憧れのに日本にやってきたはずのイタリア人、ジャンルーカのお話 | 中谷良子の落書き帳

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以下の情報を貼り付けます。

「ビアンキ氏」一家と、息子のジャンルーカの婚約者・ラウラは、ビアンキ氏の愛車、プントに乗り込み、ミラノ・マルペンサ空港へと向かう高速道路・A8号線を走っています。

ジャンルーカとラウラが乗ることになっている、フランクフルト経由東京行きの便は、20時15分出発予定なので、少し早すぎる時間なのですが、ビアンキ氏は、どこかへ出かける時にはいつも、こんな風に早すぎる出発をします。

それが、北イタリアに住む古い世代の人々の習慣だからです。
今回、ジャンルーカは婚約者のラウラと一緒に、日本への15日間の旅行に出掛けます。

日本を訪れることは、日本のアニメとマンガを「マニア」と言ってもいいほど大好きなジャンルーカが、まだ子供の頃からの夢でした。

日本アニメ好きのイタリア青年などというと、少し特別なタイプに思う人もいるかもしれません。

でも、実はこれは、非常に多いケースです。

何しろイタリアには、日本のアニメだけを24時間、365日流し続けているテレビ局があるくらいですし、日本アニメのキャラクターの扮装をして出来ばえを競いあう「世界コスプレチャンピオンシップ」というイベントで、イタリア人が優勝した回数は「本家」の日本人を上回っています。

意外かもしれませんが、イタリアは、そうした日本のポップカルチャーを愛するという点では、世界でもトップクラスの国なのです。

ジャンルーカも、まだ中学生のころから、ミラノのポルタ・ヴェネツィアという界隈にある「YAMATO」という日本雑貨の専門店に通い詰めて、部屋の中を日本のマンガと、アニメのビデオと、ポスターでいっぱいにしていたような少年でした。

ただ、季節はまだ、北イタリアにようやく春がきざし始めた、3月下旬です。

こんな時期に海外旅行へ出かけるのは、今まで、ジャンルーカと同じ「フリーター」の立場だった婚約者のラウラが、ようやくコモの町にある絹織物会社に、正社員として採用されたからです。

彼女の仕事が始まるのは1ヶ月後なので、それまでの期間を利用して旅行にでも行こう、ということになったわけです。

ジャンルーカはアルバイトの立場なので、特別に忙しい時期でない限り、比較的自由に休みが取れます。

ただその間の給料は当然、もらえませんが・・・

19時、出国調査の窓口に向かう間際まで、何かと世話を焼こうとする両親にやっと別れを告げたジャンルーカは、婚約者のラウラと一緒に、搭乗ゲートに近い待合場所で、20時15分、東京行きのフライトを待っています。

出発までは、まだ1時間以上あります。
ラウラはファッション雑誌を眺めています。

ジャンルーカは彼の「iPad」に見入っています。
ジャンルーカが言います。

「ねえ知ってる?僕らとほとんど同時に、モンティ(イタリア首相)が日本に行こうとしてるらしいよ。このネットニュースに載ってる」

「ええ、聞いてるわ。でも私たちみたいなエコノミークラスで行くことは、あり得ないわね」

「そりゃ絶対そうだよ!あのお方とは違って、僕らはいつだってエコノミークラスで生きてきた人間だからね。ちょっと見て。他にも、日本に関係がある記事を見つけたよ」

「どれ見せて。『今日の出来事』ですって?あなた、いつからこのネットニュース見てるの?あなたの嫌いな反『レーガ・ノルド』のニュースサイトじゃない」

「ただ、ネットだと無料だから見てるだけさ。ちょっと、ここ読んでみなよ」

“1990年に制定された10か所の都市に、10人の「重要人物」を「文化会館」所長として赴任させることができる。その選択においては、縁故主義や、個人的な友情関係、政党の圧力などが横行している”(イタリアの新聞「il fatto quotidiano」電子版に、2011年12月10日に掲載)

“クロアチアのザグレブや、ブラジル、アルゼンチン、さらに、東京イタリア文化会館などにおいても、縁故主義によってポストが提供されていたことが分かった”(同、2011年12月23日に掲載)

ジャンルーカは言います。

「なんてひどいスキャンダルだ。でもうちの母さんまでコネを使って僕を外務省に就職させようとしてたんだよ!イタリアで今、一番深刻な問題は、汚職と縁故主義だっていうのにさ。みんないつもそういう事を批判しているくせに、いざ自分が関係するとなると、ほとんどみんながそれを受け入れちまうんだよな。イタリアの政治と社会のシステムは、壊れちまってるよ」

それを聞いてラウラが言います。

「こういうことって、他の国にもあると思う?日本にもあるのかしら」

「それはあり得ないよ。日本がイタリアみたいにひどいなんて、信じられるわけないだろ。知ってるかい?毎年500億~600億ユーロものお金が汚職している政治家のポケットに入っているんだって。秘密の、不道徳な“税金”が、僕ら市民のもとから奪われていってるんだよ。600億だぜ!そのお金があったら、今問題になっている国の財政だって、立て直せちゃうじゃないか。そんなことを考えると、僕はイタリアから逃げ出したくなってくるよ!」

そんなことを話しながら、ジャンルーカの心はもう、これから訪れる日本へと飛んでいくのでした。

彼の日本。彼にとっての神話。
子供の頃からの夢の国である、日本へと。

彼にとってに日本は、楽しいマンガとアニメに彩られた国でした。
日本・・・

しかし、そんなことを考えながら、彼が夕方の最後の明るさが消え残る空を眺めているとき、東の方角の限りなく黒に近い紺色の空、その下に「日本」があるはずの空には、薄汚れた巨大な黒い雲が浮かんでいるのでした。

つづく


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