「いや俺まだ何も言ってないし、てかヤツらって誰だよ田上」
「ふっ、良いか谷少年。男には秘密の一つや二つくらいあるもんなのさ」
「ふーん、で?」
「うわぁあああ出た出た出た! 谷少年のクールぶったツッコミ! 今頭の中で『今の俺、とってもキマってるゥ!』とか思ってるでしょ! ねぇねぇ?」
「で?」
「谷、いや我が友、谷秀太。確かにお前は俺に比べてクールな部類に属しているかもしれない。頭は悪くはないし、ツッコミスキルもあると思ってる」
「で?」
「でも……そういうのが通じるの、イケメンに限られますからぁ! 残念!」
「で?」
「そんな谷が俺は大好きなんだぁぁああああ!!」
「でっていう」
「そろそろ勉強始めようか」
「そうだな」
教室の窓側に机を向かい合わせた秀太と田上は、各々の教科書を机上に並べて問題を解き始めた。
昨日より雲が薄くなった空模様ではあるが、それでもこの蒸し暑さは二人の額に汗を浮かばせるのに充分だ。
黒板消しクリーナーの横に置かれた小さな観葉植物も、心なしかしんなりしている。
まったく、自習したいのに放課後はエアコンを切るなんて、学校は生徒と電気代、どっちが大事なんだか……。
秀太は雑に汗をぬぐい、ふと視線を上げて田上の顔を見ると……絶句した。
「谷……やっぱ図書室でやろうぜ」
滝のように汗を滴らせながら両目をひん剥いて提案する田上に対して許されるリアクションは、ただこくこくと頷くことだけだった。
図書室に向かう階段でねだられて渡した水筒を、田上によって空にされたのは余談。