テニス

DEポン|フットワーク研究シリーズ 第3回

The Lateral Hop ― 横への移動で、ポジションを守る。

ボールを追いかけるだけでは、コートは守れない。

テニスでは、相手に左右へ振られる場面が必ずあります。ワイドに打たれたボール、短いアングルショット、そして少しだけポジションを外されたボール。こうした状況で、皆さんはどのように対応していますか?とにかくボールへ走る。届いたら、なんとか返球する。しかし、返した瞬間にはコートの外へ大きく追い出され、次のボールに対応できない。そんな経験はないでしょうか。今回注目するのは、横方向への移動を伴うフットワーク「The Lateral Hop」です。


1.横へ動きながら、ポジションを守る


オーストラリア出身のテニス指導者・研究者、デイブ・ベイリー(David Bailey)は、プロ選手のフットワークを分析し、「12 Golden Moves」という動作体系を紹介しています。その第3の動作が「The Lateral Hop」です。


2017年8月のTennisPlayer.netの記事では、強いスピンを伴うワイドボールや、短いアングルショットに対応しながらバランスを保つための動作として紹介されています。


ここで重要なのは、単純に横へジャンプすることではありません。ベイリーの説明では、選手はオープンスタンスに近い姿勢でボール側の外脚に荷重し、横方向へのホップを伴いながら打球します。そして、基本的には準備時に荷重した側の足で着地します。


この動きは、ボールとの距離を調整するためにも、移動によって生じる勢いを扱うためにも使われます。


つまり、横へ移動しながら打つとき、身体をどこまで運び、どのようにバランスを保つか。それがLateral Hopを理解するうえでのポイントです。


2.「ボールに追いつく」と「ポジションを守る」は違う


例えば、ベースラインでクロスコートのラリーをしている場面を想像してください。相手が角度のあるボールを打ってきました。あなたは横へ動き、なんとかボールに追いついて返球します。しかし、打球後に大きく外へ流され、コート中央へ戻るのが遅れてしまいました。


ボールに追いつくことはできました。でも、その返球は次のプレーにつながっているでしょうか?


もちろん、相手のショットが厳しければ、コートの外へ追い出されることもあります。すべてのボールで理想的なポジションを維持できるわけではありません。


それでも、移動中の身体の使い方によって、打球後の状態が変わる可能性があります。


Lateral Hopが示しているのは、ボールへ届くための移動と、移動の勢いをコントロールすることを同時に考える視点です。


「ボールに追いつけたか」だけでなく、「打った後、どのような状態にいるか」。


この問いが、フットワークを見る目を変えてくれます。


3.なぜ、大きく身体を回さないのか?


Lateral Hopの特徴として、ベイリーは、最初に紹介したスピン系の動作と比べて、体幹の回旋が少なく、肩のラインがネットと平行に近い状態で終わる傾向を説明しています。また、比較的低い打点で使われることが多く、脚の曲がりを保ったまま動く場合があります。


ここで誤解してほしくないのは、「身体を回してはいけない」という意味ではないことです。


テニスでは、ショットの方向、ボールの高さ、移動速度、相手から受ける時間的な制約によって、必要な身体の使い方が変わります。


大きく身体を回転させることが有効な場面もあれば、身体の向きを大きく変えずに打つことが適切な場面もあります。


Lateral Hopは、どのショットでも同じように身体を回すのではなく、横方向の移動を処理しながら打つための選択肢のひとつです。


4.横への移動は、足だけで行うものではない


ここで、コーチとして考えたいことがあります。


横へ動く選手を見ると、どうしても足の速さやステップの大きさに注目しがちです。しかし、身体の動きは足だけで決まるわけではありません。


どのタイミングで移動を始めたのか。ボールとの距離をどのように調整したのか。体幹はどの方向を向いているのか。打球時に生じた勢いを、身体全体でどのように扱っているのか。


こうした要素を合わせて観察することが大切です。


例えば、同じボールに遅れている選手でも、原因はさまざまです。相手のショットを読むのが遅いのか、最初の一歩が適切でないのか、移動中に身体のバランスを崩しているのか。


原因が違えば、改善するための練習も変わります。


ただ「もっと速く動こう」と伝えるだけでは、問題の本質に届かないことがあるのです。


5.コーチが観察したい4つのポイント


Lateral Hopを指導現場で考えるとき、次の4つを観察してみてください。


① 移動の準備:相手の打球に対して、適切なタイミングで反応できているか。


② 外脚への荷重:横へ移動しながら打つ際、ボール側の足をどのように使っているか。


③ 打球時の身体の状態:身体の向き、脚の曲がり、打点との距離は適切か。


④ 打球後のポジション:移動の勢いを扱い、次のボールへ対応できる状態につながっているか。


これはベイリーの原文をそのまま翻訳した評価基準ではなく、Lateral Hopの特徴をレッスンで観察するために整理したものです。


6.テニスDEポンが考える「ポジションを守る」ということ


テニスでは、ボールを返す技術と同じくらい、次のボールに対応できる状態をつくることが重要です。


ただし、ポジションを守るというのは、いつもコート中央に戻ることだけを意味するわけではありません。相手の打球、返球の深さや角度、自分の移動速度によって、適切なポジションは変わります。


大切なのは、状況に応じて移動を選択し、打球後の状態まで考えることです。


K3 Attributionの視点で考えるなら、目に見えるステップだけを評価するのではなく、その動作が生まれた背景にも目を向けたいところです。


なぜ、その選手は大きく外へ流れたのか。なぜ、次の一歩が遅れたのか。そもそも、相手のショットに対する準備は適切だったのか。


動作の結果だけでなく、そこに至る過程を観察することで、選手に必要な支援が見えてきます。


フットワークとは、ボールを追いかけるためだけの技術ではない。移動しながら打ち、次の一球に対応できる可能性を残す技術でもあるのです。


次回予告


第4回「The Back Foot Hop ― 後ろへ押されても、攻撃の可能性を失わない」


次回は、ベイリーの「12 Golden Moves」の第4の動作、Back Foot Hopを取り上げます。深いボールに押し込まれたとき、選手はどのように身体を使い、打球と次の動作につなげるのでしょうか。


※参考資料:David Bailey, “Third Golden Move: The Lateral Hop,” TennisPlayer.net, August 2017.

原文:https://www.tennisplayer.net/article/third-golden-move-the-lateral-hop/


本記事は原文の逐語訳ではなく、公開されている解説内容を参考に、テニスDEポンの指導的視点を加えて構成した独自の解説記事です。