水の中で 呼吸をする。

昨日の世界は
海にさらわれ

またひとつ
陸地を なくしたよ。

僕らは 海に沈んだ
街を翔ぶ。

ネオンの隙間を すり抜けて。

今夜は 月が きれいだから

あの鉄塔をのぼり
地上に 出よう。

ずっと昔のひとが
そうしたように

地上から 月を眺めてみたいんだ。

空気はまだ そこで 震えているだろうか。

きみは 今頃
あの月で 眠っているだろうか。

きみの花が
僕の街にも 咲いたんだよ。

海の底を 優しい色で うめつくして。

ほんとうに
すごく すごく
きれいなんだよ。

月で眠る きみの夢に
今夜 送るよ。

きみは あの頃みたいに
微笑ってくれるかな。

ひとり眠る
きみの夢が
優しい色で あふれますように。

月に ねがうよ。


暗闇に舞う 碧い蝶
水面に浮かぶ 月にとまる。

夜を溶かした きみの孤独に
寄り添うように 羽根をやすめて。

きみが哭けるまで
ここにいるよ。

月に舞う蝶
僕の月は きみだけだ。

求める蜜は
きみの零す滴だけ。

きみの影に 重なりながら
碧い蝶は
夜明けを うたう。


なにも聴こえない。

僕の耳は こわれているから。

振動で つたわる メロディ。

きみの鼓動が
聴こえた気がした。

きみのくちびるから
こぼれ落ちる色彩。

それは 僕にしか 見えない
きみの声。