テニスDEポン エピソード36

テニスは大好きか?ジュニアに問う!

突然ですが、ジュニアの皆さんに聞きたい。

あなたは、テニスが大好きですか?

「やりたいからやっている」のか。

「親に言われるからやっている」のか。

「仕方なく続けている」のか。

それとも、

「なんとなく、ここまで続けてきたから……」

なのか。

少し厳しい質問かもしれません。

でも、私は30年以上テニスコーチを仕事にしてきて、たくさんのジュニアと、そのご家族を見てきました。

だからこそ、今日はこの質問をしてみたいと思います。

「そのテニス、本当にあなたのものですか?」

ジュニアのテニスには、どうしても親の存在があります。

スクールの月謝。

ラケット。

シューズ。

ウェア。

大会参加費。

遠征費。

送り迎え。

場合によっては合宿や遠征にかかる費用。

その多くを負担しているのは、親です。

だから親が、

「せっかくお金を払っているんだから、頑張ってほしい」

「もっと練習してほしい」

「試合に勝ってほしい」

と思うのは、当然です。

我が子のために時間もお金も使っている。

少しでも成長してほしい。

できれば、夢を持って頑張ってほしい。

親としては、そう願います。

でも……

親が一生懸命になればなるほど、子どものテニスが「親のテニス」になってしまうことがあります。

私は、自分の子どもにテニスを教えていません

実は、私はテニスコーチです。

30年以上、テニスを仕事にしてきました。

たくさんのジュニアを指導してきました。

たくさんの親御さんとも接してきました。

そんな私ですが、

自分の息子と娘には、テニスコーチが職業であることを、今まで黙っていました。

テニスは一緒にやります。

一緒にボールを打ちます。

一緒に遊びます。

でも、基本的に「指導」はしません。

なぜか。

親がコーチになってしまうと、子どもにとっては、どんなに優しく言ったつもりでも、

「怒られている」

と感じてしまうことがあるからです。

例えば、試合に負けて、悔しそうにしている。

「今のポイントは、こうすればよかったんじゃない?」

「もっと足を動かしたほうがいいよ」

「ラケットをこう使えば……」

コーチなら普通に言えることでも、

親から言われると、子どもにとってはアドバイスではなく、お説教になってしまうことがある。

だから私は、言いません。

負けて悔しそうにしていても、すぐにアドバイスはしません。

「教えない」というのも、ひとつの指導

では、何もしないのか?

そんなことはありません。

一緒にテニスをして遊んでいる中で、

自分で気づくような工夫をします。

「今のボール、どうしたらもっと打ちやすかったかな?」

と聞くこともある。

私がわざと打ちやすいボールを出してみることもある。

子どもが自分で、

「あれ?今のほうが打ちやすい」

と気づく。

その瞬間を待つ。

教えるのではなく、

気づかせる。

私は、それを大切にしています。

なぜなら、自分で気づいたことは、自分の力になるからです。

親は「コーチ」にならなくていい

私は30年以上、いろいろなご家族を見てきました。

そして、強く感じることがあります。

親は、コーチにならなくてもいい。

むしろ、

親だからこそ、コーチではない立場にいてほしい。

コーチにはできないことがあります。

それは、

「何があっても味方でいること」。

試合に勝っても負けても、

良いプレーをしてもミスをしても、

ランキングが上がっても下がっても、

「あなたはあなたで大丈夫」

と言えるのは、親だからこそです。

試合の帰り道に必要なのは、分析ではないかもしれない

試合に負けた子どもが車に乗ってきた。

親としては、

「何が悪かった?」

「もっとファーストサーブ入れないと」

「バックが弱かったね」

「練習不足じゃない?」

と言いたくなる。

でも、その子はもう十分に分かっているかもしれません。

悔しい。

自分でもミスしたことは分かっている。

もっとできたはずだと思っている。

そんなときに必要なのは、

技術的な分析ではなく、

「今日は悔しかったね」

という一言なのかもしれません。

そして、

「お疲れさま」

「また頑張ろう」

それだけで十分なこともあります。

技術の話は、コーチに任せてもいい。

親には、親にしかできない仕事があります。

「応援する」という、ものすごく難しい仕事

実は、

応援することは簡単そうで、とても難しい。

なぜなら、

「こうなってほしい」

という親の期待があるからです。

もっと強くなってほしい。

もっと勝ってほしい。

もっと努力してほしい。

もっと上の大会に出てほしい。

その気持ちは悪いものではありません。

むしろ、我が子を思う愛情です。

でも、

愛情と期待が強くなりすぎると、子どもにはプレッシャーとして届いてしまうことがあります。

だから、一歩引いて見る。

子どもが自分で考える時間をつくる。

子どもが自分で決める余白を残す。

そして、

「頑張っているあなたを応援しているよ」

という場所に立つ。

それが親の大切な役割なのではないでしょうか。

テニスを「好き」でいられること

ジュニアの皆さん。

もう一度聞きます。

あなたは、テニスが大好きですか?

もし「大好き!」なら、その気持ちを大切にしてください。

「勝つこと」よりも前に、

「上手くなること」よりも前に、

まず、

テニスを好きでいること。

ボールを打つのが楽しい。

ラリーが続くと嬉しい。

試合に出るのが楽しい。

友達と練習するのが楽しい。

昨日できなかったことが、今日できた。

それだけでもいい。

テニスを続ける理由は、ひとつじゃありません。

親御さんへ

最後に、保護者の皆さんへ。

お子さんのテニスに、

どれくらいお金を使ったか。

どれくらい送迎したか。

どれくらい練習させたか。

どれくらい試合を見に行ったか。

もちろん、それも大切です。

でも、一番大切なのは、

その子が、今もテニスを好きなのか。

ではないでしょうか。

「もっと練習しなさい」

と言う前に、

「テニス、楽しい?」

と聞いてみる。

「なんで負けたの?」

ではなく、

「今日はどうだった?」

と聞いてみる。

そして、もし子どもが話したくなさそうなら、

無理に聞かなくてもいい。

ただ隣にいる。

それだけでもいい。

親は、

子どもの人生のコーチではなく、子どもの人生の応援者。

私は30年以上、テニスコーチとしてたくさんの家族を見てきて、そう思うようになりました。

「テニスを好きな子」を育てたい

私は、テニスが上手い子だけを育てたいわけではありません。

勝てる子だけを育てたいわけでもありません。

もちろん、強くなりたい子には、強くなるためのサポートをしたい。

でも、その前に、

テニスを好きでいてほしい。

自分で考えてほしい。

自分で選んでほしい。

自分で挑戦してほしい。

そして、もし壁にぶつかったとき、

「もう一回やってみようかな」

と思える人になってほしい。

そのためには、

コーチはコーチ。

親は親。

そして何より、

主役は子ども。

この線引きが、とても大切なのだと思います。

私自身、テニスコーチでありながら、自分の子どもには「教えない」という選択をしています。

一緒にテニスをする。

一緒に遊ぶ。

その中で、子どもが何かに気づく。

そんな時間を大切にしています。

だって、

親子でテニスをする時間は、テニスを上手くするためだけの時間ではないから。

いつか子どもたちが大きくなったとき、

「あの頃、パパとテニスしたな」

「楽しかったな」

と思ってくれたら、それでいい。

そして、その中で、

「やっぱりテニスが好きだ」

と思ってくれたなら……

それは、30年以上テニスコーチをしてきた私にとっても、最高のご褒美なのかもしれません。

テニスは大好きか?

ジュニアの皆さん。

今日、一度だけ自分自身に聞いてみてください。

そして、親御さんも一度だけ聞いてみてください。

「うちの子は、テニスが大好きかな?」

答えを急がなくてもいい。

その答えを、一緒に探していけばいい。

テニスDEポン。
今日も、テニスを楽しもう。