spo


★ラグビー日本代表に学ぶ 勝つための組織論★

歴史的勝利に日本中が湧いたラグビー日本代表。チームを率いたヘッド―コーチ、エディ­ー・ジョーンズ氏は、世界一の練習量と言われる、過酷を極めたトレーニングを選手に課­した。目指したのは日本人の短所を見極め“JAPAN WAY”という日本人の特性を活かした世界で戦えるチーム作りだ。同氏を支えたのがチ­ーム唯一の日本人コーチ、沢木敬介氏。選手に対しての指導はもちろん、多人種部隊とも­言える日本代表チームを結束させる要として活躍した。勝つためにラグビー日本代表は何­をしたのか。組織論を聞く。

ゲスト:沢木敬介(ラグビー日本代表 コーチングコーディネーター)



★W杯で歴史的3勝 ラグビー日本代表が帰国会見★


https://www.youtube.com/watch?v=wn2XapCc638

★ラグビー日本代表勝利の瞬間。現地の盛り上がりが凄い★


https://www.youtube.com/watch?v=lhectASkK_g