今日の様に
穏やかな風が吹き
小春日和の
天気の良い日には
あなたを想い出します。
二年前の十一月。
私は癌を告知されました。
その時
どうしてもあなたに逢いたくて
あなたの車が止まっている駐車場で
あなたが来るのを待っていました。
あなたは
私に気付くと
人前で恥ずかしいとか
誰かに見られているとか
そんなことお構いなしに私の名を
遠くから大きな声で呼びかけ
満面の笑みで手を振っていたわね。
そんなあなたが羨ましかった。
何も気にせずに
自分の思いを素直に表現出来る
あなたが…
何故あんな手紙をあなたに
書いてしまったのかしら。
冷たい言葉ばかり並べ
あなたを傷付けるようなことばかり
でも本当は気付いてた。
でも気付かない振りをしてた。
あなたの横顔
私をまっすぐに見つめるあなたの瞳
私の肩に触れたあなたの指先
私の全身が
あなたでいっぱいで
溢れ出してしまいそうで
その事を気付かれてしまうのが怖くて
あの手紙を書いたの。
あの手紙を書いてから
一年半の年月が過ぎて
あれ以来あなた
この街から姿を消してしまった……
あなたに似た人を見かけると
慌てて振り向いている私がいる。
あなたとよく逢ったあの交差点に
あなたを探す私がいる。
私の心はあの頃に置き去りのまま
ただ今を生きているだなんて
「そんなの嫌だ」と
私の内なるものからのメッセージ。
あなたの指先が触れた時
あのなんとも言えない
心踊る程の感情を
もう一度感じたいと願ったその瞬間
「何か」が私の周りで動き出す。
その何かを信じて
私は手術室へ向かう。
顔を赤らめ照れくさそうに笑う
あなたに恋をしたのは
三年前の十一月
小春日和の穏やかな風が吹く
そんな日でした。
ドリー・レイコ
