『だから、感覚のない風をどう思う?』
「こ、答えようがないな……」
『その動揺は、何か知ってるな?』
田上はこういう時だけ察しが鋭い。変人のイメージを持たれる原因の一つだろう。
『まぁ、谷に聞いたところで何も収穫はないだろうけど』
その言葉に秀太は少し苛立ちを覚えたが、話題が自らから逸れた事に安堵も感じた。
『俺の友達で、図書館から空を見上げた時に別の世界のような場所に来て、感覚のない風を感じた奴がいるんだ』
その一言に、秀太は目を見張った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
『ん? どうした?』
「今日、それを体験したんだよ!」
『ホントかよ? 俄には信じにくいなぁ』
「本当だよ。こんな時は嘘をつかねぇよ!」
『そりゃそうだな。ここで嘘をついても得はないからな。それで、どんな状況だった?』
その問いに、秀太は体感した風景と感覚を全て田上に話した。
『そうか……、奇妙っちゃ奇妙だわな』
「そうだろ?」
『よっし、うちにある図鑑とかで調べてみるわ。何か興味湧いてきた』
「おう、よろしく」
『なんで人任せなんだよ』
笑いながら田上が返す。
「いや、俺はそういうの詳しくないから」
ついつい秀太も笑ってしまう。
『 そりゃそうだな。まぁ、そっちで一度だけでもググってみといて』
「あぁ、分かった」
『じゃ』
「じゃあな」
携帯を畳んだ秀太は、自宅のドアノブに手を掛けた。