「最悪だ…」
3階と4階を繋ぐ階段の踊り場。空になった、いや、空にされた水筒を覗きながら深くため息をついた。
「で、もちろん中身の分の代金は支払うよなぁ?」
「えっ、なんのこと」
「とぼけんな!!」
秀太は田上の襟首を掴んだ。
その瞬間。
パリン、という衝撃的な音とともに飛び散るガラスの破片。
…が、まっすぐ2人の元へ飛んできた。まるで、生き物が2人へ殺意を持って襲いかかるかのように。
「うわっ」
危機一髪。秀太は襟首を掴んだまま田上ごと破片を避けた。
「なんだよ今の!」
驚いて叫ぶ田上。
その横で秀太は何故か冷静に窓の外を見つめていた。
窓の外の木と、壁に貼り付けられたポスターが揺れる。
あの夢と同じ、感覚のない風が2人の周りに吹いた。
まだなお叫ぶ田上の声を聞き流しながら、秀太は、何か恐ろしい魔の手が忍び寄る気配を感じていた。
余談。
破片を避けたときに田上の第二ボタンが弾け飛んで見当たらないとかで田上が秀太に弁償するように言ったそう。
この後田上の頬に赤い痕ができた理由は言うまでもない。