「私、もう子どもじゃないかも」。そんな小さな優越感を初めて抱いたのは、毎日学校で使う筆箱の形が変わった瞬間でした。

低学年までのかっちりした箱型から、布のペンケースへ。中身が鉛筆からカラフルなペンやマーカーに変わったあの時期こそが、私にとっての大人の階段だったのです。

 

8月に入り、お店の文具コーナーでは新学期に向けた商品が並び始めています。 ずらりと並んだ色とりどりの筆記具を眺めていると、ふと自分が小学生だった頃の懐かしい光景を思い出しました。

 

小学校に入学したばかりの低学年の頃。クラスの全員がマグネットでパカッと開く、かっちりとした箱型の筆箱を使っていましたよね。 あの筆箱には鉛筆を一本ずつ収納する専用のホルダーがついていました。 毎晩ランドセルを開けて翌日の時間割を合わせます。きれいに削った鉛筆を所定の位置にカチッ、カチッと収めていくのが日課でした。 消しゴムを入れる場所も決められていて、まるで自分だけの小さな基地を整理しているような楽しさがありました。 蓋の裏側に時間割表を挟んだり、無駄に開け閉めを繰り返したりしたのも懐かしい思い出です。

 

 

 

 

ところが小学校の中学年に差し掛かった頃。クラスの空気に少しずつ変化が訪れます。 学校で明確なルール変更があったわけではありません。それでも一人、また一人と箱型の筆箱を卒業し始めるのです。 代わりに机の上に置かれるようになったのは、布やナイロンでできたポーチのようなペンケースでした。 私もその波に乗り遅れまいと、親にねだって新しい布のペンケースを買ってもらいました。

 

かっちりした筆箱のときは、中に入れられる本数も種類も決まっていました。 けれど布のペンケースは違います。チャックを開ければそこは自由な空間です。

 

 

 

 

ペンケースの形が変わると同時に、中身も劇的に進化しました。 それまで几帳面に並べていた鉛筆たちは姿を消します。 代わりにペンケースを陣取ったのはカラフルなボールペンや蛍光マーカーです。少し背伸びをして買ったシャープペンシルも入っていました。 香り付きのペンや色が変わる不思議なマーカーなど、友達同士で見せ合いっこをしたのもこの時期です。

 

授業中、布のペンケースの中に手を入れて目当ての色のペンを探します。 その時にペン同士がぶつかって鳴る「ジャラッ」という音が、なんだかとても大人びて聞こえました。 決められた枠の中に決められたものを入れる低学年時代から、自分の好きなものを好きなだけ詰め込む中学年時代へ。 今思えばあの文具の

 

大人になった今でも文具コーナーで布のペンケースを見ると、あの頃のワクワクした気持ちが蘇ってきます。 当時は当たり前のように受け入れていた変化ですが、小さな文具の中にも確かな成長のドラマが詰まっていたのですね。

 

皆さんの学校の思い出には、どんな文具の記憶が残っていますか?