テニス

DEポン|フットワーク研究シリーズ 第2回


The Front Foot Hop ― 踏み込む足は、ただの着地点ではない。


前へ進む力を、攻撃的なショットにつなげるフットワーク


テニスでチャンスボールが来たとき、皆さんはどのように打っていますか?ボールに向かって踏み込み、しっかり打つ。言葉にすれば簡単ですが、前へ移動しながら強いショットを打ち、その後の動きまでつなげることは、決して簡単ではありません。前へ突っ込みすぎてバランスを崩す。打球後に身体が流れて、次のボールへの準備が遅れる。あるいは、足を踏み込むことばかり意識してしまい、身体全体の動きがぎこちなくなる。こうした場面で考えたいのが、今回のテーマ「The Front Foot Hop」です。


1.デイブ・ベイリーが注目した「Front Foot Hop」


オーストラリア出身のテニス指導者・研究者、デイブ・ベイリー(David Bailey)は、トップ選手のフットワークを分析し、足の動きを単純なステップの種類だけでなく、打球前後の一連の動作として捉える「Contact Move」という考え方を提唱しています。


2007年7月にTennisPlayer.netで公開された記事「Contact Moves: The Front Foot Hop」では、Front Foot Hopを、前へ進んで攻撃するときに用いられる動作として紹介しています。


記事の公開部分では、選手が前へ踏み込み、打球し、後ろの脚を蹴り上げるように動かした後、前足で着地する動作が説明されています。


ここで注目したいのは、単に前足を踏み込むことではありません。前方への移動と打球、そして打球後の身体の動きが、ひとつの流れになっていることです。


2.「前足を踏み込めば強く打てる」は本当か?


ジュニアのレッスンでも、「もっと前に入って打とう」「しっかり踏み込もう」というアドバイスを耳にします。もちろん、ボールに対して前へ入ることが有効な場面はあります。しかし、前足を踏み込むこと自体が目的になってしまうと、動きの本質を見失うことがあります。


例えば、短くなったボールを攻撃するとき。ボールに近づくために前へ移動し、適切な打球位置を確保する。そして、身体の動きをショットにつなげる。このとき、足の位置だけでなく、移動の勢い、打球のタイミング、身体のバランスを合わせて考える必要があります。


前足を大きく踏み込めば、必ず強いショットになるわけではありません。ボールとの距離が合っていなければ、打点が窮屈になることもあります。前方への勢いが大きすぎれば、打球後に身体をコントロールしにくくなる場合もあります。


大切なのは、踏み込みの大きさを競うことではなく、そのボールに必要な移動と打球をつなげることです。


3.後ろの脚の動きにも注目してみよう


Front Foot Hopを理解するうえで、前足だけを見ていてはいけません。ベイリーの記事では、打球後に後ろの脚を蹴り上げるような動きが紹介されています。


テニスでは、前足がどこに着地したかに注目しがちですが、身体全体の動きを見ることが大切です。前へ進む動きの中で、後ろの脚がどのように動くのか。上半身と下半身の動きがどうつながっているのか。そして、打球後に身体がどの方向へ動いているのか。


これらを観察することで、足の位置だけでは分からない動作の特徴が見えてきます。


ただし、後ろの脚を大きく蹴り上げること自体を、すべての選手が目指すべき目標にする必要はありません。打球の状況、移動速度、身体能力、ショットの目的によって動きは変わります。プロ選手の動きを見た目だけでまねるのではなく、その動きがどのような状況で使われているのかを考えることが重要です。


4.攻撃した後までが、ひとつの動作


ここで、もう一度考えてみましょう。テニスはボールを打った瞬間に終わるスポーツではありません。攻撃的なショットを打った後にも、相手の返球が待っています。


前へ移動して強く打てたとしても、その後に身体のバランスを大きく崩してしまえば、次のボールへの対応が難しくなることがあります。逆に、打球後の動きまで考えて移動できれば、攻撃を次のプレーにつなげやすくなります。


だからといって、打球後に必ず静止する必要はありません。大切なのは、身体を無理に止めることではなく、打球によって生じた動きを状況に応じて扱い、次の動作へ移れることです。


これは第1回で取り上げた「Contact Move」の考え方にもつながります。ボールへの移動、打球時の動き、打球後のバランス、そしてリカバリー。これらを切り離さずに観察することが、フットワークを理解するうえで重要なのです。


5.コーチは、何を観察すればよいのか?


選手が前へ入って攻撃する場面では、次の4つを観察してみてください。


① ボールとの距離は適切か? 前へ進みすぎたり、ボールから遠すぎたりしていないか。


② 踏み込みと打球のタイミングは合っているか? 足の動きとラケットのスイングが、無理なくつながっているか。


③ 打球後の身体はどう動いているか? 後ろの脚の動きも含め、身体全体のバランスを観察する。


④ 次のプレーにつながっているか? 打球後の動きが、次のボールへの準備を妨げていないか。


これはベイリーの原文をそのまま翻訳した評価基準ではなく、Front Foot Hopの考え方を指導現場で活用するために整理した観察ポイントです。


6.テニスDEポンが考える「前へ入る」ということ


私が大切にしたいのは、「前へ入ろう」という指示を出すだけで終わらないことです。なぜ前へ入る必要があるのか。どのタイミングで移動すればよいのか。前へ進むことで何が変わり、打球後にはどのような選択肢が生まれるのか。


こうした問いを持つことで、選手は動きを単純にまねるだけでなく、状況に応じて考えられるようになります。


K3 Attributionの視点で考えるなら、目の前の動作だけを評価するのではなく、その動作が生まれた背景にも目を向けたいところです。相手のボールが短かったから前へ入ったのか。攻撃のチャンスを見つけたから移動したのか。それとも、準備が遅れて無理な踏み込みになったのか。


同じように前へ踏み込んでいても、その理由が違えば、必要な指導も変わります。


フットワークは、決められたステップを再現するためだけの技術ではありません。ボールの状況を読み、移動を選び、打球につなげ、次の一球に備えるための技術です。


前足を踏み込むことが目的ではない。前へ進む動きを、次のプレーにつなげることが目的なのです。


次回予告


第3回「The Lateral Hop ― 横への移動で、ポジションを守る」


次回は、ベイリーの「12 Golden Moves」の第3の動作、Lateral Hopを取り上げます。横へ走りながら打つとき、選手はどのように身体の勢いを扱い、コート上のポジションを維持するのでしょうか。


※参考資料:David Bailey, “Contact Moves: The Front Foot Hop,” TennisPlayer.net, July 2007.

原文:https://www.tennisplayer.net/article/contact-moves-the-front-foot-hop/


本記事は原文の逐語訳ではなく、公開されている解説内容を参考に、テニスDEポンの指導的視点を加えて構成した独自の解説記事です。原文の全文は会員向けのため、非公開部分については確認できていません。