GW直前の4月26日、無声映画の上映会に行ってきました。
【柳井イニシアティブ】The Art of the Benshi 2024 World Tour 早稲田大学公演。
ワールドツアーとあるように、全米4都市での公演後、帰国しての最終公演。
6本の無声映画が、3人の弁士と楽士たちにより上映されました。
鑑賞順に、簡潔にご紹介。


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『生さぬ仲』(1916年)18分
監督:井上正夫 出演:井上正夫、木下吉之助、秋元菊弥
所蔵:早稲田大学演劇博物館・演劇映像学連携研究拠点

柳川春葉の小説を原作にした作品で、何度も映画化されている。
血のつながらない親子の幼子の、養母慕う思いに絆された実母が命を絶ってしまうという悲劇。
物語の欠落部分を解説の字幕で補い、物語がわかるようになりました。
片岡一郎、山内菜々子、山城秀之の三弁士による声色掛合。

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『刀の誓い』(1914年)31分
監督:フランク・ショー 出演:トミ・モリ、ヒサ・ヌマ、ユタカ・アベ
所蔵・修復:全米日系博物館・ジョージ イーストマン博物館

米国の日系移民が設立した日米フィルム社の製作、という貴重な作品。
新たな漁業技術を習得すべく渡米した日本人青年には、日本に許嫁がいた。
米大学でのライバル白人青年は卒業後、船長となるが、初航海で日本近海で船が難破。
助けたのは、日本人青年の許嫁だった。
当然のごとく白人青年と娘は恋仲となり・・・
という物語は悲恋ものだが、強引ともいえる展開に、あっとするやら大笑いするやら。
米国上映でも、後半は笑いが絶えなかった、と弁士の弁。
弁士:片岡一郎。

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『Sweetie』(1923年)21分
監督:アルフレッド・J・ゴールディング 出演:ベビー・ペギー、ジェリー・マンディ、ルイーズ・ロレイン
所蔵:UCLA Film and Television Archives

孤児のベビー・ペギーは、歌と踊りの大道芸でお金を得ようとするが・・
猿回しの猿を連れてのお笑い、自動車の追跡劇、お色気ダンスなど、米国サイレント映画のお笑いが満載の一編。
デジタル修復された画面が鮮明。
弁士は、当初予定の大森くみこが体調不良により休演で、片岡一郎が代演。

<休憩20分を挟んで>

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『突貫小僧』(1929年)21分
監督:小津安二郎 出演:斎藤達雄、青木富夫、坂本武
所蔵:松竹

2023年に発見された、従来よりも7分長い最長版。
人さらい(斎藤達雄)に攫われた突貫小僧(青木富夫)。
人さらいの親分宅で親分(坂本武)に、いたずら三昧・・・
三人三様の演技が面白く、小津の演出もテンポがいい。
小津映画=「しんねりむっつり」ってわけではなかったことを再確認。
斎藤達雄が小津映画俳優ではいちばん好き。
弁士:片岡一郎

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『血煙高田馬場』(1928年)12分

監督:伊藤大輔 出演:大河内傳次郎、実川延一郎、澤村春子
所蔵:おもちゃ映画ミュージアム
断片映像所蔵:早稲田大学演劇博物館
映像協力:片岡一郎、早稲田大学演劇博物館

おもちゃ映画ミュージアム所蔵の複数のフィルムに早稲田大学演劇博物館所蔵の玩具映画の非重複映像をデジタル化して編集した現在のところの最長版(で今回が日本初公開)。
編集は片岡一郎。
とにかく、高田馬場での助太刀剣戟シーンは凄まじい迫力。
駆けつける際の疾走シーンも素晴らしい。
現在のアニメの活劇シーンもかくや、と思うほどのショットの連続でした。
弁士:山城秀之

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『豪傑児雷也』(1921年)21分
監督:牧野省三 出演:尾上松之助、片岡松燕、片岡長正
所蔵:国立映画アーカイブ

「めだまのまっちゃん」尾上松之助主演作。
ガマの妖術や水団の術を操る児雷也のお家再興、復讐譚。
トリック撮影と歌舞伎的な演技やフィックス長回しなど楽しめる一編だが、『血煙高田馬場』の後では、やはりのんびり感は否めないね。
片岡一郎、山内菜々子、山城秀之の三弁士による声色掛合。

と3時間の公演。
プレイベントの全米ツアーを振り返るトークをあわせると5時間ほど。
休憩などを挟んではいるが、さすがに疲れましたが、これは心地よい疲労感というところでしょうね。