我が家に通販でトラピストクッキーとバターが送られて来た。レトロな化粧缶が懐かしい。トラピスト修道院の外観のモノクロ写真が使用されている。

 

 その裏手にある製酪工場で修道士たちが製造している姿が目に浮かぶ。今回はこのクッキーに因んだ短いエッセイを書いてみました。

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         (トラピスト修道院:ウイキペディアから)

 

 明治29年(1896年)、フランスから来日した数名の修道士によって創立されたトラピスト修道院は、冷涼な気候を利用して早くから酪農を導入してきた。土地が瘦せていたので、当初は大変苦労したが次第に安定してゆくことになる。

 

 その後、生乳を乳酸菌で発酵させた発酵バターが完成。昭和11年(1936年)、これを使って生産販売を始めたのが「トラピストクッキー」である。以来90年近く函館のみならず北海道の土産菓子の定番となってきた。

 

      (トラピストクッキー:修道院のHPから)

 自家製の発酵バターとバターミルクから作られたクッキーは食べた時のサクッとした歯触りと、とろけるような食感、香ばしさが売りである。鶏卵が使用されていないので、卵アレルギーの人でも食べられる。また、幼児の離乳食やお年寄りのおやつにも適しているのだ。

 

 長さ7.5㎝、幅3㎝、厚さは数ミリのサイズは大変食べやすい。3枚で小さな袋に入っている。包装は赤、白、黒の3色のボール紙の小箱だが、化粧缶は下記のとおり、モノクロの修道院の外観の写真を使っており、落ち着いた雰囲気を醸し出す。

トラピストクッキー 3枚包×23個入 - 函館山ロープウェイオンラインショップshop334

          (モノトーンの化粧缶)

 

 「菓子業界の流行に左右されず、この味と伝統を守って、次世代に引き継ぐ」ことを修道院では守ってきた。厳しい戒律の中で修道士たちがこれを厳格に受け継いできたのである。

 

 朝日新聞によると、90年代のバブル期が生産のピークで、「宣伝には何の苦労もなかった」という。「早出、残業の連続。お祈りどころじゃなかったよ」と浜崎修道士は振り返る。

 

 筆者が渡島当別駅に降り立ち修道院を訪ねたのは、それより数年前80年代の後半だったと思う。フランス語やラテン語の書籍が並ぶ読書室で修道士たちが勉強していた姿が目に浮かぶ。

 

 昨年末に、道南いさりび鉄道に木古内(きこない)駅から函館駅まで40年ぶりに乗車した。車窓には穏やかな津軽海峡が広がっていた。

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    (現在の渡島当別駅:ウイキペディアから)

 

 最近、新千歳空港や都内の百貨店の地方特産品コーナーでも、この菓子を目にすることが少なくなったように思う。どの土産物店でも、白い恋人、マルセイバターサンド、き花、よいとまけ、わかさいも、じゃがポックルなどの定番商品で溢れている。

 

 生産量はピーク時に比べて大幅に減少しているようだ。それでも純正の原料だけを使用した本当に良い菓子にはぜひ、生き残ってもらいたいものだ。読者の皆様にもこれを購入して、ずっと長く続くように支援していただきたいと思う。(了)