感謝を胸に新天地での日々を過ごしている。パドレスの松井裕樹投手(28)はダルビッシュ有投手(37)とチームメートになり、親身なアドバイスを受けながら、メジャー1年目で大先輩の日米通算200勝の節目に立ち会うことができた。
「ダルさんに関わった人なら、全員がダルさんの200勝を喜ぶと思いませんか? 全員がうれしいと思います」
松井はとある日のクラブハウスでニコニコしながら、そう答えた。
「ダルさんの積んできたもの、知識とか経験、野球選手として、人としての深さ…尋常じゃない。本当に近くにいさせてもらっている時間が幸せだなあ、って思います。こんな人になりたいなあ、って思いますね」
サンディエゴのペトコパークのクラブハウスでロッカーは隣。さらに移動の際、チャーター機での座席も隣が“指定席”となり、ことあるごとに会話する機会があるという。
「僕の結果が悪かったときにも、よかったところを見つけて『ここよかったから、あまり自分を責め過ぎないように』と。よかったところは継続すればいい、と。ダルさんも忙しい中、僕の登板をみてくれている。前向きになりやすい言葉を常にかけてくれる」
実際、試合の投球をベンチから見守るだけではなく、データなどの資料もチェックして「よかったところ」を探し出してくれる。丁寧に寄り添ってくれる気持ちが、何より松井のメジャーでのルーキーイヤーで大きな助けになっている。
「取り組んでいる姿、行動をみることができているのは、ありがたいです。僕も勉強して、ダルさんに質問する。それが楽しくて。ダルさんと話していると時間がすぐに過ぎてしまう。パドレスに入って本当によかったと思います」
ダルビッシュが日米通算200勝を挙げた5月19日、アトランタでのブレーブス戦。試合前に「大量リードの場面で(自身の)登板、ないですかね?」と笑った。前日には「1アウトでもいいから(200勝に)貢献したい」と話していた。当日は願った通りに9―0で九回を迎えた。「次の日がダブルヘッダーじゃなかったら、本当に直訴して投げたかったくらいです」と試合後に打ち明けた。
5月13日から25日まで5試合連続で無失点を継続。野球人としても、人間としても尊敬するダルビッシュと同じチームでいられる幸せとよろこびをかみしめながら、松井は新たな環境で日々懸命に左腕を振っている。