配信直後から大反響の青春LGBTQドラマ『Heartstopper(ハートストッパー)』。皆さんはもうご覧になりましたか?


まだご覧になっていないという方は、ホントに素晴らしい作品なのでぜひ観てみてほしいんですが、今回はもう観ましたって方も、もう一度『ハートストッパー』を観てみたくなるような、こんな動画をご紹介!その名も...



The Hidden Details in the Show

『ハートストッパー』に隠された14つのディテール!

https://youtu.be/H35DceQtaGQ


ということで、じつは細かいところまで何度もじっくりと見ていると、一度見ただけでは気づかないような、でも気づくとドラマがまた何倍も面白くなるような仕掛けがたくさん隠されているのが『ハートストッパー』。


そんな作品に潜んでいる「イースターエッグ」(製作陣が忍ばせた演出や仕掛け)を紹介しているのが上↑の公式動画なんですが、日本語版は残念ながら公開されていないので、今回はその動画を日本語に訳しつつ『ハートストッパー』に隠された小さな秘密のディテールを読み解いていきたいと思います。


さらに今回は上↑の動画で紹介されている「以外の」イースターエッグやドラマ製作の舞台裏なども自分なりにまとめて紹介します!クリエーターの遊び心を感じられるものから、ドラマが伝えたい大事なメッセージが込められたものまで、あなたは全部を気づけたかな?


この記事はドラマ『ハートストッパー』の内容を100%ネタバレしてます!ドラマを一度以上観た方は先に進んでくださいね。まだドラマを観ていない方は、ここで引き返してまた戻ってきてくださると嬉しいです。では、どうぞ!














1、『ハートストッパー』では、春夏秋冬が表現されたアニメーションや演出が様々な場面で登場している。



キュートなアニメーションなどを使って、ドラマの中で四季の移り変わりを明確に表現しているのには大事な意味があるそうです。


ニックとチャーリーが出会うのは、ふたりの間に恋が芽吹くと季節はになり、そしてになります。ちなみにチャーリーの苗字はスプリング




2、学校の美術室に飾られている生徒たちが製作したアートは、物語が進んでゆくにつれてに変化している。



アジャイ先生がいる美術室は、学校の中でチャーリーの唯一の居場所。その美術室の棚に飾られている彫刻や壁に飾られている「生徒作のアート」は自然をテーマにしたものが多く、物語が進んでいくにつれて少しづつ変化したりアップグレードされたりしていくんだそう。


これは、季節の移り変わりとともに、キャラクターたちの心も変化したり成長していくことを視覚的に表現した演出なんだとか。



たとえば窓に飾られているウインドウアートは四季を表現したものになっていて、シーンによって違った作品が飾られています。窓辺に飾られているペットボトルをリサイクルして作られたサボテンの置物はニックとチャーリーが恋に落ちた後には(紙で作られた)が咲きます。



そして壁に飾られたイモムシのアートは、物語が進むとのアートへと変化します。ちなみに蝶はトランスジェンダーコミュニティーのシンボルともいわれ、こののモチーフはドラマの中に他にもたくさん出てくるので探してみてくださいね!たとえばキャラクターたちのファッションなんかにも注目...




3、美術室はイースターエッグの宝庫!たとえば棚をよく見てみると、ニックの顔のパピエマシェ(紙を糊で固めて作る像)を発見できる。



あとは別のアングルから美術室を見ると、ニックの顔の他にもチャーリーの顔らしきパピエマシェも確認できるので注意してよく見てみて。


ちなみに後ろの壁に飾られている、いろいろな形のドアの絵が描かれた作品は「新しい自己の発見」意味したアートであるとか、いないとか...



そして同じく壁に描かれたのアートは実際にキャストたちが手形を押して描かれたものなんだそう。(下↓の画像の方が分かりやすい。)



ちなみに上↑のシーンで壁に見られるフィンガープリント(指紋)の絵は、多種多様なアイデンティティーを表しているとか、これまたいないとか...



まだまだ美術室。今度は運動会(スポーツデイ)でタオとエルが美術室でふたりきりになるシーンでは、机の上に『ハートストッパー』原作者のアリス・オズマンが描いたの絵も置かれています。



そしてエルが描いたという風景画を見てみると(下↓の画像)そこには流れる川と両脇には並木が広がっているような景色が描かれているんだけれど、これは皆さん見覚えがあるはず。


そう、ミルクシェイクデートの後、エルがタオに「大好きだよ!」って言ってたあの川沿いの道!ここはエルにとって思い出深い場所なんだね。



さらに美術室を別のアングルから見てみると(下↓の画像)部屋の入り口付近の壁にはLGBTQのアクティビストとしても知られたキース・ヘリングのアートも飾られていたりします。どっかで見たことあるアレです!





4、じつはシーンのいたるところに『ハートストッパー』原作者のアリス・オズマンが描いたアートが隠されている。


ドラマの原作となったグラフィックノベルの作者、アリス・オズマンが描いた独特で可愛らしいタッチのイラストは、ドラマの至るところに散りばめられているので、隠れミッキーみたいに探してみたら面白いかも。


たとえばチャーリーのスマホケースにも。




5、ニックやチャーリーたちが通うトゥルハム校の制服のエンブレムは、物語が進むにつれて変化してゆく。



トゥルハム校の制服のブレザーの胸につけられたエンブレムは、ドラマの中で季節が冬から春、夏へと変わっていくにつれて、そしてニックとチャーリーの恋が実っていくにつれて、木にが生い茂るようにデザインが少しずつ変化していっているんです。


さらにチャーリーがキュートな妄想を繰り広げる1話のシーン(「僕と付き合ってくれる?」って、あのシーン!)では、ニックのブレザーのエンブレムはスペードの部分がハートに変わっているんですよ!よく見なきゃ気づかないけど、とってもキュートな仕掛けですよね。





6、役のオーディションは1万人の規模で行われた。



これは製作の舞台裏の話。「オープンコール」と呼ばれる、エージェントなどを通さなくても誰でも応募できる形式で募集がかけられたオーディションには、なんと約1万人もの応募者が集まったそう。その中から選ばれたのが、チャーリー役のジョー・ロックとニック役のキット・コナーを筆頭にした若きメインキャストたち。


ちなみに原作者のアリス・オズマンはキャスティングに際して、それぞれのキャラクターの人種とセクシュアリティーやジェンダーが、ドラマでそのキャラクターを演じる俳優の人種やセクシュアリティーと一致するような人選にこだわったんだとか。


つまりクィアの役はクィアの俳優に、アジア系はアジア系、トランスジェンダーの役はトランスジェンダーの俳優さんに...みたいなってことです。レプリゼンテーションを大事にしたかったんだそう。ただ、演者のセクシュアリティーに基づいたキャスティングが実際に行われたのかは分かりません。



演技経験ゼロながら主役に大抜擢されたジョーを含めたメインキャストたちは、ほとんどがこのドラマでデビューした新人俳優さんたち!みんなスゴいです!ニック役のキットとベン役のセバスチャン・クロフトは過去に演技経験あり。ちなみにキットは映画『ロケットマン』でエルトン・ジョンの幼少期を演じています。




7、トゥルーハム校の廊下の壁に描かれた、葛飾北斎の浮世絵みたいなウォールアート(壁画)は原作者のアリスと美術スタッフが描いたもの。



「波」といえば、まるでチャーリーとニックがビーチへと小旅行に出かけるドラマのエンディングを予兆しているよう。


プロダクションデザイナーのトム・ディッケルは、この絵の波の「しぶき」がドラマや原作の中に何度も出てくるお馴染みの葉っぱのイラスト(通称「ハートストッパーリーフ」)に似てると思っているらしいです。



ちなみに作品のいたるところに印象的に登場する葉っぱのモチーフは、ドラマの中で色々なシーンに色々な形で隠れているから探してみて!


たとえばチャーリーのインスタのプロフ欄にも。




番外編:5話のラストシーンに映る鳥たちはラブバード。



カップルになった相手との結び付きや仲間意識が強く、愛情深い性格でもあることから、日本語ではスラング的に「おしどり夫婦」とも訳されたりするロマンチックな鳥がラブバード


ちなみにラブバードと呼ばれる鳥は9種類いるそうです。そしてカップルとして結ばれたラブバードのペアは、じつは必ずしもオスとメスとは限らず、同性同士でカップルになることもあるんだとか!





8、作品が伝えたいメッセージをしっかりと理解してから撮影に臨むため、キャストたちは、あらかじめ「センシティビティートレーニング」(感受性訓練)を受けた。(トレーニングの機会を提供したのは、STONEWALLというLGBTQを支援する団体だそう。)



ドラマ撮影が始まる前にキャスト全員が受けたという「センシティビティートレーニング」(感受性訓練)とは、自分が特定のコミュニティーや人物に対して持っている無意識の先入観などを改めて認識して、他人への理解を深めたり、様々な相手への共感性を高めたりするための訓練です。


最近では日本の企業でも「LGBT研修」なるものが行われるようになってきたと聞いたりもしますが、このドラマの場合は、事前にLGBTQ+に関する講習を受けたり、当事者の話を聞いたり、グループディスカッションをして意見を交わしたり、というようなことが行われたと考えられます。


より寛容で理解のある現場を作るために行われたトレーニングでは、代名詞(he/him、they/themなど)や、LGBTQに関する重要な単語を学んだり、ジェンダーアイデンティティー(性自認)とセクシャルオリエンテーション(性的嗜好)の違いを学んだりなどもしたそう。




さて、最後まで行きたかったんですけど、なんだか思ったより長くなってしまったので今回はここで終わりにしときますね。後編に続くので、根気よくお付き合いいただけると嬉しいです。