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October 14th, 2026
パドレスの松井裕樹(30)は、メジャー3年目で自己最高のシーズンを終えた。春先に左内転筋を負傷し、WBC(ワールドベースボールクラシック)日本代表を辞退。開幕を負傷者リストで迎え、メジャー復帰は5月5日までずれ込んだ。それでも復帰後は登板を重ね、終盤には勝利継投の一角まで役割を高めた。
【2026年成績】
・レギュラーシーズン:54試合、5勝1敗、1セーブ、64回、68三振、防御率1.83、WHIP1.14
・ポストシーズン:5試合、1勝0敗、4回2/3、3三振、防御率0.00、WHIP0.86
2024年の防御率3.73、25年の同3.98から大幅に改善。3年連続で50試合、60回以上をクリア。64回は昨季の63回1/3を上回るメジャー自己最多となった。
8月10日から11試合連続無失点を記録し、9月8日のナショナルズ戦で1失点した後はレギュラーシーズン終了まで再び9試合連続無失点。ポストシーズンでも5登板すべて自責点0で、レギュラーシーズン終盤から14試合連続自責点0でシーズンを締めた。地区シリーズ第3戦のブルワーズ戦では1回無失点で勝利投手となり、崖っぷちのチームを第4戦へつないだ。
今オフは契約上の決断にも注目が集まる。松井は2023年12月、パドレスと5年総額2800万ドル(約44億2000万円)で契約。2026年終了後と27年終了後に松井側のオプトアウト権(契約破棄条項)が設定されている。今オフに権利を行使しなければ、残る契約は2027、28年の2年総額1350万ドル(約21億3000万円)。左肘の負傷に関する条件次第では5年目が球団の契約得延長の選択権へ転換する条項もある。
負傷による出遅れを乗り越え、防御率1点台と自己最多64回を記録。さらに10月でも無失点を続けた。メジャー3年目で市場価値を高めた左腕が、残り2年の契約を継続するか、オプトアウトしてフリーエージェント(FA)市場へ出るのか。
3シーズンを家族とともに過ごしたサンディエゴとチームに、思い入れはあるはずだ。温暖な気候、日本食レストランやスーパーマーケットなど生活面の環境もいい。そして、尊敬するダルビッシュ有(40)がいる。クラブハウスでのロッカーは隣。入団以来、多くの時間をともに過ごし、多くのアドバイスを授かった。
「本当に何気ない雑談でリラックスになる時もたくさんありますし、また野球の面で大いなるアドバイスをいただいてます。母国語でしっかりディスカッションできる存在がいるのは本当に僕にとって大きなことです」
パドレスは松井の入団後、3年連続ポストシーズン進出。ダルビッシュは来季の去就が未定ながら、メジャー復帰の可能性はある。松井は自身の価値を高めた今季、オプトアウトの権利を行使しフリーエージェント(FA)になるのか。決断の期限は、ワールドシリーズ終了の翌日から5日以内だ。
(※以下は、松井のパドレスとの契約詳細)
松井は2023年12月、パドレスと5年総額2800万ドル(約44億2600万円)で契約。年俸は段階的に上がる設定となっている。
【契約内容】
- 2024年:325万ドル(約5億1400万円)
- 2025年:550万ドル(約8億6900万円)
- 2026年:575万ドル(約9億900万円)
- 2027年:650万ドル(約10億2700万円)
- 2028年:700万ドル(約11億600万円)
- 5年総額:2800万ドル(約44億2600万円)
2026年までの3年間で1450万ドル(約22億9200万円)を受け取り、契約を継続した場合は2027、28年の2年総額1350万ドル(約21億3400万円)が残る。
松井には2026年終了後にオプトアウト権があり、行使すれば残り2年の契約を放棄してFAとなる。2027年終了後にもオプトアウト権が設定されている。また契約には登板終了試合数に応じた出来高もあり、条件を満たせば総額は最大3360万ドル(約53億1100万円)まで上昇する。
AP通信によれば、契約には、2024~27年の各シーズンで試合を最後まで投げた回数に応じ、翌年の年俸が上がるエスカレーター条項が設定されている。
【試合終了数による年俸加算】
- 15試合:15万ドル(約2380万円)
- 25試合:累計40万ドル(約6340万円)
- 35試合:累計65万ドル(約1億300万円)
- 45試合:累計90万ドル(約1億4260万円)
- 55試合:最大140万ドル(約2億2180万円)
松井の試合終了数は、
- 2024年:14試合
- 2025年:19試合
- 2026年:11試合
2025年に最後まで投げた回数が15試合を超えたため、2026年の年俸に15万ドルが加算されている。2024~26年の実際の年俸総額は下記の通りと見られている。
- 2024年:325万ドル(約5億1490万円)
- 2025年:550万ドル(約8億7130万円)
- 2026年:590万ドル(約9億3470万円)
- 3年間合計:1465万ドル(約23億2100万円)
パドレスの松井裕樹(30)がメジャー3年目で防御率1.83の好成績を残した背景には、新たな魔球がある。改良したスライダーだ。昨季より球速を減速させ、縦方向の変化を増し、使用率はほぼ倍増。スライダーとスプリットを左右の打者に使い分ける配球も鮮明になった。
新球について、地区シリーズ第4戦前の公式会見で手応えを明かしている。米メディアから「今年、重要な場面を任されることになった要因は」と問われた。
「ボール(球種)で言えば、スライダーの動きが、求めていたものに近づいてきたのが一番の大きな要因かなと思っています」
では、松井の「求めた動き」とはどういう変化なのか。
簡潔に言えば、球速は少し遅く、縦と横の変化量を増やした。
ベースボール・サバントによる2025年→26年のスライダーを比較する。
- 使用率:15.9%→30.3%
- 平均球速:86.6マイル(約139.4キロ)→84.9マイル(約136.6キロ)
- 縦の落下量:29.6インチ(約75センチ)→34.9インチ(約89センチ)
- 横変化:2.9インチ(約7センチ)→4.3インチ(約11センチ)
- 被打率:.273→.145
- 空振り率:22.8%→35.8%
- ハードヒット率(95マイル=約153キロ以上の強い打球の割合):38.2%→23.4%
- ランバリュー:+2→+7(平均的な投手と比べ、その球種で防いだ得点価値)
平均球速は1.7マイル(約2.7キロ)低下した一方、縦には約14センチ深く落ちるようになった。一般的なスライダーより縦方向の変化を強めた「スラーブ」に近い性質とも分析できる。
配給割合も変化した。
- 2025年:スライダー15.9%、スイーパー10.7%
- 2026年:スライダー30.3%、スイーパー2.9%
フォーシームとの関係も興味深い。平均球速は昨季92.1マイル(約148キロ)から今季92.0マイル(約148キロ)とほぼ同じ。一方、スライダーを遅くしたことで両球種の球速差は5.5マイル(8.9キロ)から7.1マイル(11.4キロ)へ拡大した。スライダーは緩急を生む球種にもなった。
もう一つの武器、スプリットも今季の投球を支えている。
- 平均球速:84.0マイル(約135キロ)→83.5マイル(約134キロ)
- 縦の落下量:35.5インチ(約90センチ)→35.7インチ(約91センチ)
- 被打率:.223→.152
- 空振り率:44.9%→47.1%
- 三振率:35.3%→42.1%
- 予想被打率(打球速度や角度などから算出した推定打率):.194→.134
- ハードヒット率(打球初速95マイル=153キロの割合):32.2%→22.2%
左右の打者による球種の使い分けも明確だ。今季のスライダー329球のうち225球、約68%を左打者へ投じた。一方、スプリット281球では233球、約83%が右打者への投球だった。
左打者にはスライダー、右打者にはスプリット。そこへフォーシームの高低を組み合わせる。球速を大幅に上げたわけではない。スライダーの軌道を変え、フォーシームとの球速差を広げ、右打者には高い空振り率を誇るスプリットを使う。松井の3年目の飛躍は、スライダーの改良から各球種への相乗効果を生んだ結果だ。
松井は過去最高の成績を挙げた今オフ、5年契約の3年目終了時に盛り込まれたオプトアウト(契約破棄)の権利がある。好成績を手にフリーエージェント(FA)になるのか、パドレスに残留するのか。メジャーキャリアでの岐路を迎える。