キーと鳴るドアを開けた先は学校の屋上。
俺にとってここは
きっとずっと忘れられない場所。
いや、違う。
"忘れちゃいけない場所"なんだ。
「なあ、俺のカバン知らね?」
「さっき二宮がゴミ箱に捨ててるの見たよ」
「はあ?まじかよ…」
急いで向かった学校中のゴミを集めておくコンテナには、確かに俺のカバンが捨てられていた。
確かに。
でもそれは別に俺のカバンじゃなくても良かったことなんだ。
これは…
二宮をターゲットにした"虐め"の始まりだったんだから。
この件を俺はさほど気に止めなかった。
だって二宮は素直にすぐに俺に謝ったから。
謝ってくれたんだ、確かに。
…なのに。
二宮に対する悪い噂はどんどん増えた。
あることないこと言われているのに平気そうにずっと二宮は振る舞っていた。
そんな二宮を俺は放って置けなかった。
俺が関わった事件が発端なのに。
何故か放って置けなかった。
そんな俺の行動を周りは非難した。
"お前だって被害者だろ"
"なんでアイツと一緒にいるんだよ"
散々いろんな言葉を言われたせいだろうか。
何を言われても、もう何も感じなくなった。
その頃。
カバンはあるのに、朝から二宮の姿を見ていないことを不思議に思った俺は学校中を探し回った。
そして最後に辿り着いたそこに君は居た。
屋上に。こっちに背を向けて淵に立っていた。
「二宮、こんな所で1日なにやってんだよ。危ないぞ。」
「翔ちゃん、ごめんね」
君はこっちを向くことなく話した。
「何が?」
「俺のせいで皆に酷いこと言われて…」
「気にするな」
「でも、翔ちゃんに迷惑かけるのだけは嫌なんだ。」
「だから気にするなって」
「気にするよお。だって…」
ずっと俺に背を向けて話していた君がこっちを向いて言った。
次の瞬間。
俺の前から君は消えた。
「二宮…!!」
後から聞いた話。
二宮のことを嫌っていた生徒が二宮を虐めのターゲットにするために、俺のカバンを捨てて二宮の仕業にしたそうだ。
そこから悪い噂を流したのも奴だった。
そんな餓鬼みたいな理由のせいで二宮は…
死んだのか…?
「なあ、何であの時。謝ったんだよ。やったのは俺じゃないって何で言わなかったんだよ。」
何が迷惑かけなくないだよ。
迷惑かけられた方がよっぽどマシだった。
"だってね… 翔ちゃんのことが好きだから"
お前の顔は泣きながら笑ってた。
最後のお前の顔。声。言葉。姿。
忘れない。
守ってやれなくてごめん。
俺もいつの間にか好きだったんだよ、和。
- END -