テニスDEポン エピソード43 フットワークの研究①


テニスDEポン|フットワーク研究シリーズ 第1回


The Contact Move ― 打つ前から、テニスは始まっている。


フットワークを「足の動き」だけで考えていませんか?


テニスのフットワークというと、どんな動きを思い浮かべるでしょうか。スプリットステップ、サイドステップ、クロスステップ、そしてボールを打った後のリカバリー。もちろん、どれも大切です。しかし、フットワークを個々のステップの名前だけで理解しようとすると、テニスの動きの本質を見落としてしまうかもしれません。


今回から、プロ選手のフットワークを分析してきたオーストラリア出身のテニス指導者・研究者、デイブ・ベイリー(David Bailey)の考え方を参考に、テニスの移動を深掘りしていきます。


1.「Contact Move」という考え方


ベイリーが提唱する「Contact Move」は、ボールを打つ瞬間だけの足の形を意味するものではありません。ボールへの移動、打球時のスタンス、打球中の足や身体の動き、打球後のバランス調整、そして次のポジションへのリカバリーまでを、ひとつのまとまりとして捉える考え方です。


ベイリーは、トップ選手の映像を細かく分析することで、一般的な「オープンスタンス」「スクエアスタンス」「クローズドスタンス」という分類だけでは説明しきれない、複雑で動的な足の使い方に注目しました。


ここで大切なのは、どのスタンスが正しいかを決めることではありません。選手がどのようにボールへ近づき、どのような状態で打ち、打った後にどのようにバランスを保ち、次の動作へ移るのか。その一連の流れを観察することです。


2.きれいなフォームなのに、なぜ次のボールに遅れるのか?


例えば、ジュニアのレッスンで、フォームはきれいなのに次のボールへの反応が遅い選手を見たことはありませんか?


打球そのものは安定している。ラケットの振り方にも大きな問題はない。それでも、相手に返球されると一歩目が遅れる。あるいは、打った後に身体が流れてしまい、次の準備が間に合わない。


このようなとき、スイングだけを修正しても問題が解決しないことがあります。


観察したいのは、打球前の移動から打球後の回復までです。ボールに近づくためのステップは適切だったのか。打球時に身体のバランスを保てているのか。打った後の足の動きは、次のプレーにつながっているのか。


フットワークを一連の動きとして見ることで、これまで見逃していた課題に気づける可能性があります。


3.フットワークは「打つため」だけにあるのではない


テニスでは、ボールを打つことに意識が集中しがちです。しかし、試合は一球を打って終わりではありません。自分が打ったボールに対して相手がどう反応し、その返球に自分がどう対応するか。その繰り返しでポイントが進んでいきます。


だからこそ、打球時にうまく力を伝えられることと同じように、打球後に次の動作へ移れることも重要です。


ただし、すべてのショットで同じように止まり、同じ姿勢をつくればよいわけではありません。前へ入って攻撃するとき、深いボールに対応するとき、コートの外へ追い出されたときでは、必要な移動もバランスの取り方も変わります。


大切なのは、特定のフォームを機械的に再現することではなく、その状況で必要な動きを選択できることです。


4.コーチは、どこを観察すればよいのか?


レッスンで選手を観察するとき、次の4つの場面を意識してみてください。


① ボールへ向かう動き:最初の一歩は適切か。ボールとの距離を調整できているか。


② 打球時の動き:足の位置だけでなく、身体のバランスや動きの方向はどうなっているか。


③ 打球直後の動き:打った勢いによって身体が流れていないか。次の動作へ移れる状態か。


④ 次のボールへの準備:相手の返球に対応できる位置と姿勢へ移れているか。


この4つは、ベイリーの理論をそのまま翻訳したチェックリストではなく、彼の「Contact Move」という考え方をレッスン現場で観察するために整理したものです。


5.テニスDEポンが考える、フットワークの本質


私が大切にしたいのは、選手の動きを単純に「できている」「できていない」と評価するのではなく、なぜその動きが起こったのかを考えることです。


相手のボールが速かったのか。予測が遅れたのか。打球位置までの移動に無理があったのか。それとも、打った後のバランスを崩したことが次の一歩に影響したのか。


同じように一歩遅れた選手でも、原因が違えば必要な練習も変わります。


これは、動作の見た目だけで判断せず、その動作が生まれた背景を考えるという、テニスDEポンのアトリビューションの視点にもつながります。


フットワークを学ぶことは、ステップの名前を覚えることだけではありません。自分の動きを観察し、状況に応じて選択し、次のプレーにつなげる力を育てることなのです。


次回予告


第2回「The Front Foot Hop ― 踏み込む足は、ただの着地点ではない」


次回は、ベイリーが紹介するフロントフット・ホップを取り上げます。前へ入って攻撃するとき、足の動きは打球とバランスにどのように関係するのでしょうか。


※参考資料:David Bailey, “The Contact Move,” TennisPlayer.net, April 2007.

原文:https://www.tennisplayer.net/article/the-contact-move/


本記事は原文の逐語訳ではなく、公開されている解説内容を参考に、テニスDEポンの指導的視点を加えて構成した独自の解説記事です。