前回の記事の続きです。よければ、もう少しだけお付き合いくだいませ。



Baby Queen - Colours Of You(8)


第8話のオープニングシーン、チャーリーとの関係をインスタグラムで公表したニック。ここで流れるのがベイビー・クイーンの『Colours of You』。この曲はベイビー・クイーンがチャーリーとニックの物語にインスパイアを受けて書き下ろした、いわば本作のオリジナルテーマとも言える楽曲。



I can't believe what you've done to me

(君のしたことが信じられない)

Can't you see that I'm on my knees?

(わかるかな  もう僕はひざまずくしかない)

You look at me and the darkness leaves

(君に見つめられると  暗闇も晴れるよう)

And suddenly

(そして気づいた時には...)


I'm covered in the colours of you

(僕は君の色に覆われている)


...こう歌われる歌詞は、主にニックの目線からチャーリーへの思いを綴ったものなんだそう。また「君の色に覆われる」というサビ部分の一節が流れるのとちょうど重なるように映し出されるのが、チャーリーとニックがチャーリーの家の玄関前でハグをし合うシーン。曲のタイトルにもあるような「」を効果的に使った演出も秀逸な『ハートストッパー』。そしてその同シーンで注目してほしいのは、チャーリーとニックが着ている洋服の色です。




チャーリーが着ている洋服にはパープルブルーが入っていて、これは「バイセクシュアルフラッグ」に使われている色。これにピンクを足した3色の光でシーンを照らす「バイセクシュアルライティング」なるものもドラマ内では視覚演出のひとつとして用いられています。一方のニックの洋服はグリーンホワイト、さらにインナーのシャツがブルーであることも別のシーンで確認でき、この3色は「ゲイの男性フラッグ」に使われている色です。


バイセクシュアルフラッグ

ゲイの男性フラッグ

LGBTQ+コミュニティーの多様性などを表したレインボーフラッグや、そこにトランスジェンダーと有色人種のLGBTQ+コミュニティー、またHIV/AIDS患者との連帯も示すために色を足してデザインを進化させた「プログレスレインボーフラッグ」は有名ですが、バイセクシュアルとゲイの男性にも、それぞれのコミュニティーを表すフラッグが存在しているって、ご存じでしたか?


インスタでカミングアウトし、堂々と恋人でいられるようになったことを喜び合うチャーリーとニック。そんなシーンでチャーリーは「バイセクシュアルフラッグ」を纏っていて、ニックは「ゲイの男性フラッグ」を纏っていて...そうです、つまり熱い抱擁を交わすふたりは、お互いがお互いに「君の色に覆われている」んです!またチャーリーとニック、どちらの洋服もボーダー柄であることが、よりフラッグのデザインを彷彿とさせるようでもあります。


ほんの一瞬だけれど、これもまたLGBTQ+のストーリーを描いた本ドラマにおいて見逃せない、とっても象徴的なシーンとなっています。





Baby Queen - All The Things(8)


さて、そんな胸熱鳥肌ものの演出にも一役買ったベイビー・クイーン。先ほども言ったように、彼女の曲は6曲がシーズン2の挿入歌に使われていますが、そのうちのもう1曲が『All The Things』という楽曲。こちらはシーズン2が配信された時点ではまだリリースされていなかった未発表の新曲です。



またベイビー・クイーンは、この曲が流れるプロムのシーンでバンドのボーカルとしてカメオ出演も果たしました。彼女がカバーしたザ・キュアの『Just Like Heaven』に乗せてタオとエルがダンスを踊るシーンも素敵です。




Taylor Swift - seven(8)


そしてシーズン2のサントラの中でもっとも話題を呼んだ曲が、あの誰もが知る世界的スーパースターのテイラー・スウィフトが歌う『seven』です。この曲が流れるのは、プロムを抜け出したチャーリーとニックたちが、ニックの家に集まって仲良しの友だちだけでささやかなパーティーを楽しむシーン。このシーンでダーシーはタラに本心を打ち明け、素直な気持ちを確かめ合ったふたりは、お互いに「あなたを愛してるよ」と伝え合います。



Please picture me in the trees

(思い描いて  木々に囲まれる私を)

I hit my peak at seven

(私の人生は7歳がピークだった)

Feet in the swing over the creek

(小川を見下ろし  足をぶらぶらさせていた)

I was too scared to jump in

(怖くて飛び込めなかったけど)


Sweet tea in the summer

(甘い紅茶を夏に)

Cross your heart, won't tell no other

(誓って  誰にも言わないって)

Passed down like folk songs

(フォークソングのように受け継がれる)

The love lasts so long

(この愛は世代を越えて続いていく)


...そんな詩的な歌詞が綴られた同曲は、不幸せな家庭で育った幼い頃の友だちとの思い出に、大人になったテイラーが思いを巡らすような曲なんだそう。それはまるでタラの視点から見たダーシーの家庭環境を描写しているようでもあり、また、この時ニックの家に集まっていたのは、ニック、チャーリー、タラ、ダーシー、タオ、エル、アイザックの「7人」。タイトルとも照らし合わせて、まさに本ドラマのために書かれたような運命的な曲となっています。



ちなみに、テイラーは配信前の同シーンを事前に拝見した上で楽曲の使用を承諾したんだそうです。またシーズン2でその全貌がお披露目されたタラの部屋には『seven』が収録されているアルバム『folklore』のポスターが飾られていて、彼女がテイラー・スウィフトの熱狂的なファン、スウィフティーであることが確認できます。これは見つけやすいので探してみてくださいね。




Wasia Project - ur so pretty(8)


今シーズンも様々なドラマが巻き起こった、そんなシーズン2のエンディングを飾る楽曲が、ウェイジア・プロジェクトの『ur so pretty』。このバンド、女性ボーカルなので知っていないと気づけないとは思いますが、じつはタオ役のウィル・ガオくんが、妹と組んで活動している兄妹バンドなんです!



You're so pretty

(君がすごくかわいい)

When you smile, it kills me, oh-oh, oh-oh

(君が笑うと  胸が締め付けられるよう)

Can't stop thinking 'bout the way you kissed me

(君とのキスを思い出さずにはいられない)

Under the stars

(星空の下で)


And you're so lovely

(君がすごく愛しくもある)

When you cry, it hurts me, oh-oh, oh-oh

(君が泣くのを見ると  こっちまで胸が痛くなる)

You're the only person left, so hold me

(もう君しかいない  だから抱き締めて)

Don't leave me

(どこにも行かないで)


I'm so scared that the moments we shared

(怖くなる  君と過ごした時間が)

Won't happen again

(あれが最後なのかなって思うと)

I don't want this to end

(終わってほしくない)



...そんな、チャーリーに対するニックの気持ちを歌ったようにも聞こえる少し切ない歌詞と儚げな歌声、そしてウィルくんの美しいピアノの音色が、チャーリーとニックを優しく包み込むと共にシーズン2は幕を下ろします。



というわけで、シーズン2もこれで以上となります。最後にまた挿入歌全曲のリストを記載しますが、本シーズンに使われた楽曲は全部で47曲。その中には、よ~く耳を澄ませて聴かないと分からないような使われ方をしている楽曲もあり、すべてを聞き取るにはそれなりの労力も必要となるのですが、ぜひドラマを2回3回、いやそれ以上と観ているって方は、次はサウンドトラックにも注目して鑑賞してみてください。


そして残念ながら今回は紹介しきれなかったのですが、シーズン2には他にも超豪華な世界的アーティストたちの楽曲がふんだんに使われています。例えば現代のロック界を牽引するThe 1975、ボーイジーニアスのメンバーでソロとしても活動するルーシー・デーカス(Lucy Dacus)などなど...


さらには2011年に『コール・ミー・メイビー』で世界にその名を轟かせた歌姫カーリー・レイ・ジェプセン(Carly Rae Jepsen)、人気姉妹デュオのティーガン・アンド・サラ(Tegan and Sara)、シーズン1でも楽曲が使われていたデイグロウ(Dayglow)といった人気アーティストたちの曲もかなり贅沢にサントラに使われているので、ぜひ音楽と一緒に作品を楽しんでみてください。


The 1975

カーリー・レイ・ジェプセン


そして、来たるシーズン3!どんな曲を劇中で聴けるのかと想像すると、もう今からワクワクが止まりませんが、そのうちの何曲かはすでに予告編動画などの中で明かされています。その内の1曲が、次世代のアイコンとして今や世界のトップをひた走る歌姫ビリー・アイリッシュの『BIRDS OF A FEATHER』という楽曲です。この曲はTikTokやインスタなどでもよく使われているので、メロディーを耳にしたことがあるって方も多いんじゃないかと思います。


Birds of a feather, we should stick together, I know

(私たちは似た者同士  だから一緒にいなきゃ)

I said I'd never think I wasn't better alone

(確かに私  一人の方が楽だって言ったけど)

Can't change the weather, might not be forever

(自分の力では  どうにもならないこともある

この関係が永遠に続くとも限らない)

But if it's forever, it's even better

(でも永遠に続いてくれたら  私は嬉しいな)


And I don't know what I'm cryin' for

(なんで涙が出てくるのか分からない)

I don't think I could love you more

(あなたをこれ以上ないほどに愛してる)

It might not be long, but baby, I

(もしかしたら明日には死んじゃうかもしれない  でも私は)


I'll love you 'til the day that I die

(その時が来るまで  あなたを愛し続けるよ)


...そんなチャーリーとニックのラブストーリーにもピッタリとハマるようなロマンチックな歌詞が歌われる同曲は、今年の5月にリリースされたばかりの彼女のニューアルバム『HIT ME HARD AND SOFT』からの完全新曲。またビリーは昨年の5月にクィアであることをカミングアウトしていて、同作からのファーストシングルとなった『LUNCH』という楽曲では、女性に恋をした自身の気持ちが少し刺激的でビリーらしい表現と共に歌詞に綴られています。



ちなみに、その他シーズン3のサントラに予想される楽曲が、ロミー(Romy)の『Enjoy Your Life』、トロイ・シヴァン(Troye Sivan)の昨年のヒット曲『Rush』、そしてレオン(LÉON)の『Pretty Boy』。


...というわけで、そんな音楽にも耳を傾けながら、これまでのお話を振り返りつつ新シーズンの到着を一緒に待ちましょう!『HEARTSTOPPER ハートストッパー』シーズン3は10月3日の配信開始です。ここまで長らくお付き合いくださり、本当にありがとうございました!それではまた会いましょう~



第1話『カミングアウト』

Maggie Rogers - Shatter

Fitz and The Tantrums - Out of My League

Julia Jacklin - Pressure to Party

Wolf Alice - The Beach


第2話『家族』

mxmtoon - coming of age

Carmody - Paradise

amy michelle - welcome to the sidelines

Tegan and Sara - You Wouldn’t Like Me


第3話『約束』

Vistas - Retrospect

Metronomy & Bratty - Things Will Be Fine (Bratty Remix)

The 1975 - The Sound

carpetgarden - I Think Ur Rlly Cool

Francoise Hardy - Le Temps de l’Amour

Orla Gartland - Kiss Ur Face Forever

siouxxie sixxsta - foreplay

Bad Smith - Miss U

beabadoobee - Lovesong


第4話『挑発』

Hatchie - Obsessed

Hervé - Trésor

Alexia Gredy - Un peu plus souvent

mxmtoon - mona lisa

Miya Folick - Freak Out


第5話『熱』

Baby Queen - Nobody Really Cares

Christine and the Queens - Doesn’t matter (voleur de soleil)

Cavetown - Fall In Love With A Girl (feat. beabadoobee)

Gabrielle Aplin - Never Be The Same


第6話『真実か挑戦か』

Louane - On était beau

Wolf Alice - Bros

Alfie Templeman - 3D Feelings

Dayglow - Then It All Goes Away

Lucy Dacus - Hot & Heavy

Baby Queen - Pretty Girl Lie

Holly Humberstone - Deep End


第7話『ごめん』

Baby Queen - We Can Be Anything

Conan Gray - People Watching

Caroline Rose - Cry!

Conan Gray - Crush Culture

Carmody - Skin

Wolf Alice - Blush


第8話『完璧』

Baby Queen - Colours Of You

Carly Rae Jepsen - Run Away With Me (ASTR Remix)

Neon Capital - Young

Let's Eat Grandma - Happy New Year

The Cure - Just Like Heaven (Cover by Baby Queen)

Baby Queen - All The Things

Taylor Swift - seven

Wasia Project - ur so pretty